小学生の子どもを持つ母親から、「子どもがフォートナイトに課金したがる」と相談されたことがある。子どもがゲームなどに高額課金してしまう問題は以前から多いが、最近目立つのが話題の「フォートナイト」だ。
フォートナイトは何かといろいろな問題でよく話題になる。もともと他のユーザーを倒すゲームであり、ボイスチャットで会話しながらプレイする際に、子どもたちの口が悪くなることもよく問題視される。
「友だちに『もう5万円以上使ってる。君はお金ないの?』と言われて、息子も課金したいって」と、その母親は眉をひそめる。「しかも、プレイ中に『下手くそ、消えろ』とかひどい言葉で話しているのを聞いたから、もうやらせたくない。無料だからと言われて軽い気持ちで使わせたら、大変なことになってしまった」。
ボイスチャットでいじめが起きるなど問題が多発したため、「フォートナイト禁止」というプリントが配られた小学校があるほどだ。小学生におけるフォートナイト問題を見ていきたい。
小学生を対象としたゲムトレの調査(2020年6月)によると、小学生が遊んでいるゲームは、「フォートナイト」が22.1%でトップ。続いて「マインクラフト」(17.0%)、「あつまれどうぶつの森」(14.1%)だった。Switch版で「15歳以上対象」などの年齢制限がついているが、基本無料で遊べるフォートナイトは小学生の間で一番の支持を集めている。
息子の周囲の小学生も、フォートナイトに夢中になっている。コロナ禍のとき「夜中友だちとボイスチャットをしながら長時間プレイしている」という話を聞いたり、「友だちとのボイスチャットの内容がひどくて、いつも小言を言う」という話を聞いたのもこのゲームだ。
最近、App StoreとGoogle Playからアプリが削除されてしまったのだが、その影響も出ているようだ。「App Storeから削除されてiPadでプレイできなくなって、兄弟でSwitchの取り合いになっている」という。
フォートナイトでは、子どもたちが課金をすることは珍しくない。海外でも、課金をしない子どもは「貧乏人」と馬鹿にされたり、仲間はずれにされることがあるという。なぜ子どもたちは熱心に課金をするのだろうか。
一般的にゲームでの課金は、キャラを強くしたり強いキャラを手に入れたりするなど、ゲーム上有利になるために、あるいは時間や手間などをショートカットして効率的にゲームを進めるためにすることが多い。ところが、フォートナイトはもともと無料であり、課金しても強くなったりゲーム上有利になることはない。
それでも課金する理由はといえば、スキンやバトルパスだ。スキンではキャラの見た目を変えたり、エモートで動きを変化させたりすることができ、シーズンごとのバトルパスでは限定のスキンなども入手できる。
フォートナイトは友だちとコミュニケーションしながらプレイする。ところが、有料のスキンを持っていないと、毎回性別も見た目もランダムに変わってしまう仕組みのため、非常に居心地が悪い思いをすることになる。アイデンティティを保ちづらいし、相手が有料スキンで好きな見た目でいればなおさら、肩身が狭い気持ちがするだろう。
モバゲータウンでも、初期アバターは下着のようなみすぼらしい服と裸足の姿だった。他のアバターが個性的に着飾っている中で、初期アバターはあまりに立場なく感じるものだ。そのことは、人間関係にも影響してしまう。だからこそ、子どもたちは競って課金してアバターを飾ったが、今回も同じようなことが起きているのだ。
フォートナイトでは、デバイスごとにさまざまな課金方法が用意されている。たとえばSwitchでも、「ニンテンドープリペイドカード」などを購入すれば課金可能だ。スーパーマリオやピーチ姫、クッパ、ヨッシーなどの絵がついたニンテンドープリペイドカードは、1500円からコンビニなどで年齢制限や本人確認などもなく誰でも購入できる。
小学生の子どもを持つ保護者は、課金をさせたくないと考える割合が高めのようだが、課金に対しては一般的に意見が分かれる。課金をさせたくない保護者は、「無課金でも十分遊べる」「自分で稼いでからするべき」「課金し始めるときりがない」などの考えのことが多いようだ。
しかし、ゲームに課金することが必ずしも悪いわけではない。「あまりに禁止しすぎると、大人になってから反動でつぎ込む」「お金について学ぶ機会になるし、お小遣いをためて課金するのはあり」という意見もあり、家庭によっては金額を限定して許可しているようだ。ただ、フォートナイトでは課金によるトラブルも続いている。ゲーム内コンテンツを「ギフト」としてフレンドにプレゼントできるのだが、2段階認証さえ済んでいれば、子どもがギフトを購入してプレゼントできてしまう。
「『ギフトくれ、くれ』としつこくいう子がいる。僕だけ2段階認証が済んでるから」という話を聞いたことがある。スキンがあまりに価値があるため、ギフトが購入できる子にたかってしまう子が出てきてしまうようなのだ。それ以外にも、友だちにギフトをばらまいてしまう子や、課金できない子にお願いされて代わりに購入し、現金をもらっていた子もいるという。
課金する仕組みはたくさんあり、子どもが隠れて課金するとトラブルにつながってしまいかねない。まず家庭ごとに、子どもの年齢などに合わせて課金はするかどうか、するならいくらまでかについて話し合っておくといいだろう。トラブルにつなげないためには、子どものゲームの利用状況を見守りつつ、普段からしっかりとコミュニケーションしておくことが大切ではないだろうか。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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