パナソニック、売上高は回復傾向--調理家電や4Kテレビなど巣ごもり商品好調

 パナソニックは10月29日、2021年3月期上期(2020年4~9月)連結業績を発表した。売上高は前年同期比20.4%減の3兆0591億円、営業利益は31.1%減の966億円、税引前利益は32.4%減の931億円、当期純利益は51.6%減の488億円となった。

2020年度第2四半期類型連結実績
2020年度第2四半期類型連結実績

 パナソニック 取締役常務執行役員兼CFOの梅田博和氏は、「売上高は引き続き減収となったが、オートモーティブやアプライアンスなどの改善により、第1四半期からの回復が顕著である。利益は売上高が回復するなか、固定費水準を維持し、第1四半期から大きく改善し、前年からも増益に転換した。フリーキャッシュフローも新型コロナウイルスの影響を受けた第1四半期のマイナスから大幅なプラスに改善している」と総括した。

パナソニック 取締役常務執行役員兼CFOの梅田博和氏
パナソニック 取締役常務執行役員兼CFOの梅田博和氏

 第2四半期(2020年7~9月)連結業績は、売上高は前年同期比15%減の1兆6673億円、調整後営業利益は1%増の950億円、営業利益は11%増の928億円、税引前利益は10%増の901億円、当期純利益は15%増の587億円となった。売上高は全セグメントで減収となったが、アプライアンスおよびオートモーティブは、第2四半期から調整後営業利益で増益に転じた。また、第1四半期のフリーキャッシュフローはマイナス542億円であったが、第2四半期は1581億円に回復している。

2020年度第2四半期連結実績
2020年度第2四半期連結実績

 「事業ポートフォリオ改革による非連結化の影響や、コロナ影響により減収となった。調整後営業利益は減販影響があったが、固定費削減の取り組みが着実に進展し、コロナ影響をカバーして増益となった。第2四半期でのコロナ影響は売上高では1500億円のマイナス。そのうちの約半分が、アビオニクスを含むコネクティッドソリューションズ社によるものである」とした。

新型コロナの影響、6月以降は売上高前年同期比90%まで回復

 新型コロナウイルスの影響については、「4月から影響があったものの、6月以降は売上高が前年同期比90%台にまで回復している。コロナ影響は、オートモーティブ、アプライアンス、コネクティッドソリューションズで大きく見られた。だが、オートモーティブは4、5月の売上高が半減していたものの、自動車メーカーの生産増加に伴い、ここにきて急回復している。アプライアンスは、5月まで外出規制やロックダウンの影響を大きく受けていたが、制限緩和に伴い回復傾向に転じている。だが、コネクティッドソリューションズはアビオニクスが運航便激減や、航空機の大幅減産の影響を受けており、セグメント全体で前年実績の8割を切る厳しい状況が続いている」と述べた。

 セグメント別業績では、アプライアンスの売上高が前年同期比13%減の1兆1911億円、営業利益は4%減の510億円となった。

 そのうち、ルームエアコンを含む空調冷熱ソリューションズの第2四半期の売上高は前年同期比4%減の1191億円。白物家電などのホームアプライアンスの売上高は前年同期比1%減の2381億円。テレビなどのスマートライフネットワークは16%減の1220億円となった。

 「日本を含めて市況は回復してきたが、スマートライフネットワーク、BtoBを中心に、コロナ影響が継続している。その一方で、冷蔵庫や、欧州の空調などの増販効果があったほか、コストコントロールの成果もあり、第2四半期は増益になっている」という。

 また、「調理家電や洗濯機、冷蔵庫などの巣ごもり関連商品は、好調に推移している。テレビはマレーシアにおいて、一時供給に関しての課題が発生したが、4Kテレビや有機ELテレビによって挽回をしているところである。国内家電市場は、前年同期には消費増税による駆け込み需要があったため、9月は前年同期比6割程度で推移していた。しかし、10月に入ってからは、1.3倍程度で推移している。そのなかにおいて、パナソニックは市場シェアでは負けていない。エアコンでは、7月に業界全体で在庫がダブついたため、安売り合戦が起きていたが、パナソニックはそこに参戦しなかったため、シェアは落ちたという例があるものの、冷蔵庫などの高付加価値商品はシェアをあげている」と語った。

コロナ感染拡大後の売上高推移(前年比)
コロナ感染拡大後の売上高推移(前年比)

