首都圏の鉄道・バス事業者が構成するPASMO協議会は10月6日、Apple Payでの交通系ICカード「PASMO」サービスの提供を開始した。
Apple Pay版のPASMOでは、従来のPASMO同様、鉄道やバス、ショッピングの利用が可能。また、クレジットカードでのチャージや定期券購入、利用履歴の確認、紛失時の再発行が、端末上で完結する。対応端末は、iOS14がインストールされているiPhone 8以降、またはwatchOS7がインストールされているApple Watch Series 3以降。
PASMOに対応するアプリとしては、Walletアプリのほか、PASMOアプリを提供する。Walletアプリでは、PASMOカードの取り込み、新規発行、クレジットカードによるチャージ、定期券の継続購入、残高履歴の表示に対応。PASMOアプリではWalletアプリでの機能に加え、定期券の新規購入、バス利用特典サービスの表示、オートチャージ設定ができる。
Apple Payでの利用開始方法は2種類。1つ目は、手持ちのカードを取り込んで登録する方法だ。WalletアプリでPASMOカードの番号を打ち込み、端末でカード残額を読み取ると、カードのデータが端末に移行される。なお、小児用PASMOや一体型のPASMOなど、一部のカードは取り込みに非対応となる。
2つ目は、端末上で新規にデジタルカードを発行する方法。Walletアプリでは発行と同時にチャージが必要だが、PASMOアプリでは残高がない状態での発行が可能となっている。
利用時は、従来のカードと同様、改札機などにかざすだけ。残額が不足した場合には、アプリ上でクレジットカードによるチャージが可能。オートチャージにも対応する。なお、駅の窓口やコンビニにおける現金チャージも可能だという。
また、定期券の購入もアプリ上で可能。決済はクレジットカードとなるため、これまで自社系のクレジットカードのみに対応していた、あるいはクレジットカードでの決済に対応していなかった一部事業者の定期券も、これからはクレジットカードで購入できるようになる。定期券の販売事業者は、小田急電鉄や東急電鉄など、関東大手私鉄を含む鉄道事業者19社局と、小田急バスや東急バスなどのバス事業者16社局。
ApplePay版PASMOの利用で気になるのが、他のカードとの競合だろう。ApplePayでは、JR東日本が発行する交通系ICカード「Suica」も利用可能で、同じ端末に複数の交通系IC系カードを入れることが可能だ。この場合、SuicaとPASMOのうち普段使用するカードを「エクスプレスカード」として設定しておけば、アプリを開いていない状態では設定したカードを利用できる。
エクスプレスカードの設定は簡単にできるため、仕事用にはPASMO、プライベートではSuicaといった使い分けが、1つの端末で可能となる。エクスプレスカードに設定していないカードでも、端末のロックを解除してアプリを開けば利用が可能だ。
PASMO協議会会長を務める、小田急電鉄 常務取締役執行役員の五十嵐秀氏は、「新生活が始まる春や切り替え時期となる秋は、鉄道の駅やバスの営業所などに行列ができていたが、これからはどこでも好きな場所で定期券を購入できるようになる」と、モバイル端末でのPASMOサービス提供に対する期待を寄せた。
また、Apple、インターネットサービス、Apple Pay担当バイスプレジデントのジェニファー・ベイリー氏は、新しい生活習慣が定着する中で「さらに一般的になっていく非接触の支払いや乗車方法が、人々の日常をより安全により安心で、快適なものにできる」とコメントを寄せた。
スマートフォンで利用可能な交通系ICカードサービスとしては、JR東日本のSuicaが、2016年にApple Pay版のサービスをローンチ。PASMOにおいても、2020年3月にAndroid版「モバイルPASMO」の提供を開始していたが、当時iOS端末への言及はなかった。今回のApple Pay版PASMOは、Apple端末ユーザーにとっては待望のサービスとなる。
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