ベクノスは9月16日、超スリム・ペン型の全天球カメラ「IQUI(イクイ)」を10月1日から発売すると発表した。価格は、2万9800円(税別)。
同社は、リコーが2013年に発売した民生用全天球カメラ「RICOH THETA」の開発コアメンバーが中心となって2019年に発足したスタートアップカンパニーだ。THETAのプロジェクトリーダーを務めた生方秀直氏が代表取締役 CEOに就任している。
ベクノスの第一弾製品が超スリム・ペン型の全天球カメラIQUIだ。F2.5、レンズ構成や撮像素子、サイズ、有効画素数は非公開。静止画解像度は5760×1930。フレームレートは30fps、ビットレートは約45Mbps。重さは約60g。撮影距離は約40cm~となっている。
「目指したのは、世界一美しくて生活の中に溶け込む全天球カメラ」と生方氏は説明する。「ハードウェアが生活の中になじんでいる。そのユーザー体験そのものが生活の一部として自然に使って楽しい。そういうものをゴールに定めたとき、形をどうするか。結論としてはコンパクトなペン型を狙おうと思った」と明かした。
同社では、さまざまな場面で簡単・手軽に使えるシンプルなデザインを設計の基本思想とし、側面に3つ、天面に1つの計4つのレンズからなる光学系を開発。一からすべて再設計し、携帯性だけでなく、高級感のある金属素材、手になじんで使いやすいデザイン、運びやすい重量を実現した。会社のロゴも製品のロゴもない。ごくシンプルなデザインからも相当なこだわりがうかがえる。
また、本体備えた電源ボタン、シャッターボタン、写真/動画モード切り替えボタンの計3つで基本操作が可能。それ以外の操作は、スマートフォンから無線で行う仕様となっている。
充電のための有線接続コネクターも本体には装備せず、充電は付属のUSBコネクターを利用して行う。
量産化に入る前に起きたコロナ禍で、現地に行けないため中国にある工場とのやりとりもままならない。苦労の連続だったという。「まだエンジニアリング・サンプルの状態だったが、6カ月で量産立ち上げまで持ってきた。完全新規設計で、生産設備類も独自設計。それをリモートでどう調整するか。現場の工場の技術者、職人とベクノスサイドの職人が長年やってきたカンをもとにすりあわせた。最後はそれに助けられた。フルデジタルだけではダメだった」と明かした。
なお、8月に先行リリースしたスマートフォン用アプリ「IQUISPIN(イクイスピン)」を併せて活用することで、本体とスマートフォンとの簡単接続・簡単データ転送や、スマートフォンからの遠隔操作が可能になる。
さらに、撮影した写真に動きを付加する「モーション」や 、ハートマーク・シャボン玉・花火など素材を3Dで写真に付加する「エフェクト」のほか、10月1日からは写真の色調を変更する「フィルター」機能も追加。これら機能により、ショートビデオ(.mp4)が簡単に作成でき、SNSやメールなどを介して共有できる。
同アプリは、他メーカーのカメラで撮影した全天球写真でも活用できるが、IQUI限定の特別なエフェクト(10月1日公開)なども用意するという。
別売のオプションバッテーリーチャージャーケース「BCC-1」(11月発売予定/税別8800円)を利用すれば、IQUIを安全に収納しながら充電(2回以上)が可能だ。
販売は、日本、中国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの6カ国で開始。日本においては、総合オンラインストアAmazon.co.jpでの販売と、最新ガジェットが体験できる「b8ta Tokyo - Yurakucho」と「b8ta Tokyo - Shinjuku Marui」の2店舗および、「二子玉川 蔦屋家電」での製品出品・販売を皮切りに、順次拡大するという。
リコー 代表取締役 社長執行役員・CEOの山下良則氏は、リコーについて「OAメーカーから脱皮してデジタルサービスへの会社へ転換中」と説明する。
そうした中でリコーの新規事業開発の一環として設立されたのがベクノスだ。リコーの関連会社でありながら、リコーのコア事業とは異なる「イノベーション特区」と位置づけ完全に独立したスタートアップでもある。
リコーの新事業の立ち上げ方について、「基盤の事業を深めることと、新しい事業を作り出すことを両輪で進めなければならない」と語った。
山下氏は、これまで見てきた成功している会社に共通点があったとし、「新たな挑戦を応援する文化・風土がある、敗者復活の土壌があること」の2つを挙げた。
「最大のサポートはいちいち口を出さないこと」とし、ベクノスの立ち上げや事業の進め方について、見守りながら新たな挑戦に取り組んでいる姿勢を示した。
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