KDDIは9月25日に「UNLIMITED WORLD au 5G 発表会 2020Autumn」を開催。auブランドの5Gスマホ新機種や新サービス、そして今後の5G利用拡大に向けた戦略を語った。
KDDI代表取締役社長の高橋誠氏は冒頭、スマートフォン新機種6機種を発表した。そのラインアップは「Xperia 5 II」や「AQUOS sense5G」のほか、「Galaxy Note20 Ultra 5G」などサムスン電子製の4機種を取り揃え、中でも折り畳みスマートフォンの「Galaxy Z Fold2 5G」「Galaxy Z Flip 5G」の2機種はau独占販売モデルになるという。
また高橋氏は、5Gを特別なものではなく「みんなの5Gにしていきたい」と話し、今後auで提供するスマートフォンは「すべて5Gにしていく」と宣言。コンテンツやサービスを提供するパートナー企業とともに、5Gの体験価値をより多くの人に届けることに力を入れていると説明した。
その5Gの体験価値を届ける新サービスの1つとなるのが、KDDIが開発に協力したという、プロが制作した短尺の映像コンテンツを配信する、月額550円のサブスクリプション型サービスであるSHOWROOMの「smash.」だという。会場にはSHOWROOM代表取締役社長の前田裕二氏が登壇し、smash.の開発にいたった経緯を説明した。
「YouTube」「TikTok」などスマートフォンで人気の映像サービスの多くは、アマチュアが制作した動画を配信し、身近さを感じさせる内容で人気を獲得している。その一方で、プロが制作した短尺の動画を提供するサービスは存在しないことから、スマートフォンに向けてプロが本気で制作した“作品”となるコンテンツを、5Gのネットワークと掛け合わせて高画質で提供するサービスに前田氏はチャンスを見出し、smash.を提供するにいたったのだという。
高橋氏はさらに、コロナ禍以降「バーチャル渋谷」や「バーチャルハマスタ」など、KDDIが出資するバーチャルSNS「cluster」を活用した取り組みを積極的に実施したことを紹介。その新たな取り組みとして、バーチャル渋谷の中で「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス」を開催することを発表した。
これは、仮装したアバターでバーチャル渋谷を散策しながらコミュニケーションを楽しめるというもので、期間中はバーチャル渋谷内でNetflixのアニメ作品や、人気アーティストやお笑い芸人のライブなども実施されるという。また、このイベントは渋谷区公認で実施されるとのことで、説明会では渋谷区長の長谷部健氏が、コロナ禍で従来のイベント実施が難しくなっているからこそ「渋谷らしい解決策を。デジタルツインのバーチャル渋谷は新たなフェーズに進む」とビデオメッセージを寄せた。
もう1つのコンテンツ施策として、高橋氏は有料会員プログラムの「auスマートパスプレミアム」を「5Gをフルに楽しめるゲートウェイにする」と宣言。マルチアングル動画やXR、クラウドゲーミングサービスの「GeForce NOW Powered by au」を提供するなど、5Gの性能を生かせるコンテンツの充実を図っていくとした。
さらに高橋氏は、料金関連の施策についても言及した。その1つは新料金プラン「データMAX テレビパック」だ。これは民放キー局4局と提携し、テレビ局が関わっている有料映像配信サービス「TELASA」「Paravi」「FODプレミアム」と、データ通信の使い放題をセットにした新料金プラン。プランは5G向けの「データMAX 5G テレビパック」(値引きなしで月額1万350円)と、4G向けの「データMAX 4G LTE テレビパック」(月額9350円)の2つが用意されるという。
また、5G向けの段階制プラン「ピタットプラン 5G」の料金を、10月1日から1000円値下げし、4G向けのプランと同額で提供することも発表。「データMAX 5G」などの使い放題プランに関しても、加入翌月から12カ月間、月額1000円を割り引く「5Gスタート割」を実施するとしている。
さらに高橋氏は「これからの時代、コンテンツがネットワークを選ぶ時代になると思う」と話し、5Gのエリアに拡大に向け積極的に投資していくと説明。5G向けの周波数帯だけでなく、4G向けの周波数帯も積極活用することで当初計画より前倒ししてエリア整備を進め、5G基地局を2021年3月末には全国1万局、2022年3月末には5万局設置するとしている。
なお、10月1日に、UQコミュニケーションズから「UQ mobile」の事業を承継することで、高橋氏は「フォーメーションを大きく変える」と、マルチブランド化を積極推進することも打ち出している。具体的には、auを5Gによる使い放題と充実したサービスを提供するブランドと位置付ける一方、UQ mobileはシンプルでお手頃な価格のサービスを提供するブランド、そして傘下のMVNOが提供する「BIGLOBEモバイル」「J:COM MOBILE」は価格重視のブランドとして位置付けを明確にし、幅広い顧客のニーズに応える方針のようだ。
しかしながらここ最近、新たに内閣総理大臣に就任した菅義偉氏が、KDDIを含む携帯大手3社の料金が大容量プランを中心に世界的に高い水準にあるとして、大幅な料金引き下げを求めることを公約に打ち出し、大きな注目を集めている。そうした政府の動向について高橋氏は、「料金引き下げ要請は真摯に受け止めないといけない。対応を検討していきたいと思う」と話し、政府の要請があれば何らかの対応をしていくとした。
だが一方で、民間企業であることから料金引き下げには通信以外のビジネス拡大などさまざまな企業努力が必要であり、なおかつ公共の電波を使う事業者として、災害対策などの社会的責任を果たしていく必要があるとも説明。
今後、積極投資が必要な5Gに関しても、政府が打ち出す「Society 5.0」の基盤となることからスピード感を持ってエリア展開する必要があるものの、諸外国での5Gの整備スピードが非常に速く、整備の遅れが世界から1周、2周と大きな遅れを取ってしまう可能性もあると、料金引き下げ要求がもたらす影響について危機感を見せていた。
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