9月の恒例アップルイベント、2020年はどうなる?--「Appleニュース一気読み」

 Appleは例年、9月第2週にイベントを開催し、新型iPhone、Apple Watchなどの製品を披露、その翌週の週末から販売を開始する、というサイクルを保ってきた。

 2020年のカレンダーを見ると、例年通りであれば、9月7日や9月8日にイベントを開催し、その週の週末、9月11日から予約開始、9月18日に発売をし、新型iPhoneやApple Watchの初速の売上高の1週間分が2020年第4四半期決算に計上される、という流れだった。

 しかし2020年はそうならない理由が2つ挙げられる。1つは、2020年第3四半期決算の電話会議で、AppleのCFO、ルカ・マエストリ氏が「iPhoneの発売が数週間遅れる」ことを明言したからだ。秘密主義のAppleがiPhoneの遅れを明らかにしたのは、売上高の数字に重大な影響を与えると考えられるからだ。

 例年とは異なり、2020年第4四半期(つまり2020会計年度)に、新型iPhoneの売上高の初速が含まれないため、iPhoneのみならず売上高全体も、前年同期から落ち込むことになるかもしれない。決算発表時に次の四半期の売上高の予想(ガイダンス)を公表するのも通例だが、今回2020年第3四半期に続いて、第4四半期のガイダンスも非公表となった。

 もう1つは、マーケティング担当者が変わったことで、「今まで通り」が通用しなくなった可能性がある。長年Appleでワールドワイドマーケティングを担当してきたフィル・シラー氏がフェローに昇格し、後任にはグレッグ・ジョズウィアック氏が就任した。

 ジョズウィアック氏も、1986年にAppleに入社し、長年Appleのプロダクトマーケティングに携わってきた人物で、特にiPod、iPhone、iPadの製品ラインを成功に導いてきた。筆者は何度か会っているが、顧客に対して情熱的でサービス精神旺盛な人物だ。

 Appleは基本的に、上手くいっていることは変えないが、その一方で担当するヘッドが変われば、その方針や手法が踏襲されるとは限らない。2014年以降、iPhoneとApple Watchがセットで発表されてきたが、これが引き継がれるかどうかも不明だし、9月10日(木曜日)のライブイベントの可能性についても、決して否定されるものではない。

アップルのイベントに新たなうわさ--9月10日にYouTube配信?(8月21日)

Appleの時価総額、2兆ドルへ

 Appleは米国企業として初めて、時価総額1兆ドルを達成したが、それから2年で、2倍となる時価総額2兆ドルを達成した。2020年8月19日の午前8時前に467.55ドルをつけ、8月21日の終値、時間外取引でも500ドルまで上昇した。

 1年前の最安値は203ドル、2019年1月2日の利益警告のタイミングで付けた近年の最安値が142ドルだったことを考えると、この2年半の株価の上昇は驚くべきレベルだ。自社株買いによる株主還元プログラムが進行していること、8月24日に4分割を行うことで注目が集まっていることなど、Apple自身が株高を演出する取り組みを巧みに行っている。

 ティム・クックCEOは、長期的な成長を要求しながら、四半期との決算の善し悪しに注文を付けるウォール街に対して批判的な目を向けている。そうした本音とは裏腹に、売上高を高め、成長分野を作り出し、株価対策をきっちり行う、世界中の投資家を上手く惹きつけている舵取りをしていることも事実だ。

 外的要因もある。新型コロナウイルスで既存のほとんどのビジネスが打撃を受けているが、Appleの直近の2020年第3四半期決算(4〜6月)は、リモートワーク、オンライン授業の需要でiPadとMacが急伸し、サービス、ウェアラブルも堅調な成長を続けたことから、「コロナに強い数少ない銘柄」という認識を獲得し、消去法的に資金が集まっていることもあるだろう。

アップルの時価総額、2兆ドルを突破--約2年で2倍に(8/20)

EpicとAppleの法廷闘争

 Epic GamesがApp Storeの規約違反を承知で独自のデジタルアイテム決済をアプリ内に用意し、Appleがこれに対抗してアプリを削除し、是正を求めている問題。

 Appleは8月13日にEpicの「フォートナイト」をApp Storeから削除したが、14日にAppleは「8月28日までにすべての開発者アカウントを停止し、iOSとMacの開発ツールからEpicを切り離す」と通知した。これは8月17日にEpicが裁判所に仮差止命令を申し立てたことで明らかになった。

 Appleは「Epicと協力して解決策を見つけたい」という声明以上は出しておらず、日本時間で週が明けても、状況は大きく変わっていない。Epicとしては、App Storeの手数料値下げが焦点で、これに賛同する企業を集めて裁判に臨むものと考えられる。

 たとえば、Microsoftは、Epic支持を打ち出した。Epicのゲーム開発環境であるUnreal Engineが、AppleによってiOSやmacOSで利用できなくなると、ゲーム制作を阻害するとしている。

 Appleと同様に、Googleに対してもEpicは訴訟を起こしており、Appleの味方はGoogleだけというのが現状のようだ。

その他

アップル、独立系修理業者向け修理プログラムを「Mac」にも拡大(8/18)

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