では、5Gを利用するスマートフォンには、どのような違いが見られるだろうか。ドコモとKDDIは7機種、ソフトバンクは4機種の5Gスマートフォンを投入するとしているが、各社のラインアップには大きな違いがあり、全社に共通して採用されているのはシャープの「AQUOS R5G」たった1機種のみだ。
特に従来のラインアップから大きく傾向を変えてきたのがKDDIとソフトバンクである。なぜなら、これら2社のラインアップの約半数は、中国メーカー製のスマートフォンが占めているからだ。実際、KDDIはZTE製の「a1」とOPPO製の「Find X2 Pro」、シャオミ製の「Mi 10 Lite 5G」を採用。ソフトバンクはZTE製の「Axon 10 Pro 5G」とOPPO製の「Reno3 5G」を採用している。
中国メーカーといえば、ZTEやHUAWEIが米国から制裁を受け、それらメーカーの製品を扱っていた携帯電話会社の端末販売スケジュールやサポートに大きな影響が出た経験があるだけに、扱う上では一定のカントリーリスクがある。にもかかわらず、再び中国メーカー端末の採用を積極化しているのには、やはり2019年10月の電気通信事業法改正が大きく影響している。
この法改正によって、通信料金と端末代を明確に分離する「分離プラン」の導入が義務化。4Gまでのように、通信料を原資としてスマートフォンの価格を大幅に引き下げることにより、新しい通信規格に対応した端末の販売を拡大するという手法を取れなくなった。そうしたことから携帯電話各社も、最初から安価なスマートフォンを調達する必要が出てきたのだ。
しかも、そうした安価な5Gスマートフォンを提供しているのは、スケールメリットを持ち価格競争力のある中国の大手メーカーに限られる。そのため日本に進出しており、なおかつ米国から制裁を受けていない中国メーカーから、端末調達を拡大する動きが活発になってきたといえそうだ。
ただし、KDDIが採用したシャオミなどは2019年末に日本に進出したばかりであるなど、中国メーカーのいくつかは日本での実績がまだ少なく、携帯電話大手が求める製品の品質やサポート体制をどこまで実現できるかは未知数でもある。携帯電話会社が販売するスマートフォンは、あくまで「携帯電話会社の製品」という扱いになるため、もしトラブルが相次げば自身の信用を大きく落としてしまう可能性もある。
そうしたリスクを鑑みて、ドコモはあえて中国メーカー端末を採用せず、低価格を求める人たちには4Gの新機種を提供する判断をしたと考えられる。こうした判断の違いが、各社の5G普及戦略にどのような影響をもたらすのか、今後の動きを見守る必要がありそうだ。
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