自動運転技術は近年急速な進歩を見せており、高速道路のような環境が整ったフィールドで対応する自動運転レベル3の車両も、まもなく国内で登場する予定だ。一方、日本の一般道のような細かい道路での自動運転は、まだまだ実用化は難しいという。
そして、警視庁の調査によると、国内における自動車人身事故は、約98%が一般道で発生しているのだという。一般道での自動運転実用化までは相当な期間を要することが想定される中、ソニー損保はこの部分での事故発生を減らすべく、新たなサービスの開発に着手した。
ソニー損保などが提供する従来の自動車保険サービスは、事故が発生した後の保険金の支払いや、相手との交渉、ロードサービスなど、事後対応が主体となっていた。一方ソニー損保は、事故に遭遇する確率を減らす、事前対応の領域が顧客に求められているのではと考えたのだという。
そこでソニーが開発したのが、スマホの置き位置や角度などの状態が変わっても、クルマの挙動が得られるAIアルゴリズムだ。これを活用したスマホアプリによって、車両加速度のデータを測定。実際のクルマの挙動とほぼ一致した挙動を得ることができた。さらにこのデータと実際の事故データを紐付け、ビッグデータを用い分析することで、事故リスクを定量化した数値が得られたという。
この技術の開発には、主に自動車メーカーが得意とする車両計測技術やセンサー信号処理技術、主に保険会社が持つ事故実績や保険処理データ、IT企業が得意とするAI技術やクラウド技術が必要となる。ソニーグループでは「CES 2020」で発表したクルマ「VISION-S」、ソニー損保の情報、さまざまなソリューション開発や「プレイステーションネットワーク」で培ったAI・クラウド技術と全てを持っている。これらグループの技術やデータを活用して生まれたのが、このGOOD DRIVEだ。
この保険で本当に事故は減らせるのか。ソニー損保マーケティング部門 ダイレクトマーケティング部 部長の石井英介氏は、この保険の実証実験を実施したところ、約15%の事故率低下が見込める結果が出たと説明する。
実験では、2つのグループを作り、それぞれに計測デバイスを配布。アプリによって運転特性データを2カ月間計測した。片方のグループでは、実験期間を通して計測データを見られない状態とした。もう片方のグループは、1カ月目はデータを見られない状態としたが、2カ月目にアプリからデータが閲覧できる状態とし、加えて、運転スコアに応じてインセンティブが得られると告知した。
その結果、スコアが閲覧でき、インセンティブも得られたグループでは、ただ計測しただけのグループよりも、推定事故リスクが15.3%低下。運転特性の計測がインセンティブに直結するという仕組みが、安全運転の意識を高める結果に繋がった。
近年他社で登場している保険商品としては、ドライブレコーダーを用いたものもある。この商品は映像を取得して事故発生後の対応に活かしたり、さらには先行車両への接近時などに警告を発するというサービスなど、さまざまなサービスを提供している。しかしながらこれらの商品では、専用のドライブレコーダーを用意する必要があるなど、コストがネックとなってしまう。
一方、GOOD DRIVEでは、計測はスマホアプリで完結。専用デバイスを使用する必要はあるが、こちらは計測の信号を発信するのみで、比較的廉価に製造できるという。そのため、契約者・保険会社ともに、コストの上昇を気にすることなく新たな保険を導入することができる。
また、開発に関わった石井氏は、将来個人間カーシェアが広まった際、このスコアで貸し出し相手を事前に評価し、相手を選ぶことができる仕組みも考えられるとしている。
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