KDDI∞Labo中馬氏が語る5G時代のオープンイノベーション--「∞の翼」で “新産業の共創”を - (page 2)

5Gは日本にとって「最後のチャンス」

——そこに今春から始まる5Gが、どう絡んでくるかですね。

 5Gには、「インターネットがリアルに入る」、あるいは「ネットがさらにリアリティを持つ」、この2つの側面があります。2019年に注力したxRは後者ですが、ビジネスとして成立するまで、あと1〜2年はかかる。いまは前者の「リアルの見える化」に取り組みたいです。

 たとえば、ショッピングモールにどんな人がいるか、混雑状況はどうか、農地の生育状況はどうかといった「リアルの見える化」が進み、インターネットでの行動履歴取得と同じような状態になれば、自動化や、既存ビジネスおよび産業構造のアップデートもしくはディスラプトが起こるでしょう。

——そこに向けて、KDDI ∞ Laboとしては、どのようなアプローチをしていくのでしょう。

 リアルが5Gによりネットワーク化されることで、あらゆる業種の境界線が、インターネットのように非常に曖昧になると思います。1つの産業がスタートアップを取り込んで、何かを改善するというアプローチではなく、産業同士が大きく組み合って、産業の垣根を超えた新しい産業を作るぐらいの、大きな仕掛けが必要になってくると思っています。

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 オープンイノベーションというと、スタートアップと置き換えられがちですが、「異なるもの同士が混じり合って新しいものを産む」ということ。ニュートラルかつ5Gというアセットを持つポジションにいる僕らが媒介となって産業の交わりを作りだし、そこにスタートアップのアイデアやサービス、技術を取り入れながらパートナーシップを組んで、新しい産業を興すということをやってみたいです。

 先日発表した「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」は、渋谷未来デザイン、渋谷区観光協会、KDDIの3者が立ち上げた基盤に、業種をまたいだ32社が参画し、オープンイノベーションを加速しようという試みで、まさに産業の垣根を超えた新しい産業を興す一例ですね。

——日本企業は、IT領域ではGAFAやBATなどの大手テックジャイアントに押されていますが、5G時代の到来でこの状況は変わると思いますか。

 日本企業は、リアルの資産を多く保有しています。このアセットを解放して、新しいイノベーションを取り込むことで、リアルの次世代モデルを日本から提案することができると思います。日本国内だと規制があるので、東南アジアなどでスピーディに進めてみるのもよいでしょう。

 いま与えられている環境は、実は日本人向きだと思っています。たとえば、日本人はイタリア料理は発明できないけれど、イタリア料理を日本的に仕立てるのはすごく上手ですよね。発明は弱いけど、リミックスは得意なのです。

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 5G時代に起こるであろう既存モデルのディスラプトを破壊的に構えて考えるのではなく、ご当地ラーメンを作るような感覚で、ちょっとモディファイする妙みたいなものを、面白おかしく捉えてみてはいかがでしょうか。「ここで変わらなかったら、多分もうだめ」と、よく言っているのですが、5Gは最後のチャンスだと思っています。

——3月24日には「MUGENLABO DAY 2020」も開催予定ですね。

 そうですね。ただ、KDDI ∞ Labo「MUGENLABO DAY 2020」は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、インターネット経由で遠隔から参加できるバーチャルイベントとして開催します。高橋もアバターで登壇し、5G時代のオープンイノベーション戦略を講演したり、スタートアップと大企業の事業共創企画「∞の翼」の事例や成果を発表する予定です。

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