買収した側とされた側、それぞれの社長は何を思う?--AnyMindとGROVEが明かす - (page 2)

中川 亮(シェアエックス Founder&CEO)2020年10月29日 13時49分

M&Aされた側の気持ちと決定の背景

——北島さんは、今回でいうと買収されて子会社になったという立場ですが、御社はスタートアップですよね。

北島氏:はい。

——どこかの子会社になるというのは、「魂を売る」というと言い過ぎなんですが、独立性はある種、犠牲にする部分があるのではないかと思うのですが、そのあたりは、どうやって心の整理をしましたか?

北島氏 :僕らはGROVEという社名だけでなく、事業のブランドもGROVEでやっています。僕らの場合はタレント、いわゆるインフルエンサーたちと契約をして、彼らと一緒にビジネスをしているので、GROVEっていう屋号が変わってしまうと、結構実害が出るんですよね。

 そういったところも、もちろん把握してくれていて、GROVEという名前だったり会社名というのは、残していく方がお互いビジネス的にはやりやすいよねという共通認識があったので、独立性のところは十河さんがすごく理解のある判断をしてくれたなという印象はありました。僕の感覚だけをぶっちゃけてしまうと、やっぱり名前とか、築き上げてきたものがなくなってしまうのは寂しいよなっていうのはありますよね。なので、僕らの場合はラッキーだったなと思っています。

——良い相手と巡り合えたという。

北島氏:そうですね、本当そうだと思います。それこそAnyMindもそうですし、既存の株主であるスペースシャワーもそうですし、めちゃめちゃM&Aした先のことを考えてくれている。本当の意味で株主、親になってくれたなっていうのはすごく思っています。

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——今は六本木ヒルズの同じフロアで仕事していらっしゃる。

十河氏:はい。

——その後のPMI(統合プロセス)がうまくいくかどうかが結構キモだと思いますが、いままさにPMI実践中なのでしょうか?

十河氏:そうですね。

——ちなみにGROVEさんを買収されたのはいつごろですか?

十河氏:2020年の1月ですね。

——じゃあ半年と少し経ったくらいですね。

十河氏:はい。

——PMIは上手くいってますか?

十河氏:そうですね。もちろん問題ないっていうと嘘になるのですが、GROVE自体の業績も伸びていますし、僕らAnyMind側のインフルエンサーの需要も日本市場において非常に伸びているので、お互いに連携しながら、日本の市場では戦っていけているのかなと思っています。

 PMIにおいて大事にしているポイントでいうと、そもそもM&A前に、両社の信頼関係をどう作れるかがポイントだと思ってるんですね。なので、PMIが始まる前から、同じ共通認識で「こういう形でシナジー出してやっていきましょうね」「ここを目指してやりましょうね」というすり合わせを、ディール前にやっていたことが重要でした。

 そこはすごく良かったなと思っていて、お互い一緒になったときに、もちろん予期しないこともある中で、ある程度同じ目線でいながら、事業をやれているという感覚はあるので、その点では今回のM&Aに関しては上手くいっているポイントなのかなと思っています。

——北島さんはどうですか?

北島氏:そうですね、PMI自体でいうと、めっちゃ大変だなというのは僕は普通に思いますね。やはり事業体自体がそもそも同じ事業をしていたりするので、カニバる部分もありますよね。

——カニバりますよね。

北島氏:これは分かった上でのM&Aだったので、そこはもう、一個一個……。

——担当の営業同士が喧嘩したりしないんですか?

北島氏:全然バチってますよ。

——それはこっちのクライアントだ!みたいな。

北島氏 :もちろんそういう問題は出てきますけど、そこを解決していく作業、それこそがPMIだと思うので、一個一個の事象に対してお互い話しながら、「これはああですよね、こうですよね」とか、整理していくことが一番大事なのかなと。先ほど十河さんがおっしゃったような、最初のところでちゃんと同じ目線になれて、見ている先が同じだったら、そんな小事があろうが問題じゃないとは思います。

——もし、同じ様な戦略を描きたいという人がいたとしてですね、それは中小企業かもしれないしスタートアップかもしれなですが、どういった部分が一番ポイントだと思います?