 ライフソリューションズは、前年同期比30%減の6955億円、営業利益は前年同期比48%減の214億円と減収減益。「空質関連事業は堅調に推移したが、住宅新築着工戸数の減少影響があり減収となった。日本では、リフォームやリノベーション需要を開拓することで、巻き返しを図りたい」と述べた。

 コネクティッドソリューションズの売上高は前年同期比27%減の3766億円、営業損失は前年同期の363億円の黒字から、173億円の赤字となった。「中国での実装機販売は好調だが、アビオニクスの落ち込みをカバーできずに減収になった」という。

 オートモーティブの売上高は前年同期比24%減の5693億円、営業損失は前年同期の227億円の赤字から183億円改善したが、マイナス44億円の赤字。「車載電池は増収となり、車載機器ではIVI(In Vehicle Infotainment)が伸長したものの、ディスプレイオーディオなどの販売減が影響した」という。

 インダストリアルソリューションズは、売上高が前年同期比9%減の5965億円、営業利益は64%増の270億円となった。「情報通信インフラ向けの販売は引き続き好調だったが、車載向けの減販が影響した」としている。

テスラ向け事業は黒字化見込み、米国工場は「赤字にはならない」

 なお、2021年3月期通期の連結業績見通しは据え置き、売上高は前年比13.2%減の6兆5000億円、営業利益は48.9%減の1500億円、税引前利益は48.5%減の1500億円、当期純利益は55.7%減の1000億円とした。

 「新型コロナウイルスの調整後営業利益への影響は、下期は若干の悪化を見込んでいるが、第2四半期は改善したこともあり、通期での影響は当初見通しと比べて変わらない。経営体質の強化を加速する一方、新型コロナによる社会変化がもたらす事業機会の取り組みを推進したい」とした。

 また、2020年度の重点施策への取り組みについても説明。中期戦略で掲げている経営体質の強化および車載事業の収益改善は着実に進捗しており、年間目標を上回る成果を目指すという。

 経営体質の強化では、固定費削減が上期実績で240億円。年間削減目標は300億円としているほか、構造的赤字事業への対策では、上期実績が120億円、年間改善目標は150億円。車載事業の収益改善は上期実績が280億円。年間改善目標は350億円としている。

 事業ポートフォリオ改革では、「成長に向けた投資」として、Blue Yonderへの戦略的株式投資の実行を行ったほか、「共創による競争力強化」では、車載用角形電池事業の合弁会社の設立、「収益性の改善」では半導体事業の譲渡完了、ソーラー事業のバッファロー工場の撤退完了をあげ、「引き続き、具体策の積み上げを図っていく」とした。

 さらに、新型コロナを踏まえた施策では、事業へのマイナス影響への対策としては、第1四半期、第2四半期ともに固定費を前年から約700億円ずつ削減したほか、影響が大きいアビオニクス事業における構造改革を実施しているという。

 「アビオニクス事業は、下期にさらに厳しさが増すと考えている。大型機からナローボディ機へのリソースシフト、機内エンターテインメントにおけるWi-Fi分野へのリソースシフトを進めている。全世界に展開している拠点の効率化などにより、コスト削減を図る」とした。

 また、新たな事業機会への取り組みとしては、コロナを機に需要が高まる商品の拡充や強化、増産対応などを着実に推進しているとし、「ナノイーX」搭載商品の拡充と訴求強化や「ジアイーノ」の増産対応などによる「公衆衛生、空調空質に関する需要の高まり」、導電性高分子コンデンサーや蓄電システムの供給拡大による「情報通信インフラへの投資拡大」、円筒形車載電池の高容量化などによる「欧州でのグリーンリカバリー政策などの後押しによるEV需要の拡大」、実装機の生産工場のフル稼働などによる「サーバーやICT端末などの生産設備需要の拡大」の4点をあげ、「需要が高まる商品の拡充や強化、増産対応を着実に進めていく」と述べた

 なお、米テスラが9月に開催した「バッテリーディ」で明らかにした新型車載電池「4680」についても言及。「パナソニックも、高容量化、安全性という強みを生かして、4680の開発に着手している。パナソニックの強みが出る分野で共創をしたいと考えている。試作ラインなどを作って、検証していくための準備も並行して進めている」とした。

 また、テスラ向け事業においては、2020年度通期での黒字化を見込んでいることを示し、「今後2、3年で5%程度の利益率を見込んでいる。すでに米国工場は黒字化しており、この工場は赤字にはならない」と述べた。

2020年度第2四半期営業利益、当期純利益
2020年度第2四半期営業利益、当期純利益
2020年度第2四半期セグメント別実績
2020年度第2四半期セグメント別実績

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