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「KDDI DIGITAL GATE」が“3週間”でプロダクトを開発できるワケ--山根センター長に聞く - (page 2)

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2020年04月23日 08時00分
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 個人的には、広島電鉄様ですね。広島電鉄様は路面電車を約135編成、バスを約560両くらい運行しています。管理者の高齢化が進んでいて、あと数年して、多くを構成する年齢層の方々が抜けてしまえば、今の仕事の方法だと事業が回らなくなってしまうと。これを何とか解決しなければいけないという切迫した危機感がありました。

 解決すべき問題のなかで一番大きかったのが乗務員管理者の仕事です。電車の運行業務をされている乗務員を管理する方ですね。この方たちが定年退職されると運行を維持できなくなってしまうということで、その業務を効率化、もしくは自動化するというプロジェクトがスタートしました。

 通常のプロジェクトだとシステムの要件定義から始めると思うのですが、我々がまずやったのは乗務員管理者の方たちがどんな1日を過ごしているかの調査でした。乗務員さんの仕事を補助したり、勤怠管理をしたり、顧客対応のサポートをしたりとさまざまな仕事をしているのですが、なかでもインパクトが大きかったのは勤怠管理です。

 ダイヤに沿って動く電車の乗務員さんは、みんなそれぞれ勤務時間がバラバラなんですね。運行遅延もあるので、乗務員管理者が個々の乗務員にヒアリングしながら手作業で勤怠管理をしていました。これがものすごく大変で、乗務員管理者は、本来は顧客サポートなどの顧客満足度を上げる仕事をもっと充実させたいのに、それができていませんでした。

——デジタル化が進んでいない企業ではよくある話ではありますね。

 これを解消しようということで、乗務員個人の1日の運行スケジュールが定義されているダイヤ情報のデータと、スマートフォンのGPSを組み合わせたシステムを作りました。乗務員の方が運転するときに近くにスマートフォンを置いておけば、終着駅に到着したときに自動で勤怠情報を送信して、運行管理者がチェックしてOKだったら勤怠システムに登録するというものです。

広島電鉄の事例
広島電鉄の事例

 これにより勤怠が自動化されて効率化できます。ただ、乗務員さんがスマートフォンをわざわざ置いてくれるだろうか、という課題もありました。そこで乗務員さんの現状をインタビューしてみると、今は紙に印刷した運行管理表みたいなものを持っていると。それを参考にしながら、例えば駅に30秒早く着いてしまったときは少し待って、正規の時間になったら運転を再開する、ということをやっているとのことでした。

 でも間違えやすいですし、小さい字を見るのも大変です。そこで、30秒早く着いたら運転席に置いたスマートフォンの画面に時計と出発時刻に加えて、信号のように黄色のサインを表示して発車時間になったらグリーンに切り替わるような機能を実装しました。これが乗務員さんの反応がすごく良くて、スマートフォンを車内に置くモチベーションが保てたんです。

——乗務員にとっては視覚的に分かりやすくなり、運行管理者は仕事を省力化できたと。

 重要なのは、これを3週間で作って実際の路線で実証実験までできたということです。通常の開発なら要件定義をしっかり終えてからサービス仕様書を書いて、サービスレベル云々を決めることになる。そうすると3週間なんて仕様書を書いて、あれこれ紙上で議論しているうちに終わっちゃいますよね。

 3週間で実際のモノを作って実証実験までできると、紙のドキュメントからは見えないいろんな景色が見えてきます。乗務員からは「これだとちょっと画面が小さいよね」とか、乗務員管理者からは「自動表示されるデータにこんなものがあるといいね」とか、作って使って初めて気付くことがたくさん出てくる。まさに、人は実際に手に入れて使ってみるまで自分が欲しいものが分からないということです。

 フィードバックが早く出てくることで、無駄なものを作らず、本当に必要なものだけを短い期間で作って実現できるんです。チームのみんなが乗務員管理者・乗務員の方のために本気で何とかしたいなという気持ちでやっていたこともあって、すごく一体感が生まれたプロジェクトということで記憶に残っています。

