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「KDDI DIGITAL GATE」が“3週間”でプロダクトを開発できるワケ--山根センター長に聞く - (page 3)

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2020年04月23日 08時00分
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1カ月ならギリギリ「気持ちよく捨てられる」

——いまでは1カ月というスピードでプロダクトを開発していますが、当初は開発期間が今よりも長かったそうですね。

 最初はプロジェクトのサイクルが3カ月でした。でも3カ月って長いんですよね。しかも3カ月と1カ月とで実際にできることはそんなに変わらなかったりする。なにより3カ月もかけると、その期間のコストが相当大きくなって、失敗するとビジネス的にもインパクトが大きいから、「ここまでお金をかけたんだから絶対成功させなければ!」という心理になってしまうんですね。

 そうなった場合、企業が顧客にユーザーインタビューしたときに、そこで聞いた「ネガティブな意見」を無意識のうちに捨ててしまったりする。いわゆる確証バイアスが発生して、本当は良くないサービスなのに、あたかもいいサービスのように自分を思い込ませてしまう。この心理状態を防げる限界がだいたい1カ月くらいなんですよね。

 1カ月で判断できると、もしそのアイデアがダメだった場合でも次は第2弾のこれをやりましょう、となりやすい。3カ月に1つだったのが、同じコストで3カ月の間に3つ試せるかもしれないんですよね。新規事業って多産多死ですから、たくさんいろいろなことを実験する方が成功確率を上げることができます。

 そういう意味では3カ月一気通貫でやるのではなく、1カ月やってみて、この方向で継続するのかピボット(方向転換)するのかを決めるというプロセスに変えました。期間が短ければコストも安く抑えられますし、約1カ月のサイクルにしたことで実際にリピーター増にもつながりました。

——かつて半年や1年は平気でかかっていたようなシステム開発が、3カ月になり、今や1カ月前後と、どんどん短縮しているわけですが、今後もこうした開発期間短縮の流れは進んでいくのでしょうか。

 今がたぶん限界じゃないかな、という気がします。早く進められるに越したことはありませんが、判断する材料がない中で無理に判断してしまうのは良くないと思うんです。1日やってみて駄目そうだったらやめようとしてしまうのは、最後までやり抜く力がない、みたいな話になってしまいますから。

 本当はビジネスチャンスなのに、多くの人に気付かれる前にやめてしまうのはもったいない。しっかり仮説を作って検証して……ということを考えると、やっぱり3週間以上はかかるんじゃないかなと思います。ただ当然、ビジネス的には期間が短い方が傷は浅く済みますし、もし1日2日でしっかり検証可能なスキームが確立できるなら、今より短縮できるケースもあるとは思います。

「共通のゴール」があれば衝突しても収束する

——実際にKDDI DIGITAL GATEのオフィスに来て1つのチームでプロダクト開発をするスタイルに戸惑う企業の方もいるのではないでしょうか。

 そうでもないんですよ。日本の大企業の方はみなさま優秀なので適応力が非常に高いです。そういった方々は新規ビジネス開発に適した環境とメソッドがあれば自然と自律的に動いて自己組織化していきます。やはり環境なんですよね。会社にいると、会議室で打合せしていても別件で呼び出されたりしますし、たとえ呼び出されなくても頭のどこかでは日々の業務を気にしながらの作業になってしまうと思います。ここだと目の前のものに真剣に取り組めますから。

KDDI DIGITAL GATE センター長の山根隆行氏

——一般的には、ビジネスサイドとエンジニアサイドの意見の違いがトラブルを生むようなこともあると聞きます。

 受発注の関係性においては、エンジニアサイドとビジネスサイドとで、そもそも目的が違うわけですから、意見が合わないのは当然。モノを作り上げることが目的の人と、ビジネスを成功させるのが目的の人が会話しても、合わないのは当たり前ですよね。

 でも、アジャイル開発だと「ビジネスの成功」が全員にとってのゴールになっているんです。エンジニアの人も、ビジネスがゴールに向かうためにはこんな技術が必要だといった考えをもっている。共通のゴールがあるので、意見がぶつかったとしても収束するんですね。また、多様性があってぶつかるからこそ強いチームは出来上がっていくのだと思います。

 アジャイル開発、特にKDDIが採用している「スクラム」の面白いところは、プロダクトオーナーなどのビジネスサイドと、エンジニアサイドとの間にスクラムマスターという人がいることです。サーバント型のマネージャーになるのですが、みんながうまく仕事をこなしていくためにはどうしたらいいかを常に考えて改善している人がいる。その方が技術とビジネスの両方をよく理解しているので、円滑に進められます。

——山根さんの考える「成功したプロジェクト」の定義とはどういうものでしょう。

 成功の定義って難しいですよね。「成功」にはビジネスの成功とプロセスの成功の2つがあって、ビジネスの成功は利益をいかに上げたか。一方でプロセスの成功は、極端な話、2年間実践するかどうかで悩んできたプロジェクトが、KDDI DIGITAL GATEを活用することで1カ月でやめる判断がついた、というのも成果になります。2年も3年も続けていたら、何の成果も出せないまま人件費だけ垂れ流していくことになっていたわけですから、これもある意味では成功と言えますよね。

 つまり、新規事業に対するコストが適正に使われた状態が「成功」ではないかと。やめることも1つの成果ですし、商用化を達成するのも成果。やってみたけれど、なんだかよくわからなかったっていうのは避けたいですね。

——数多くの企業の新たなチャレンジに関わってきた山根さんですが、世の中のデジタルトランスフォーメーションは進んでいるように思いますか。

 それはとても感じていますね。たとえばKDDI DIGITAL GATEで一緒にチームを組んだお客様が、同じ手法で自社のなかで取り組んでみたいと希望されることも多くなってきたので、チーム育成のプログラム提供も行っているところです。お客様からエンジニア候補生が来て、2~3カ月間KDDI DIGITAL GATEに常駐してプロジェクトを回し、自社に戻って新規ビジネスを内製する例も出てきました。短期留学制度のようなものです。

 この場所を活用して自分たちも変化していきたいと、そんな風に案件のスタートの仕方が変わってきているので、世の中はかなり変わってきているな、というのをすごく感じています。

——そうなると、いずれはKDDI DIGITAL GATEとしてのビジネスモデルも変わっていきそうですね。

 今後は我々も新しいビジネスを生み出していきたいなと強く思っています。単独の開発コストではなく、リカーリングモデルのビジネスでいかにサービスを浸透させていくか。お客様と一緒に新しいサービスを作って、我々KDDIが持っているアセットを使ってもらいながら、そこでお客様と共にBtoBtoC、BtoBtoBでサービスを提供していって、我々もそこから収益が得られる形にする。そういうビジネスを2020年度は目指していきたいと考えています。

 また、KDDI DIGITAL GATEでは5Gの電波が吹いているので、実証実験はすでにいくつも実施しています。5G商用サービスも3月末から提供を開始しました。今後は、5G関連サービスの事例はどんどん増えていきますよ。

KDDIがもつインフラや技術を気軽に利用できる検証ルーム。3Dプリンターや5Gの通信機材など、さまざまな設備が並ぶ
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