イノベーション力を持つ個人を育成してソーシャル化--三井不動産が取り組むビジネスイノベーション - (page 2)

既存事業の強化と新規事業開発を目指すなかで

 改めて、同社がイノベーションで目指しているものとは、(1)既存事業の強化をもたらすイノベーション、(2)新規事業の開発――の2点だと須永氏は語る。事業提案制度はこれらを実現するために行っている施策だが、2年間の活動を通じて次のような気づきがあったという。

 「(1)を実現するにあたっては、よく組織側に問題があり、縦割りで硬直的なためアイデアを吸い上げられないなどと言われるが、一方で、その起点となっている人やアイデアそのものも、十分にパワーが出し切れていないのではないか?(2)においては、従来の縦割り組織ではイノベーションが生まれにくいというが、自分が良いと考えていることを他人が理解できるように伝えること自体が大変なことではないか?いずれも、普段の仕事をしながら、組織に対して力強い提案を出していくのは、どうしても難しい面がある。」(須永氏)。

 これらの問題を解決するためのアプローチとして導き出したのが、3つめの目的「イノベーション人材の『力』を増すこと」である。「これがイノベーション創出のための岩盤であり、底力であると考えている」と須永氏は語る。

 三井不動産のような大企業で求められるスキルと、イノベーション人材に求められるスキルは異なる面がある。そこで、「まず、提案制度に手を挙げる人に、イノベーション人材としてのスキルを付けてもらうことが大事」(須永氏)となる。さらに提案する個々での取り組みに加え、イノベーション人材をソーシャル化してそこを母体にすることで取り組みが活性化し、(1)や(2)の部分に対して継続的にイノベーションを起こせる力がついてくるという企図である。

イノベーションに必要なスキルを持った個人を増やしソーシャル化していくことで全体を底上げしていく
イノベーションに必要なスキルを持った個人を増やしソーシャル化していくことで全体を底上げしていく

人材像を3階層に分けて考えることで育成を効率化

 ではその人材の発掘と育成をどうするか。須永氏はイノベーション人材像を、「ベース層」、イノベーション人材直前の「準コア層」、事業提案制度への応募やイントレプレナー(社内起業家)化してくる「コア層」という3階層に分けて考えており、それぞれに対する支援策を用意して人材発掘を試みているという。例えばベース層に対しては、事業提案制度にフォーカスせずに、自身の職場でも役に立つような形の支援を心掛けている。具体的には、研修や勉強会という形であり、また事業提案制度においても、自分の専門分野の知識やノウハウを提供する「サポーター」として参加する形も用意している。

イノベーション人材像と育成支援策
イノベーション人材像と育成支援策

 準コア層には、事業提案制度に積極的に参加してもらうための誘導をかける。「トップがコミットしている」「応募したらこんな支援がある」などと細かく情報発信するほか、不足している部分を補うようなスキルセット系の研修を行う。コア層に対しては、事業提案制度に関する信頼感や納得感を醸成していく。提案が通過したら事業に従事し続けることになり、個人のキャリア選択にとっては大きな重みがある判断となるため、制度運用や制度設計をきめ細かく作っていることをアピールする。

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