プロジェクトの途中で「軌道修正」できる強み

——1カ月もかけずに実証実験までできてしまうのは、かなりのスピード感ですね。

 もう1つ、パーソルキャリア様の事例も印象的でした。パーソルキャリア様は転職サービス「doda(デューダ)」をはじめとする、様々な人材サービスを提供しています。転職希望者と企業をマッチングして、転職を支援する立場にあるわけですけど、転職後の定着支援までは十分に踏み込めていない、ということが課題としてありました。

 企業はお金をかけて採用活動をするわけですから、入社してくれた人にすぐに辞めてほしくはない。企業の人事担当者が中途採用者の定着を支援するような機能を実現できれば、より、顧客への提供価値を向上させられるのではないか。そういう仮説をもとに、新しいサービスを作ろうということでKDDI DIGITAL GATEにお越しいただきました。

各プロジェクトチームが詰める部屋の1つ
各プロジェクトチームが1つの部屋でともにプロダクトを開発する

 そのプロジェクトでは各企業の人事部が顧客になりますので、まずは二日間のワークショップで、企業の人事部が中途採用者に対してどういうサポートをしているのか、何に困っているのかを徹底的に洗い出しました。それで企業の人事部が使いたくなるようなツールをその後2週間で作ったのですが、その2週間、1日単位で新しい機能をリリースしていきました。

 新しい機能ができれば、パーソルキャリア様では企業の人事部を回って使ってみてくださいとお願いする。そうするといろいろな意見がもらえるので、その意見をまとめて、明日はこの機能を作ってと開発チームに依頼する。それができたらまた企業に持って行って……と、デイリーで改善を繰り返していきました。

 そうすると、想像でモノを作るってことが一切なくなって、ファクトベースで無駄な機能がないサービスができあがっていくんです。無駄な機能がないサービスは当然コストが安く、しかも使い勝手がめちゃくちゃいいんですよね。

——本当に必要な機能だけが実装されているので、見た目からしてシンプルになってわかりやすいと。

 1カ月のプロジェクトが終わった後、彼らはそのサービスを自分たちのチームで内製して、5カ月で「HR Spanner(ベータ版)」として商用サービスをスタートし、1カ月で数百社獲得しました。

 他にも、値札シールを1つ1つに付けられない600種類あるレンガを、価格表を見てレジで入力していたホームセンターの事例もあります。そのやり方では、もちろん間違えることもありますし、時間がかかってレジに行列ができてしまいます。そこで、レンガをスマートフォンのカメラで撮ると、どのレンガかを判定する仕組みを開発したんです。写真に撮るときのボタンが画面の下にあって使いにくい、といった意見もすぐに取り入れて翌日には問題を解消しました。

あらかじめ取り込んだ写真データをディープラーニングで分析し、レンガの種類を推測
レンガの写真を機械学習させ、学習済みモデルをスマートフォンアプリに組み込んでレンガの種類を特定

——プロジェクトの途中で軌道修正でき、問題が見つかればすぐに対処できるのは、KDDI DIGITAL GATEの開発スタイルならではですね。

 KDDI DIGITAL GATEと一緒にやっていなかったら、もしかすると顧客企業はたくさんのお金をかけて売れないサービスや商品を作っていたかもしれません。それに早い段階で気付けて変化することができるのは経営的な観点でもすごくいいことですよね。

 こういう進め方って日本の企業ではなかなかできないことだと思います。社内に開発人員がいないことが多いので、何か作ろうと思うとベンダーさんに外注しなきゃいけない。ベンダーに出すとなると、当然社内で稟議承認を取る必要があり、そのためには投資回収できるロジックを説明しなければならないですよね。不確実性が高い新規ビジネスでは、やる前から作るべきものが分かっていて、その投資回収モデルが描けるなんてことはほとんどないですよね。

 KDDI DIGITAL GATEですと、一緒のチームで考えながらデイリーでサービスをリリースしていけるので、少額からスタートできます。開発するエンジニアたちは言われたものをただ作るのではなく、顧客の反応を見ながら、テクノロジー視点でビジネスにインパクトを与えるにはこういう技術を使った方がいいよ、という提案を開発受託者ではなくチームの一員としてしたりもします。

 テクノロジーとビジネスの領域が溶け合った状態でチーム化していて、そこが既存のベンダーさんに仕様書を渡して作ってもらうのとはまったく違うところですね。

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