NTTドコモは11月5日、冬春商戦に向けた新サービス・新商品発表会をオンラインで開催。今後の社会基盤として注力を進める5Gの利用拡大に向けた新たな戦略を発表した。
同社の代表取締役社長である吉澤和弘氏は冒頭、5Gのサービス開始から7カ月で50万契約を突破するなど「契約は順調に拡大している」と説明し、これまでの5Gに関するサービスやソリューションを振り返った。その上で新たな戦略として、(1)ネットワーク、(2)サービス/ソリューション、(3)デバイスの3分野に関する新たな取り組みを打ち出した。
5Gの基盤となるネットワークに関して、吉澤氏は「新たな価値創出のため、5Gのネットワーク品質が何より大切で、高速大容量通信が何より重要」と説明。5G向けに割り当てられた3.7GHz帯、4.5GHz帯、そしてミリ波の1つとされる28GHz帯の3つの周波数帯にこだわってエリア整備を進めることを明言した。さらに5Gの周波数帯にこだわり、高速大容量通信を体験しやすい同社のネットワークを「瞬速5G」と名前を付けてアピールしていくことも明らかにしている。
その上で吉澤氏は新たなエリア展開スケジュールを披露。2022年3月末までに3万2000局を整備し、5Gの高速大容量通信が体験できるエリアを人口カバー率70%にまで広げるとのこと。それ以降は東京・名古屋・大阪とその近郊から47都道府県へとエリアカバーを広げ、1000の市区町村をカバーしていくとしており、2023年まで1兆円を投資するなどしてエリア拡大を積極化するとしている。
同社の高速化に向けたこだわりとして、9月にはミリ波の活用を開始し、受信時最大4.1Gbpsを実現しているが、12月からはさらに、5Gのキャリアアグリゲーションを開始することも明らかにした。3.7GHz帯と4.5GHz帯を束ねることで、受信時最大4.2Gbpsを実現するとしており、5Gならではの高速大容量通信ができる環境によりこだわっていきたいと吉澤氏は話す。
その5Gを活用したソリューションとして、吉澤氏は山口県での高精細映像を活用した遠隔授業や、高知県でのスマートグラスを活用した遠隔出の栽培指導など、教育や農業に関する取り組みを紹介。さらに石川県金沢市では、今後5Gを活用して、働き甲斐を高めるスマートファクトリーの取り組みを進めていくとのことで、詳細は近日中に発表するとしている。
加えて同社はさらなる5G活用ソリューション創出と社会課題解決に向け、「docomo 5G DX AWARDS 2020」を実施しており、その入賞企業4社とソリューション創出に向けた取り組みを進めているとのこと。同社の法人営業部門に新制度「5Gマスター」を導入することも発表しており、5Gの知識を持つ人材を全国にまずは100名配置してNTTグループやパートナー企業と協力しながら、ソリューション提案からコンサルティングまで一気通貫で取り組みたいとしている。
このほか、5Gを活用したサービスに関しても新たな取り組みをいくつか打ち出している。1つはeスポーツへの参入で、「PUGB Mobile」の国内プロリーグや「リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト」の大会を主催することを明らかにした。5Gによる快適なゲームプレイ環境の提供や、XR技術を活用した臨場感ある視聴体験などの導入を検討しているとのことだ。
そしてもう1つは、同社がトップスポンサーとなった卓球のプロリーグ「Tリーグ」の新しい試合観戦体験である。国内で初めてプロスポーツの試合中継に5Gを全面的に活用し、CGや360度映像などを駆使した新しいスタイルの試合映像の配信を11月17日の開幕戦で実施するとのことで、「dTVチャンネル」「ひかりTV for docomo」などで視聴が可能だという。
吉澤氏はさらに、5Gで街の魅力を高めるチャレンジとして、小田急電鉄らとXR技術を活用した「XRシティSHINJUKU」を11月18日から開始することを発表した。これはスマートフォンやスマートグラスなどを活用し、ファッションやアートなどのコンテンツやゲーム、クーポンによる送客などを展開することで、新しい体験を生み出しながら「dポイント」や「d払い」の加盟店支援につなげることで、新宿の魅力を広げる取り組みになるという。
最後に吉澤氏は、5G対応スマートフォンのラインアップ6機種を紹介した。そのうち「Galaxy A51 5G」「arrows NX9」など4機種は購入しやすい価格帯のスタンダードモデルになるとのことで、ドコモオンラインショップでは「スマホおかえしプログラム」の適用などにより、3〜5万円台での購入が可能だとしている。
一方の5G対応ハイスペックモデルは「Galaxy Note20 Ultra 5G」「Xperia 5 II」の2機種のみ。このほかにも4G対応の「AQUOS sense4」や、タブレットの「dtab Compact」も発表しているほか、Xperia 5 IIとAQUOS sense4、「AQUOS sense5G」の3機種はドコモオンラインショップ限定色を用意するとのこと。さらにXperia 5 IIとAQUOS sense4の限定色を購入すると、代金の1%相当が日本赤十字に寄付されることも明らかにした。
なお、ドコモはかねてより、5Gスマートフォンを軸にさまざまなデバイスを用いることで、新しい体験価値を提供する「マイネットワーク構想」を打ち出していた。その中で吉澤氏は、デバイスに関する新たな取り組みとして新サービス「kikito」を打ち出した。
これはスマートフォンと一緒に利用するさまざまなデバイスをレンタルできるサービスで、購入するにはハードルが高い機器を気軽に使ってもらう狙いがあるという。VRのヘッドマウントディスプレイやプロジェクター、アクションカメラなどがラインアップされており、レンタルしたデバイスが気に入った場合はそのまま購入したり、返却後に安価に購入したりできるとのこと。
他にも「d払い」の新たな取り組みとして、加盟店の販促活動を支援する「スーパー販促プログラム」などいくつかの新しい取り組みが打ち出された。しかし、注目を集めている料金引き下げへの対応や、総務省が打ち出した「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」に関する言及はなかった。
吉澤氏は、他社が20GBの低価格プランを提供したことに関して「20GBのプランがクローズアップされており(引き下げを)検討しているが、4Gだけなのか、5Gも含めて展開するかは今からの検討と考えている」と答えるにとどまっている。
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