SUNDREDとシェアメディカルは、ユビキタスヘルスケア共創会のオンラインイベント「実現、そして拡張する医療エクスペリエンスのニューノーマル」を8月7日に実施した。
SUNDREDは、2019年7月に「新産業共創スタジオ」を発足。患者・医療者など人間を起点に、医療エクスペリエンスにおける「実現すべき未来」のイメージの共有からスタートし、セクターを超えた共創を通じてその実現に取り組んできた。
また、デジタル聴診デバイス「ネクステート」を販売するシェアメディカルは、新産業共創スタジオのプロジェクトに参画した企業のひとつ。SUNDREDによるサービス開発などのサポートを受けながら、デジタルヘルス事業のさらなる加速を目指してきた。
今回のオンラインイベントでは、シェアメディアルの代表取締役 CEO峯 啓真氏が、「動き出す医療〜臨床現場発のニューノーマル〜」と題して、ネクステートの歩みを解説した。
ネクステートは、医師が愛用している既存の聴診器に装着してデジタル化する聴診器デジタル化ユニットだ。内蔵アンプによる音量調節に対応しているほか、騒がしい診察室内でも正確な聴診が行えるようにノイズリダクション機能を備える。
聴診器は1816年の発明から約200年間、材質は変われど、ほぼ改良のないまま医療現場で使われてきた。検診などで100人も診ていると「耳が痛い」と悲鳴を上げる医師も少なくなく、心音を患者とシェアできない、遠隔診療に使用するのが難しいなどさまざまな問題があった。
ネクステートは、2019年12月に出荷を開始して以来、「半年で出荷台数が約100倍になった」という。この成長の背景には「聴診する人と、診断する人を分ける」というネクステートだからできることが大きく寄与したのだという。
峯氏は「従来は自社ECでの販売が多かったが、4月の緊急事態宣言発令後、代理店への問い合わせが急増した。自社ECでの販売はクリニックの個人購入が多かったが、代理店への問い合わせは病院や医科大といった新型コロナウイルス診察の最前線で戦っている病院からの要請が多かった」と話す。
実際の現場で、ネクステートはどのように活用されているのだろうか。峯氏は3つの事例を紹介した。
まずひとつめは、豊田地域医療センターでの活用例だ。
ネクステートはBluetooth無線通信機能を内蔵しており、市販の対応ヘッドフォンやスピーカーなどをつなぐことで、約10m離れてワイヤレスで聴診可能だ。そのため、豊田地域医療センターでは、ネクステートを患者自身が自分の身体にあて、ビニールカーテンなどの仕切り越しに医師がワイヤレスヘッドフォンで診察を行ない、飛沫感染リスクを低減する試みを行なっているという。
同センターの近藤敬太医師は、それまで防護服を着て診察を行なっていたが、どうしても防護服を着るというだけでストレスを感じていたと話す。
「心のどこかで、新型コロナウイルス感染のリスクを感じ、自分も感染するのではないかという恐怖心が医師、看護師などすべての医療従事者の中にあった。そうすると、どうしても普段のルーティンができないときがあり、診察後『こんな検査をしておけばよかった』『こういう問診をしておけばよかった』と思うことがあった。また、初期の頃は防護服が不足するのではないかという心配も抱えていた」(近藤医師)。
さらにネクステートを使用することで、こうした現場の医療従事者のストレスが軽減し、普段と同じような思考回路で診察ができるようになった、と続ける。
豊田地域医療センターに何度か足を運んだという峯氏は「ネクステートを何回くらい使ったかとたずねると、『何回使ったか覚えていない』と言われ感動した。これは、ネクステートが単なる便利ツールではなく、必要なものとして認められた瞬間だったと思う」と話す。
2つめが、新型コロナウイルスの重症者への治療を行なう病棟でのネクステートの使用例だ。
一般的な聴診器を使用する際、ヘッドの部分は気をつけてアルコールなどで拭くようにしていても、取り外す際に、チューブの部分などが使用者に触れてしまうことがあり、そこに院内感染のリスクが潜んでいるのだという。ネクステートを使ってスピーカーに送信して聴診をすれば、そういった心配が減らせるとしている。
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