差別的な用語を排除へ--IBMとマイクロソフトの自発的な取り組み

Catalin Cimpanu (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部2020年08月25日 13時34分

 一般の関心は、「Black Lives Matter」運動や人種的不平等の問題から遠ざかりつつあるが、多くの企業は今も、人種的配慮に欠けた偏りのある技術的用語の見直しに取り組んでいる。

Microsoft
提供:ZDNet

 Twitter、GitHub、Red Hat、MySQL、Linuxカーネル、OpenBSDのチームによる取り組みが、すでに報じられているが、米ZDNetはテクノロジー最大手であるIBMとMicrosoftでも、同様の取り組みが行われていることを確認した。

 両社の従業員は、文書やソースコードで使用されている配慮に欠けた専門用語を、中立的でより社会的に容認された用語に置き換えるべく、社内で非公式のグループを立ち上げた。

 これらは他社の同種の取り組みのように、公に宣伝されていないものの、IBMとMicrosoftは現在ある最大のソフトウェアリポジトリのいくつかを管理しているため、ほかの取り組みと同じくらい、もしくはそれ以上に重要かもしれない。両社のソフトウェアリポジトリには、何百もの製品やオープンソースプロジェクトを網羅する、数百万行のコードが保存されている。

 IBMとMicrosoftは、コードに含まれるいくつかの言葉を変えるだけで、人種差別を根絶できると考えるほど世間知らずではない。しかし長期的に、あらゆる人々にとってより包摂的な社会になるよう、自社なりの小さな役割を果たしたいと考えている。

IBMのトップダウンのアプローチ

 両社は似たような目標を掲げつつも、その取り組み方は異なっている。Microsoftの場合、社内で従業員が自主的に始めた活動だが、IBMは経営陣の賛同を得たトップダウンの取り組みとなっている。

 IBMでChief Data Officeのバイスプレジデントを務めるTim Humphrey氏は、同社が組織的なアプローチをとっていると、ZDNetに電話で語った。

 Humphrey氏によると、同社の社内組織であるAcademy of Technology(AoT)内で、グループを結成した。同社はAoTが、「IBMを代表する思想家と問題解決者から成る、アクション重視の団体」であり、「IBMの技術コミュニティーをつなぐ技術的リーダーシップ」を提供していると説明した。

 このグループは現在、約15の技術用語を見直し、適切な代替案を探している最中だ。現在、見直し用語のリストには、「マスター」「スレーブ」「ブラックリスト」「ホワイトリスト」といった、問題が明らかなもの以外にも、「ホワイトレーベル」「ホワイトペーパー」「マンアワー(工数)」「チャイニーズウォール(情報障壁)」などが含まれている。

 Humphrey氏によると、見直す用語は必ずしも人種差別的なものだけとは限らず、外国人嫌悪を意味したり、ジェンダー的に偏ったりしている言葉も対象になるという。

 さらに、このプロセス全体がオープンで、IBMの従業員は社内の文書やソースコードに含めるべきではないと思う言葉を提出できる。

 Humphrey氏は、IBM社内で使用可能な言語を定める社内のスタイルガイドから、すでに幾つかの用語を削除済みだと述べた。

 これらの作業はすべて、より高い目標のために自由時間を捧げている、IBMの「ボランティア集団」によって行われているとのこと。

Microsoftの非公式グループ

 Microsoftでも同様の取り組みが行われているが、これは新しいものではなく、何年も前から始まったものだ。しかし現在は、より多くの従業員がボランティアとして参加しており、その規模が拡大している。

 同社の取り組みは、ミズーリ州ファーガソンで18歳の黒人少年が警官に射殺されたことに対する抗議運動を機に始まった。一部の従業員が社内グループを結成し、同社のソースコードや社内・社外向け文書を見直して、差別的用語をより包摂的な言葉に置き換える作業に取りかかった。

 「ホワイトリスト」や「ブラックリスト」などの用語は「allowlist」と「denylist」に、「マスター」「スレーブ」は「プライマリー」と「セカンダリー」に変更された。

 レガシーコードや、サードパーティーコードと統合されているために変更できない場合は、不愉快もしくは包摂的でないと思われる可能性がある言葉が含まれている旨の警告が、公開されている文書ページに付記された。

公開されている文書ページに付記された警告
公開されている文書ページに付記された警告
提供:ZDNet

 数年前に、ごく少数の従業員によって始まった、Microsoftのコードを見直す作業は7月時点で、50人以上が従事する取り組みへと成長した。

 同社の上層部から、明確な承認や直接的な監督を受けていないものの、こうした取り組みは容認されているだけでなく、社内で広く導入されており、LinkedInのチームも同種の取り組みを行っているという。

 こうした技術用語を見直す一連の活動は、5月にGeorge Floyd氏さん警察官によって死亡させられた事件をきっかけに活発化した。見当違いな美徳の表われだと評されることも多かったが、徐々に2020年の主要な業界トレンドになりつつある。こうした取り組みが結実し、エンジニアの話し方やコードの書き方に反映されるまで、長い時間を要するかもしれない。しかし、IBMとMicrosoftおよび両社の従業員は、こうした地道な活動が、何年にも及ぶプロジェクトの基盤作りであることを十分に認識している。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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