特に近年はスマートホーム関連機器にも注力している住宅設備機器・建材メーカーのLIXILでは、かなり早い時期から、強力に新型コロナウイルスの感染防止対策を進めた。
1月下旬から在宅勤務をする従業員が増え、2月中旬には在宅勤務だけでなく時差出勤やオンライン会議などを推奨。2月末ごろからは週3回以上を在宅勤務として、3月30日以降は原則在宅勤務に切り替えた。本社ビルだけでも従業員は約5000名にもおよぶが、最終的にはその99%以上が在宅勤務に移行したという。
客先への訪問が主体だった営業部門においても、ほとんどの営業活動がZoomなどを使った営業活動にシフト。LIXIL常務役員の飛田裕司氏いわく「できないだろうと思っていた」チャレンジングな取り組みだったが、従来は1日に訪問できる営業先が数件程度だったところ、テレワーク下では1日に10~20名の顧客とコミュニケーションできる場合もあり、提示する資料の見せ方も含めて「むしろ効率的な提案が可能になった」ことを明かした。
社内ミーティングについても、経営側と従業員がZoomでやりとりすることが多くなった中で、これまでのような一般社員が経営者に対して意見しにくい空気感がなくなり、フラットで活発なコミュニケーションへと変化したという。
その一方で、サッポロビールの森本氏が雑談の重要性について言及していたように、LIXILにおいても、日常の雑談が少なくなったことで従業員の様子を察することができなくなったり、従業員自身がストレスをコントロールしにくくなっていると思われることから、「違った意味で従業員の健康と安全に気を配らなければいけなくなった」ことに気付いたという。
新入社員教育も対面で行っていたときより、Zoomなどを使ってオンラインで実施した方が効果が高まっているという感触もあったことから、同氏は「今後の人材育成やスキルトレーニングがどうあるべきかも、課題として浮かび上がってきた」と語った。
緊急事態宣言が解除された6月以降、同社では最大出社率40%を目安に通常勤務を認めることにしたが、本社オフィスでは経営側が想定していたよりはるかに低いおよそ10%という出社率に止まり、「従業員1人1人が自ら、明らかに働き方を変えてきている」ことを実感する状況となっているという。
会社側が決めた従業員の健康・安全に関するルールの遵守に加えて、従業員自身がコロナ禍の環境で「自ら意識を高め、どのような働き方をしていくべきか、考えるフェーズに入った」と飛田氏は感じている。それに合わせ、新しい働き方に対応する人事としてのシステムやサポート方法についても変えていく必要性に迫られているとした。
さらに、LIXILの従業員として働くことについての「誇り」、言い換えれば「エンゲージメント」をどう高めるかも同氏にとっては課題になってきていると話す。たとえば、在宅勤務が日常になりつつある新しい環境下では、従業員が会社に求めるサポートも必然的に変わってくると話す。
仕事をする場所についても、「将来のビジネスのために価値を生む場はどこなのか、コミュニケーション力やチーム力を高める場はどこなのか、人材育成をする場とはどういうものなのか」といった議論の重要性が増してきているとした。少なくともこれからのニューノーマルという視点では、従来のような広さのオフィスの必要性は薄くなっているとの認識ではあるものの、飛田氏としては、依然として本社オフィスがビジネスにおいて重要な役割を果たす場所であるという考えだ。
しかしながら、そうしたオフィスのあり方を含め従業員が新たに求めてきているものに対し、経営側が「クリアな答えを出さないといけない」状況になってきていると明かし、「従業員全員に、(仕事をする)場の意味をわかってもらう活動を進めていきたい」と話した。
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