ソフトバンクおよびSB C&Sは10月29~30日、デジタルでビジネスを促進するオンラインイベント「SoftBank World 2020」を開催した。本稿ではソフトバンクグループ企業のCEOが集い、日本の未来について語った「SoftBank CEO Summit」の概要を紹介する。
モデレーターを務める日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ 上席研究員 大和田尚孝氏が問うた「最近の企業の働き方の変化とは?」に、Zホールディングス 代表取締役社長 CEO 兼 ヤフー 代表取締役社長 CEO 川邊健太郎氏は、従来1日の15.6%を占めていた移動時間がコロナ禍で3.9%まで減少し、「これまでできなかった新しい業務に取り組むことが可能になった」と回答した。
社内業務に費やす割合が2019年4〜9月の59.1%に対して、2020年4〜9月は78.8%まで拡大。同社は「最大の変化であり最大の価値」と業務効率が大幅に向上したことを強調する。他方でリモートワークとオフィス出社が混在する状況において、会議室に集った人々とオンラインで会議に参加した人の意見がかみ合わない状況が多発した結果、今夏にオフィスの核がオンラインであることを社内外に示す広告を出稿した。その理由として同社は「一斉に実施することが重要。共通の作業空間はオンラインであることを示すことが新しい働き方」(川邊氏)だと説明した。
SB C&S 代表取締役社長 兼 CEO 溝口泰雄氏は、「今が一番のチャンス。インフラストラクチャー(以下、インフラ)や新しいテクノロジーがないと難しいものの、大事なのは挑戦するか否か」と語る。同社は2017年から在宅勤務可能なインフラ整備に努めてきたが、制度を利用するのは一部従業員にとどまっていた。2020年1月時点の出社率は86%だが、4月の緊急事態宣言を受けて3%まで低下。直近の8月でも8%程度で原則在宅勤務への移行に成功したと同社は説明する。現在約2万回/月のオンライン会議を実施する同社だが、営業成績やセミナー効果は1.5〜2倍に拡大し、業務遂行能力は低下していないという。同社は社外との名刺交換にSansanのソリューション、マーケティング部門の会議は電子ホワイトボードを活用するなど、「今あるテクノロジーを使わないとアフターコロナで強烈な差が生じてしまう」(溝口氏)と警鐘を鳴らした。
出社率が20~30%程度と比較的高いSBテクノロジーは、リモートワーク環境が主体となる現状について、「ゼロトラストセキュリティに移行しなければならない」(同社代表取締役社長 CEO 阿多親市氏)と強調する。ゼロトラストとは従来のように社内外を分断し、アクセスレベルを設ける境界型セキュリティモデルではなく、利用者やデバイスなどを常に監査する性悪説に基づいたセキュリティモデルを指す。同社は各所から生成された膨大なログを専門家およびAI(人工知能)による分析対象と見なし、その結果が「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に必要」(阿多氏)な要素だと述べた。
原則在宅勤務へ移行したPayPayはコロナ禍におけるオフィスのあり方を次のように再定義する。「(オフィスは)従来の『作業する場所』からチームワークによる新しい価値を創出する場所、もしくは従業員のエンゲージメントを高める場所へ。作業は自宅やサテライトオフィスで行う」(同社代表取締役 社長執行役員 CEO 中山一郎氏)。そのために現在のオフィスは種類の異なるレイアウトとフリーアドレス化を導入し、サテライトオフィス契約を実施。「これまでのオフィスは作業に集中するために静かだったが、(今後は)『うるさいのが当たり前』に」(中山氏)なるという。
ここまではソフトバンクグループ企業CEOだが、ここから先はソフトバンク本社の意見を採り上げる。現在同社の在宅勤務率は全社で76%、本社単体では83%(2020年9月時点)ながらも、顧客へのコンタクト率は以前の約5倍、オンライン商談数も前年度比1.2倍へと拡大した。この結果について「グループ企業の力」(同社代表取締役 副社長執行役員 兼 COO 今井康之氏)だと説明する。同社代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮内謙氏も、「アフターコロナになっても、従来の働き方に戻らないだろう。場所を選ばない働き方はデジタルシフトしないと実行できない」と述べ、一同はコロナ禍における働き方がリモートワークを基礎とすることを同様に語った。
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