ニチレイのconomealに参画している門崎の千葉氏は、格之進として提供している牛肉においても、conomealの技術が大きな可能性を秘めていると考えている。
「牛肉の部位は82に分類され、牛脂も1種類じゃない。私からすると、牛脂は肩の脂とロースの脂、バラの脂、胸の脂、もも脂、内臓の脂と6種類あると思っている。それらを大別すると3タイプぐらいの脂肪酸構成に分かれていて、焼いてすぐ溶けるもの、焼いて甘くなるもの、焼いても繊維が残ってるものがある」と千葉氏。
たとえば霜降り牛肉が好きな人とそうではない人がいる。conomealの技術によって「自分の好みの赤身と脂肪酸の構成が把握できれば、こういうお肉のこの部位が最適だとわかる。個人の嗜好性が明確にわかってくると、あなたはこの部位がお好きかもしれません、みたいな提案ができるんじゃないか」という。
「みなさん、お肉を食べたときに多幸感を感じると思う。あれが最適化されていく。つまりお肉を食べるごとに幸せな瞬間が増える。ミートライフバリューが上がる。人類の幸せに、ものすごく大きく貢献する。そんな可能性がconomealにはある」と期待をかける。
また、肉料理の場合は素材だけでなく調理の仕方も美味しさに大きく関わってくる。格之進では、同社のECサイトで商品を購入したユーザーを対象に、Zoomを通じて焼き方を指南してくれる「オンライン肉会」を不定期で開催しており、個人宅でも格之進独自のテクニックで肉の美味しさを引き出せるようになる。
「水風船理論で塊肉を焼くと、レストランのような味わいを再現できる。適切な焼き方をオンラインで教えるのは、1つの食のDXでないか」と千葉氏。「お肉の好みに加えて焼き方も個人にフィットできるようになれば、世界で一番幸せな国民になっていけるんじゃないか」とも話す。
オンライン肉会に実際に参加したという関屋氏は、そもそも肉を美味しく焼ける方法があるということ自体を知らなかったため、「気付くこともなかったものに気付けるのはすごく大きいと思った。お店で焼いてもらって食べるものがどれほど美味しいのか、ということが、自分でやってみてわかった」という。
ニチレイと格之進は、「屋外で食べたり、普段は使わない食材にチャレンジしたりという非日常感が、食の幸福度を高める」との考えから生まれた「conomeal outdoor」というサービスでコラボレーションしている。現在は「食の幸せを感じてもらえるようなお肉セットを、千葉さんのアイデアをいただきながら作った」という「格之進×conomeal 特別BBQセット」を期間限定で販売中だ。
「おいしさのポイントはやっぱり、愛」と切り出す千葉氏。「お母さんがハンバーグを作る、格之進ではあの思いで作っている。生産者が、美味しくなって欲しいと思って作っているものを、いかに引き継いで、その思いをどうようにして旨味にし、増幅させるのか。そこを本気でやろうとすると技術じゃなくて、思いになる」と持論を述べつつ、「これからさらに美味しくなっていく。いかに原価を下げるのかではなく、いかにより美味しくするのか」に取り組んでいくとした。
conomealでは、日本の食だけでなく、海外の人に向けた食についても「食嗜好分析AI」で「因数分解」していく計画だ。関屋氏は「例えば食意識のタイプが日本人と同じような分類になるかどうか。分けられない可能性もあると思う」と話し、すでに「基礎準備をし始めた」ところだという。
今後については、「好きな美味しいものを食べたくても、塩分や油分を控えなければいけない人もいる。そういった方に向けてconomealを応用していければ。たとえば成分を入れ替えてもおいしいと感じられる心理要素や味の要素を付け加える。そういったシミュレーションができるようになりたい」とした。
千葉氏は、conomealの世界展開にも大いに期待感を示し、「日本では柔らかさがお肉の美味しさの基準になっているが、海外では噛みごたえ的なものがおいしさになっていて、基準が違う。(海外の)硬水で料理するのと(日本の)軟水で料理するのとでは出汁の出方も違う。九州と北海道でも、東北と東京でも、違う。その部分をいかに変数として反映させるのか。高いハードルだけれど、これを乗り越えられたらすごい」と語った。
さらに「人が食べたいと思うものは、体にとって必要なものだと思っている。その瞬間その瞬間で、今の体にとって必要なものを選択できて、心と体の両方が喜ぶようなものができるとすごくいい。論理的なところも重要だけれど、心の充足感も重要だと思うので、両方のバランスをどのように取っていくのか。味覚だけじゃなく、心理的な部分も含めたデータも絶対に必要になってくる」とし、conomealが乗り越えるべき課題と、将来果たすことになる役割の大きさを再確認していた。
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