人それぞれで異なる食の好み。これを科学的な視点とテクノロジー、そしてアナログ的な「思い」を組み合わせてひもとき、個人の嗜好に合った食を提供することに注力しているのが、大手食品会社のニチレイと、厳選素材の高級焼肉店「格之進」を運営する門崎だ。
本誌CNET Japan主催のオンラインイベント「FoodTech Festival 2020 “食”環境が変革する新時代の挑戦者たち」では、ニチレイの関屋英理子氏と「肉おじさん」こと門崎の千葉祐士氏を迎え、食のパーソナライズをコンセプトとした「conomeal(このみる)」、および最適なレシピを提案するアプリ「conomeal kitchen(このみるきっちん)」の取り組みについて語った。
ニチレイの新規事業としてスタートし、11月現在はβ版のiOSアプリが提供されているconomeal kitchen(このみるきっちん)は、個人の食の好みを「食嗜好分析AI」によって分析し、それに合わせたレシピを提案してくれるもの。その「美味しさ」を判定する技術の背景には、味、見た目、食感といった食べ物そのものの情報に加えて、2000名のデータから得られた「美味しさの因数分解」につながる3つのポイントの発見があったという。
関屋氏は「人は自然的においしいと思う食品を選び取る行動をとる」と考え、その行動の要因を分析した結果、一番最初に影響するのが「食意識」だと気付いた。「食品に対してその人がどんな価値感を持っているかはすごく大事なポイント。たとえば食材をすごくこだわって選びたい、食材にはこだわらないが早く食べられる便利なものがいい、といったパターンがある」とする。
2つ目には、関屋氏は「気分」が当てはまると考えた。「緊張している、疲れている、落ち込んでいる、楽しいなど、気分によって本来選び取る予定だったものが選ばれないことはよくあること」。気分が食の選択という行動に大きく関わり、つまり美味しさを構成する要素の1つになっているというわけだ。
また、自分の気持ち以外にも、「誰と食べるか、1人で食べるのか、みんなで食べるのか、家族がいるのか、普通の食卓なのか、イベントなのか」といった「環境」も影響する。「最終的にこの3つに因数分解することによって、その人にとっての美味しさが見えてくることがわかった」とのことで、これらの要素を「食嗜好分析AI」に取り入れたという。
それに加え「食の幸福」につながる要素として「明るい食卓」、料理することを楽しむための「情報収集」、「必要なもの」だけを買い物できること、メニューを決めるときにコミュニケーションして情報などを「周囲から得る」といったポイントもあると考えた。
こうしたデータや調査結果から、探さなくても自分にマッチした情報が提供される「自動マッチング」の機能や、食べることを楽しめる環境を作れる機能が必要という仮説を立て、個人の食の嗜好を判定し適切なレシピを提供するアプリconomeal kitchen(このみるきっちん)の開発につなげたという。
関屋氏によると、「過去30年間、料理をしている方の悩みの圧倒的1位が、献立を考えること」だという。「料理本はたくさんあり、レシピも検索すれば出てくるのになぜそうなのか。作る人が、何の材料を使い、メニューを何にするか決めて探しに行かない限り、適切なメニューに出会えないから」とし、そこにconomeal kitchen(このみるきっちん)があることで、「必要な情報が適切に届き、料理の負担が減って、楽しい食が提供できる」と述べる。
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