育成と共創の現状--イノベーション人材に必要な研究者的思考と技術とは

 2月19日に開催されたCNET Japan Live 2020は「企業成長に欠かせないイノベーションの起こし方」をテーマに、各種公演が行われた。その中で、イノベーターを生み出して育て、企業との共創に取り組もうとするG’s ACADEMYの児玉浩康氏と理化学研究所 数理創造プログラム(iTHEMS)の多田司氏の二人を迎え、「アカデミー視点から議論する『イノベーターの育成と共創』」と題したパネルディスカッションが行われた。モデレーターはエポックシードの森下麻由美氏が務めた。

「アカデミー視点から議論する『イノベーターの育成と共創』」と題したパネルディスカッションが行われた
「アカデミー視点から議論する『イノベーターの育成と共創』」と題したパネルディスカッションが行われた

 森下麻由美氏はパネルディスカッションを始めるにあたり、「イノベーション人材の最前線で一体何が起きているのか知っていただきたい。特に今回は3つのポイントに注意して聞いてほしい。1つは、イノベーションとはどういうものなのか少し解像度を上げること。もう1つは、るつぼ型という言葉が出てきているが、これを皆さんの組織でどう活かしていけるのか。3つ目が、人材の還流について」と述べた。

 登壇する児玉浩康氏は、2015年に起業家・エンジニア養成スクールとしてG’s ACADEMY TOKYOを設立。プログラミングやテクノロジーを教え、起業家を輩出していくちょっと変わったアプローチの学校だ。

G’s ACADEMYの児玉浩康氏
G’s ACADEMYの児玉浩康氏

 現在は東京・福岡の2拠点で活動。卒業生は、エンジニア就職だけでなく、起業家やイントレプレナーになるケースも数多いという。これまでに47社が起業し、27億8千万円の資金調達に成功している。

 まずはプログラミングを学んでオリジナルのサービス・プロダクトを作成。その後、起業する人にはインキュベーターとして、最大500万円の投資とさまざまなメンターを紹介する。シェアオフィス機能も備えているため、G’s ACADEMYの後輩からエンジニアを雇用することも可能。スタートアップの初期段階をスケールさせられるエコシステムとなっている。

 ここ2~3年は、起業家を活用してオープンイノベーションをしたいという大手企業からの要望が増えており、アクセラレーションプログラムを提供。スタートアップと大企業の化学反応の推進に取り組んできた。

 しかし、大企業がスタートアップの勢いや技術を上手く活用できないというケースが多くみられることから、教育研修をトリガーにしたオープンイノベーション支援「Biz COURSE」を創設。大企業に勤める人たちが学び、自らのアイデアで企画し、自身でプロトタイプを作るまでを一気通貫でやるイントレプレナー養成コースを用意。最後は自分たちの企画をスタートアップにぶつけ、ブラッシュアップを図るというスタイルで、G’s ACADEMYでは“逆セラレーションプログラム”と呼んでいる。

逆セラレーションプログラム
逆セラレーションプログラム

 一方、理化学研究所 数理創造プログラム(iTHEMS)・コーディネーターである多田司氏は2002年に同所に所属。素粒子論を専門に研究を続けている。今回はアカデミー側の立場から話していただいた。

 理化学研究所は、日本最大の自然科学研究所として1917年に設立。主任研究員制度があり、独立した形で研究ができる。現在の規模は資本金約2,600億円、年間の予算フローは約980億円で、約3000人の研究者を抱えている。

 多田氏は、数理創造プログラム(iTHEMS)に参画。研究を長くやっていると見えない壁ができるため、その垣根を超えて研究できるよう、いろいろな分野の研究者を集めた組織だ。若手の研究者約30人がコアとなり、アカデミアの中の垣根だけでなく、ビジネスや産業などの垣根も取り払えないかと考え、数理人材が能力を発揮できる環境を目指している。すでに、ベンチャー企業などと共同研究した事例がいくつかある。

理化学研究所 数理創造プログラム(iTHEMS)の多田司氏
理化学研究所 数理創造プログラム(iTHEMS)の多田司氏

 iTHEMSが考える組織は、1つのプラットフォームに多様な人材を集めて、長期的な視野をもって0から1を創造する“るつぼ型”。 そのような人材は、アカデミアと企業の双方にいるはずだと多田氏は考え、双方向に自由に往来する土壌作りを目指している。

 こうした二人の活動を踏まえた上で、ディスカッションの模様を読み解いてほしい。

「企業共創数理プラットフォーム」計画
「企業共創数理プラットフォーム」計画

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