SBグループCEOが語るコロナ禍の働き方とその先--SoftBank World 2020 - (page 2)

データを活用できない企業は淘汰される

 モデレーターによる「データやデータ活用の重要性とは?」との質問にZホールディングスは、「以前はディレクターの経験と勘でサービスを作成していたが、現在のYahoo! JAPANはデータドリブンの塊」(川邊氏)と語る。たとえば検索モジュールにはクエリ意図解析や検索クエリ保管、ナレッジグラフといった技術を組み込み、利用データを幅広く活用してきた。

 その結果、検索サービス経由の送客による売り上げはプラス20%、ニュース詳細面のタイムラインCTR(クリックスルー率)は2.1倍、メディアサービスからの送客によるCTRはプラス17.8%、機械学習モデルの刷新により売り上げはプラス1%まで向上。同社はアルベルト・アインシュタイン氏の「宇宙でもっとも偉大な力は『複利』である」を引用し、「データドリブンの改善はAIが365日24時間実行するため、複利的に利いてくる」(川邊氏)と述べた。

 モバイルショップにアクセサリーを提供するSB C&Sは、これまで欠品に関するクレームが寄せられていたという。定型業務をAI・RPA(ロボティック プロセス オートメーション)へ移行させることで、18%だった欠品率を3%に、17%だった売り逃し率を4%まで削減している。週に1回店舗を訪れていた営業担当者による打ち合わせも不要となり、大幅な業務改善に成功した。また、同社傘下のアイティクラウドが運営する「ITreview」も順調であることを述べながら、「既存データを用いて新規事業や業務改革に取り組むのが重要」(溝口氏)とSB C&Sは語る。

 コロナ禍でも登録者数や決済回数が順調に推移しているPayPayは、「データがなければ事業ができない」(中山氏)とデータの重要性を断言した。同社が6月16~21日に実施した独自調査によれば、コロナ禍における日常の購買意識や行動に変化があったと回答した割合は76%(n=2600)。消費者意識を反映した日々のデータを踏まえて、テイクアウト需要に応えた「PayPayピックアップ」を6月から、店舗内の非接触注文を可能にする「PayPayテーブルオーダー」を本日30日から大阪地区で提供を開始する。

 これらの取り組みを踏まえてソフトバンクは、「工場内の映像などすべてがデータになる。人的資源を削減するためにも、データが企業活動に寄与するように作り替えなければならない」(今井氏)。「来年末には我々が推進している(業務効率化を図る)『デジタルワーカー4000プロジェクト』で生産性が大きく向上する。デジタル化できない企業は淘汰されるのでは」(宮内氏)とデータ活用の重点を指摘した。

既存産業のDX化が未来を握る鍵

 モデレーターが「今後、世の中に貢献できること、各社が考える日本の未来とは?」と尋ねると、Zホールディングスは「今年は公共部門を含めたDX元年」(川邊氏)とコロナ禍で否応(いやおう)なしに進んだ業務改革状況を指し示した。また、2021年3月を予定しているLINEとの経営統合についても「(互いの)技を融合することで世界・アジアをリードするAIテックカンパニー」(川邊氏)を目指すという。SB C&Sは日本のIT産業が海外先進国と比較して後塵(こうじん)を拝する状況を示しつつ、「インフラとしてソフトウェアを普及させることに貢献する。1つはクラウドに慣れるためのキラーアプリ。もう1つはサブスクリプションビジネスを前提に、利用者とメーカーをダイレクトにつなぐプラットフォーム」(溝口氏)構築に尽力すると述べた。同社の法人向けサブスクリプションシート数は2019年時点で約350万。今期は500万シートを目標に掲げている。

 SBテクノロジーは「(2年前に実施した調査で)SEはいらなくなる。IT部門(の人材は)ユーザー部門に異動していくだろう」(阿多氏)と、従業員の8割を占めるSEの意見を披露した。グループ企業への貢献を示しつつグループ外企業に対しては、建築業や製造業、農業といった分野へのDX推進に注力していく。PayPayは11月から実施する「あなたのまちを応援プロジェクト」を軸に「日本の行政デジタル化を支援したい。PayPayなら24時間365時間、行政サービスを受けられる」(中山氏)と述べた。

 ソフトバンクは「DXを実現するためのコミュニケーション基盤、デジタルオートメーション基盤、デジタルマーケティング基盤、そしてこれらを支えるセキュリティ基盤に注力している」(今井氏)。プラットフォーム構築と並行して、次世代教育・観光活性化などに向けて54の自治体と連携協定を終結したことを披露した(2020年10月時点)。他方で「日本の技術は高品質ながらも(他国と比べて)遅れているが、産業のDXを計画的に行えば、日本の未来は大きなチャンスがある」(宮内氏)と展望を語った。

日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ 上席研究員 大和田尚孝氏
日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ 上席研究員 大和田尚孝氏

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]