「場所がない」を解決するPit inが資金調達--時間貸し+複数業態利用でスペースをマルチユース化

 レスポンシブスペースの開発・運営をするPit in(ピットイン)は2月28日、プレシリーズAラウンドにて総額3000万円の資金調達を実施したと発表した。トグルのグループ企業と社員、デジタルベースキャピタルを引受先とする。調達した資金は、新規拠点の開発、予約サービスの開発などに使い事業基盤を強化する。

 Pit inは、2019年4月に設立。現在、渋谷、六本木、新橋の計7拠点で多目的利用ができる「レスポンシブスペース」を構える。レスポンシブスペースとは、複数の業態で利用ができるスペースのこと。Pit in 代表取締役CEOの中村知良氏は「レンタルスペースなど、年単位で貸し出していたオフィスなどを短い時間で切り分けて使う『フラグメント化』はシェアリングスペースなどがすでに実現している。このスペースをあらゆる業態で利用できる『マルチユース化』が今起きつつある。それを実現するのがレスポンシブスペース」と説明する。

Pit in 代表取締役CEOの中村知良氏
Pit in 代表取締役CEOの中村知良氏

 Pit inが持つスペースは、会議室やパーティなど、時間ごとにその用途を変えられることが特徴。時間貸しに業態変更を加えることで、場所の空き時間を減らし、効率的な物件運用を促す。

 「何かあたらしいことを始めたいと思った時に、ボトルネックになるのが場所がないということ。この課題解決にチャレンジしたいと思った。以前ソフトバンクに勤めていたときは、社内の会議室などを利用していたが、いざ社外に出てみると、貸し会議室は手続きが面倒だったり、カフェは混んでいたりと使いやすいスペースを探すのが意外に難しかった」と自身の体験がPit inサービスのきっかけになっているという。

検索から予約まで最短5クリック
検索から予約まで最短5クリック

 Pit inのレスポンシブスペースでは、一つのスペースをパーティションで区切り、用途に合わせて広さを変更することで、業態の変更に対応。テナントが決まりづらい築年数の古いビルをリノベーションし、管理運営する仕組みを整える。

 「内装工事は専門の方にお願いしているが、運営管理やカスタマーサポートは自社内に持ち、予約も自社サイトを用意している。そうすることで、良質な顧客体験を提供できる」と中村氏は強みを話す。

 自らが開発から運営までを担うことで、設備や清掃のクオリティなどを均一化。「気持ちよく使えるスペースを提供することで、リピートしてくれたり、周りの人に口コミで伝えてくれたりする」と話す通り、リピート率は30%を超える。増員により会議室スペースがなくなった会社が、Pit inを利用することで引っ越しをせず、そのままのオフィスを使い続けられるなどの活用例もあるという。

 自社サイトを用意する一方で、スペースシェアのマーケットプレイスなども集客に活用する。すでに累計来場者数は1万人を突破しているが、利用目的は会議、セミナーなどのビジネス用途が約70%、そのほかパーティが約12%、撮影が約7%など。「スタートアップの方が会議やイベントなどに使っていただけるケースが多い」と現在はビジネス用途が多いが、今後やフィットネスやポップアップストア、サロンなどの利用も見据える。

 「物件は、オーナーの方にアポイントをとり、直接にプレゼンに伺うなど、一つひとつ増やしている。レンタルスペースでの利用は不安に思うオーナーの方も多い。そのあたりはオーナーの方の希望をきちんと汲み取り、防犯カメラを設置したり、時間制限を設けたりと一緒に手をとって進めていきたい。一方でユーザーの方には、レンタルスペースは設備が整っていないなどもイメージを持っている人もいて、きちんと良いスペースを提供していることを知ってもらいたい」とオーナーとユーザーの両方の獲得に手を尽くす。

 Pit inの代表取締役には、イタンジの創業者で現在トグル、フジケンの2社で代表取締役CEOを務める伊藤嘉盛氏が名を連ねる。「不動産は法律がすごく絡んでくるので、難しい業界だが、そのあたりは伊藤の知見があることがPit inの強み。内装工事における床や天井の張替えも広さや素材によって価格が大きく変わるので、当初はいくらかかるのか見極めが難しかったが、一つ一つ調べながら経験してきた」とノウハウも積み重ねる。

2月にオープンした「Pit in 渋谷 道玄坂上」。リノベーション前(左)とリノベーション後(右)
2月にオープンした「Pit in 渋谷 道玄坂上」。リノベーション前(左)とリノベーション後(右)

 「働き方改革の流れが進むと、固定オフィスを持っているほうが珍しくなる時代がくると思っている。それだけにレンタルスペースはこれからの業界。将来的には、スペースに置く家具の開発も手掛けたいと思っていて、ソファやベッドをモジュール化することで、一つのスペースをフルに活用していきたい。ホテルの部屋は夜眠る場所として使われているが、昼間に別のスペースとして使えれば24時間稼働できる。そういうスペースを作っていきたい」と今後を描く。

 中村氏は「現在は渋谷、六本木、新橋などに拠点を設けているが、新宿や東京などのエリアにも広げ、さらに、大阪、福岡など地方の主要都市にも広げていきたい」と目標を掲げる。Pit inは、2020年内に全国50拠点の開発・運営を目指す。

Pit inのチームメンバー。右から、代表取締役CEOの中村知良氏、事業責任者の星野好軌氏、プロダクト責任者の湯澤武洋氏、セールス/カスタマー責任者の丹羽良輔氏
Pit inのチームメンバー。右から、代表取締役CEOの中村知良氏、事業責任者の星野好軌氏、プロダクト責任者の湯澤武洋氏、セールス/カスタマー責任者の丹羽良輔氏

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