LIXILグループは6月23日、上下水道が整備されていない地域でも手洗いができる「SATO Tap」を発表した。新型コロナウイルス感染拡大防止に最も効果的とされる手洗いを水道が利用できない地域でも推進する。9月にインドで先行提供を開始し、2021年初旬までに一般販売を開始する予定だ。
SATO Tapは、プラスチック製の本体とノズルで構成され、上部に水の入ったペットボトルを取り付けることで、簡易水道のように使える手洗いソリューション。新型コロナ感染防止に最も有効とされる手洗いを、水道が整備されていない地域でも徹底するためにLIXILが開発した。
LIXILグループ 社長兼CEOの瀬戸欣哉氏は「新型コロナウイルス感染防止に必要なのは手洗い。しかし世界では30億人が自宅で衛生的な手洗いができない環境にあり、その数は人口の40%に相当する。学校など近くの公共施設に手を洗える環境はあるかもしれないが、そこには人が集まり、三密状態になりやすい。そうした手を洗える環境が十分ではない人に向け大きなソリューションを提供できるのはLIXILとして素晴らしいこと」と、開発の背景を話す。
LIXILでは「SATOブランド」として、開発途上国向けに低価格な簡易トイレシステムを提供しており、38カ国以上、1800万人以上の人々の衛生環境の改善に貢献してきているとのこと。SATO Tapは、SATOブランドの新製品になる。
前後についたノズルを腕や肘で押すことで水を出したり、止めたりができるデザインを採用し、蛇口などを手で触ることなく使える形状を実現。タンクには手に入りやすいペットボトルを使うことで、どんな地域でも使え、なおかつ再利用することでゴミの削減にもつなげる。
「大きなタンクに蛇口がついているような設備は、水がたくさん入るため水圧が強く、一度開くとたくさんの水が出てしまう。SATO Tapは、一定の水量が出る仕組みになっており、手洗いには最適。水も無駄なく使える」と、SATOのChief Technology and Marketing Officerを務める石山大吾氏は説明する。
上下水道が整っていない地域では、二人一組になり、バケツに入っている水をお互いに掛け合って手を洗ったり、木で作った柵に水のタンクをぶら下げたりして手洗い環境を作っているが、二人一組では使いにくく、木の柵などは牛に壊されるなど、なかなか手を洗う習慣が定着しにくかったという。足で蛇口を開閉する設備なども販売されているが、値段が高く、多くの場所に設置はしづらい。
「SATO Tapの製造コストは2ドル以下。ただし、製造拠点から販売する場所に配送するコストや、現地で商売として販売してもらうことも考慮に入れた価格になる。LIXILでは、SATO Tapの普及に向け1億円相当を拠出し、サプライチェーンの拡大や生産拠点の拡充などを実施する計画。まず50万個用意すれば、1個につき5人くらいで使うことができ、約250万人に使ってもらえる」(瀬戸氏)と手洗い環境の整備を進める。
すでに簡易トイレシステムであるSATOブランドの販売実績があるインドから提供をはじめ、その後アフリカなどの地域に拡大する予定。ユニセフとパートナーシップを組むほか「例えばペットボトルを扱う飲料メーカーや石鹸メーカーなど、広くパートナーを募りたい」(瀬戸氏)とする。
開発は3月下旬にスタート。「新型コロナウイルスの感染が拡大する中、どうにかして手洗いができる環境を提供したいと考えた。私自身も新型コロナウイルスに感染したが、回復後にプロトタイプを作り、チームメンバーやパートナーからフィードバックをもらいながら約2カ月で完成した」(石山氏)と、開発はスピード感を持って進めたとのこと。
瀬戸氏は「世界の衛生環境の課題を解決することは、これからも力を入れ、リソースを注がないといけない。一方、当然使える予算が多い年もあれば、少ない年もある。SATOはそうしたことに左右されずに利益のある事業に育てないといけない」と今後について話した。
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