神戸市は、2月下旬から3月上旬の約2週間にわたり、アフリカのルワンダを舞台に、日本の若者に起業体験してもらうプログラム「KOBE STARTUP AFRICA in Rwanda(神戸スタートアップアフリカ)」を実施した。
民族対立をきっかけに、80万人もの国民が虐殺された1994年のジェノサイドから26年の月日が経ち、いまでは“アフリカの奇跡”と呼ばれるまでの経済成長を遂げているルワンダ共和国に、日本の大学生などを派遣し、ビジネス視察と起業体験をハイブリッドに提供するプログラムだ。
同プログラムの参加者は、前半の1週間に、虐殺記念センターやJICA(国際協力機構)、現地のスタートアップ企業、地元の人々が利用する市場、コーヒー農園などを視察し、同国への理解を深めた。そして後半の1週間で、自分が解決したい課題を導き出し、それぞれのアプローチでプロダクト開発やアイデア作りに取り組み、最終日にビジネスプランを発表した。
プログラムの参加者は14名。すでにビジネス経験も豊富な社会人5名と、大学生・大学院生の7名、そして高校生2名というメンバー構成だったが、優勝に輝いたのは、沖縄の高校に通う山田果凛さんと東京の大学に通う大下直樹さんのチームだった。ルワンダの伝統工芸品「イミゴンゴ」をイヤリングにリデザインして、日本などで販売することで、貧困層を救うというアイデアだ。
高校生の山田さんは、14歳のときに父親に連れられてインドへ行き、そこで幼くしてストリートチルドレンになった子どもたちと触れ合ったことがきっかけで、「子どもの未来を潰す社会をなくしたい」と決意。インドやタイ、沖縄などで合計2年間以上、ボランティア活動をしてきた。
そうしたバックグラウンドもあり、急成長する一方で貧富の差が大きな問題となっているルワンダの、貧しい子どもたちを救いたいと奮い立ったのだという。
そこで山田さんと大下さんが考えたのが、ルワンダの伝統工芸品であるイミゴンゴを加工したイヤリングなどのアクセサリーを作って、まずは日本で販売すること。この仕事をシングルマザーなどに任せることで、新たな雇用や継続的な収入源を生み出す形で還元し、現地の子ども達が自ら将来を切り開けるエコシステムを作りたいと考えているという。
イミゴンゴは、かつては王室の飾りにも使われていた、子牛の糞を利用した完全ハンドメイドの伝統工芸品。木の板の上に子牛の糞と灰を混ぜて作られた粘土で模様が描かれている。何日もかけて乾燥させているため臭いはせず、「糞」と言われるまで全く気付かない人がほとんどだ。
このイミゴンゴは、カラフルな色の組み合わせやその独創的な模様が魅力だが、基本的には壁にかける大型サイズのものしかなく重いため、旅行者のお土産などには不向き。そこで、このイミゴンゴを小さく加工してアクセサリーにするアイデアを閃き、現地の村の人々にも相談し、このビジネスモデルに辿り着いたという。
そして山田さんたちは、3月26日よりクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」においてプロジェクト「高校生がアフリカ貧困層の子供を救う!伝統工芸をRe:Designして新たな価値へ」を開始。ここで2000円からイミゴンゴアクセサリーを先行販売している。そのほか、プロジェクトのメンター権(3万円)や、購入者向けオリジナルデザインのイミゴンゴ(5万円)などの支援プランも用意している。
目標金額は116万3000円で、ここにはアクセサリー月間500個分の生産体制構築や、現地でのチーム形成・運営費、イミゴンゴ制作の工房や工程整備の立ち上げ費用などが含まれるという。プロジェクト実施期間は5月15日まで。
このクラウドファンディングを成功させた暁には、8月にふたたびルワンダに渡航し、現地製作チームを立ち上げたいとしている。ただし、新型コロナウイルスで各国の入出国が制限されているため、8月の渡航が難しいと判断した場合は、時期を2021年2月以降に変更する予定だという。
(取材協力:神戸市「KOBE STARTUP AFRICA in Rwanda」supported by Tiger Mov)
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