十河氏:やっぱり僕らが実現したい世界に対して、共感してもらえるかどうかだと思うんですよね。同じように起業家同士なので、目線は高い人たちが多いわけじゃないですか。

 もっと成長したいっていう会社を僕らもM&Aさせていただいているので、僕らと一緒になることによって、さらに成長ストーリーが見えるよねとか、もっと面白いことができるよねとか、もっと世の中にインパクト出せるよね、ということを、どれだけ熱量を持って共有ができるのか、そこに対して共感を得られるのかっていうのは、最初のM&Aのディールの話をする時にはすごく大事だと思っているので、1社目のM&Aの時からずっと意識しながら創業者、起業家の方にはお話させていただいていますね。

——それで共感をしたから今ここにいるのが北島さん。

北島氏:そうですね。

十河氏:だと思ってるんですけど。

北島氏:普通にその通りですよ(笑)

AnyMindの「M&A戦略」とは

——AnyMindは、これまで6社買収されているので残り5社いらっしゃるわけですけど、そのうち日本は何社ですか?

十河氏:3社ですね。

——その3社は、北島さんのところも含めて同じフロアで仕事をされているんですか?

十河氏:そうですね。1つの会社は六本木と千駄ヶ谷にオフィスを2つ持っていたりするんですけど、基本的には一緒に仕事させてもらってます。

——一緒に仕事していて、まあ兄弟みたいなものですよね。

十河氏:そうですね。

――そこは仲良くやれていますか?まぁ、仲良くやれてないとは言えないですよね(笑)

北島氏:この前も同じフロアで一緒に働いているAnyMindスタッフのフットサルチームにも普通に参加しましたね。

——ウェットコミュニケーションですね。

十河氏:ウェットコミュニケーションです。

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北島氏:めちゃめちゃ仲良いですね。みんないい人なので、全然その辺は問題ないですね。

——AnyMindでは今後も積極的に、M&Aも含めていろいろとやっていかれると思いますが、どのような会社に来てほしいですか。

十河氏:やっぱりどんどん成長したいっていうマインドを持っている会社さん……あとは僕らの強みっていうのはグローバルに勝負できるところなので、テクノロジーやインターネットの領域で、どんどんアジアだとか、今後はたとえばアフリカだとか、ヨーロッパに進出していきたいんですっていうマインドを持っている起業家なり、会社と一緒にうまくなれればいいなとは思っていますね。

——北島さんは、インフルエンサー事業などを展開されていますが、グローバルに展開しているAnyMindと組んだことで、今後東南アジアやアフリカなどに、同じビジネスを持っていく可能性はありそうでしょうか。

北島氏:もちろん、めちゃめちゃありますね。やっぱり日本国内だけでYouTuberやインフルエンサーとして活動していくのは、そろそろキツくなってくるのかなと思っていて。特にAnyMindとGROVEが注目しているD2Cの部分でいうと、国内だけじゃなく全世界に届けられるネットワークを持っているというのは、やっぱりAnyMindのめちゃめちゃ強いところですし、僕らがどう頑張ってもものすごい時間がかかるようなところを、このM&Aで一緒にできるようになったというのは、会社にとってはすごく良いことだなと思いますね。

「アライアンス」はやるべきか?

——今回のテーマであるアライアンスについて改めてお聞きしたいのですが、いろいろな仲間と組んでリソース、たとえば在庫であるとか、人であるとか、いろいろなものをシェアすることによって事業って加速できるんじゃないかというのが1つのテーマなのですが、そこに関してアライアンスはもっとみんなやるべきだと思いますか?

十河氏:そうですね。個人的な意見でいうと、どんどんやるべきだと思っています。やっぱり事業の成長スピードを上げていくという意味でも、いろいろな会社と組むべきタイミングで組むべきだし、これだけ市場の変化が激しい状況なので、すべて自前で完結するというのはなかなか難しいと思うんですよね。なので、自分たちに足りない部分をしっかりと持っている会社、人たちと連携しながら、実現したい世界を作っていくために、どんどんやっていくべきなんじゃないかなと思います。

——北島さんはいかがでしょう。

北島氏:そうですね、スタートアップにとって、めちゃめちゃコアとなる部分(事業)ってあると思うんですが、そのコアな部分以外は、全部アライアンスを組んだ方がいいと思います。コアに特化して、そこだけ磨き続けるというような選択をする上では、アライアンスって結構必須だなと思っているので。十河さんがおっしゃった通り、組んでいった方が時短にもなりますし、業績も上がっていくんじゃないかと思いますね。

——良い言葉をいただきました。それではお時間となりました。AnyMindの十河宏輔さん、そしてGROVEの北島惇起さん、ありがとうございました。

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