楽天は2020年5月13日、2020年12月期第1四半期決算を発表。営業収益は前年同期比18.2%増の3314億円と増収を達成したが、営業損益は241億円の赤字(前年同期は1136億円の黒字)、最終損益は353億円の赤字(同1049億円の黒字)に転落した。
赤字要因は主として「楽天モバイル」のモバイル事業や、「楽天スーパーロジスティクス」などの物流事業といった新規事業への先行投資と、同社が出資している米Lyftの評価損による利益減少など、投資事業による損失が響いた。Eコマースの「楽天市場」などのコア事業は好調で、こちらの売上高は前年同期比13.8%増の2582億円、営業利益は前年同期比3.1%増の302億円となっている。
中でも大きな注目を集めている楽天モバイルの携帯電話事業に関しては、2020年4月8日に本格サービスを開始したばかりだ。楽天の代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏は、世界初の完全仮想化ネットワークによって「ネットワーク容量や速度を上げることが、ハードウェアに全く依存しない。バーチャルマシンを増やしていけば容量をいくらでも上げられる」とネットワークに自信を示し、海外へのプラットフォーム展開も推し進めていきたい考えを示している。
総務省から幾度にわたって指導を受けるなど、楽天モバイルの懸念要素となっていた基地局整備に関しても、2020年3月末時点で計画していた3432局を大きく上回る4738局で既に電波を発射しており、契約を締結した基地局も4555局に上るなど順調ぶりをアピール。都市部でのロケーション確保にある程度目途が立ってきたことから、今後全国展開を加速し、2021年3月に人口カバー率70%を達成したいとしている。
楽天モバイルは現在、新型コロナウイルスの影響で実店舗を臨時休業している状況だが、新規加入者の96.5%はオンラインで申し込んでおり、店舗休業のダメージをオンラインで吸収している状況とのこと。新規加入者の多くは楽天の他のサービスを利用していないことから、将来的にはコミュニケーションアプリの「Rakuten Link」を軸にしながら、加入者に対し楽天の他のサービスへとシナジーを広げていきたいという。
楽天では通信事業の損益分岐点を700万契約と見ており、その獲得までいかに早く到達するかが重要だとしている。そのために新規契約の獲得だけでなく、楽天モバイルのMVNOサービス契約者にスムーズに移行してもらうための取り組みも進めているそうで、1年以内にMVNO契約者のうち70%の移行を目指しているという。
将来的には現在の楽天カード(1964万会員)と同等の会員数を獲得したいとしているが、現時点での携帯電話事業の加入者については、「元々年末まで300万(の加入者)を目標にしてやってきている。そういう意味ではほぼ予定通りの感じと思っている」と答えるにとどまり、具体的な数への言及はなかった。
同じく先行投資分野となる物流事業については、配送サービスの「Rakuten EXPRESS」が人口カバー率62%に達したほか、Eコマース物流の「楽天スーパーロジスティクス」も2020年内に千葉県習志野市と神奈川県の中央林間に拠点を設立。2021年内のうちに、「楽天市場」の取扱高のうち50%は楽天スーパーロジスティクスでカバーできるようにしたいと、三木谷氏は話している。
またキャッシュレス決済で注目を集めるペイメント事業に関しては、クレジットカードから電子マネー、QRコード決済などあらゆる決済手段を包括的にカバーしていることが同社の強みになっていると三木谷氏は説明。中でも電子マネーの「楽天Edy」が、地方でのスーパーを中心とした展開を進めてきたことによって取扱高が伸びているとのことで、「楽天ペイ」アプリに楽天Edyの機能を実装するなどして利用者の拡大を進めているという。
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