拡張現実(AR)のスマートメガネに関するFacebookの将来設計はまだ構想中の段階だが、近く日の目を見ることになる可能性がある分野の1つは、スマートオーディオだ。Facebookは、空間音声と音声ARという2つの分野に強い関心を寄せている。同社はARおよび仮想現実(VR)担当部門Facebook Reality Labs Research(FRL Research)による最新の研究報告の中で、現実世界をシャットアウトし、実際にはそこにない仮想オブジェクトがまるですぐ隣にあるかのように聞こえるデバイスの開発計画について説明した。
AR分野全体が現在も未解決の領域であり、Apple、Google、Microsoft、Magic Leapなどの企業が次の10年のイノベーションをけん引しようとしている。
Facebookは当初、米国時間9月16日に開催する「Facebook Connect」カンファレンスに先立ち、ビジターを集めてデモを披露する予定だった。しかし、新型コロナウイルスの影響で、記者らはFRL Researchの研究担当責任者であるMichael Abrash氏および音声研究チームから、オンラインで話を聞くことになった。
空間音声はすでにリアルなVRで重要な機能となっているが、次なる波に向けたFacebookの計画は、会話、注意力、音声の忠実度により重きを置いている。これには、まるで同じ部屋の中に目に見えないスピーカーが立体的に配置されているように感じさせることが含まれる。Abrash氏は、「私にとって最も注目に値するのは、(Facebookの新たな音声技術に関する)あらゆることが、しかるべき期間内に間違いなく実現可能であることだ」と語った。
Abrash氏によると、いずれはこの音声技術が「Oculus Quest」などのVRヘッドセットや、他のFacebookデバイスに搭載される可能性もあるという。
空間音声を使ってFacebookが現在進めている実験では、無響室で人の周りにスピーカーアレイを取り付けたロボットアームを配置し、30分かけてその人の耳の空間音声的特性(頭部伝達関数:HRTF)を導き出している。そのため、まだどこでも計測できるという段階ではない。同チームは他の新たな方法も模索中だという。スマートメガネはまだかなり先の話で、いったん測定が済んだ後で音声をテストするためにFacebookが使っているヘッドセットは、音声再生機能と指向性マイクを搭載したメガネのようなもので、視覚に関する機能はまだない。
FRL Researchの音声グループもこの音声技術について、会話を聞きとりやすくし、背景のノイズや他者の話し声を除去しながら音声を明瞭にするための補助として使おうとしている。
Facebookの研究は音声を集束させるためにビームフォーミングを利用しており、ここでもテスターが装着しているのは、指向性マイクを搭載した空間を感じさせるプロトタイプだ。最終的に同技術が将来の製品化に繋がるように、この音声再生のためFacebookはオリジナルのイヤホンを作成している。
2D表示しかできないスマートフォンでは、「Googleマップ」の「ARナビ」のような実験から、現実世界ではヘッドアップディスプレイの限界が示された、しかし、音声による指示ならばよりスムーズだ。まず音声で注意喚起し、その後に視覚に働きかけることになるだろう。Facebookはこのプロセスをまだ明確にできていないが、ARに最適化された「LiveMaps」(同社が現在手がけている現実空間の3Dマップ)をナビゲートするためにこの音声技術が使える可能性を3日に投稿した記事で説明している。
空間音声におけるFacebookの先進的な取り組みによって、ヘッドホンからではなく現実世界から聞こえるようなリアルな3Dオーディオが実現できるとAbrash氏は約束したが、現在の研究では、複雑な耳のスキャンと空間マッピングされた部屋が必要だ。Facebookは、この技術をさらに利用しやすくするために、家庭でカメラを使って簡単に耳をスキャンすれば使えるようなアルゴリズムの開発に取り組んでいる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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