――興味を持ったことを追求し続ける人たちが研究者なのかもしれないが、外部とコラボレーションする際、人という視点は?
多田 研究者は好奇心旺盛で先入観なく新しいことにのめり込むタイプが多い。特に、数理科学の研究者にはその傾向が強いので、企業の興味とうまくマッチすれば爆発的にコラボレーションが進むのではないかと思う。
――大企業の中でイノベーションを起こす人材に対して、普段やっている仕事の中から好きなものを見つけることは難しいと思う。そういう人たちにはどう教えているのか。
児玉氏 好きなことを徹底的に具現化していくしかない。テクノロジーがサポートしてくれることはいろいろあり、データの活用やアプリを作って人が触れる形にすることによって、ふわっとしたものが、カチッとした商品として相手に伝わる。そういったものを作れる人はどんな人かというと、好きなことを追求していて、好きなことが人に伝わるまで諦めない人。そこが一番だと思う。
――研究者の人たちも諦めない人という印象が強いが。
多田氏 アカデミアの研究者は自らの新しいアイデアを論文にすることでのみ評価されるので、ある意味、こだわりを持って諦めずにやって行かないと生き残れない。むしろ、自分のアイデアを決して諦めない人を育てるのがアカデミアの使命ともいえる。
――研究者たちの生態や思考、ビジネスサイド側から入口となるプログラミングやテクノロジーを学びながら、ブリッジしていくことが重要になってくる。児玉さんが育成する人たちはブリッジパーソン的な役割も果たすのか。
児玉氏 ブリッジパーソンになろうと思ってなっているわけではない。そもそもGoogleもFacebookもエンジニアが作った会社で、エンジニアの憧れは研究者であり、研究者的な振る舞いが新しいものづくりに対する方法論として時代にあってきている。研究者は自分が好きなことを研究し、最終的には論文などでアウトプットする。これは新規事業と同じで、最終的には人の手に届かないと始まらない。プログラミングは研究者の中で、便利な道具として使われてきているが、これをビジネスの中に取り入れてやっていくだけだと思う。
――最後に、お二人が今後どのような取り組みをしていきたいと考えているのか。
多田氏 今後5~10年のうちに、先端研究に関してアカデミアと企業という切り分けはなくなっていくと考えている。特に、あらゆる科学技術の基礎である数理科学においてその傾向は著しくなる。iTHEMSでは、このような流れを先取りし、“企業共創数理プラットフォーム”や“数理ベンチャー”の設立を通して、アカデミアと企業の研究者が一緒に新しいことや面白いことを発掘する“るつぼ”を形成したいと考えている。このような取り組みを通じて、イノベーション創出はもちろんのこと、アカデミアと企業の双方向の人材交流が生まれると良い。
児玉氏 いま、一番要望が多いのがBiz COURSE。いままでは企業から要望をいただき、それをカスタマイズして1つ1つやってきたが、今後は集合研修型にして実施する。また、逆セラレーションプログラムというテクノロジーを使って、モックアップを作ったり、スタートアップや研究者といった思考・技術を学ぶ形の研修ブログラムも用意していく。
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