読者の皆さんは、Instagramの24時間で消える写真・動画投稿機能「ストーリーズ」を使ったことがあるだろうか。日本のデイリーアクティブユーザーの70%が使う人気の機能で、1日700万件以上投稿されている。
若者たちは「ストーリーズは恋愛向き。デートの誘いにもよく使われている」というが、なぜあえてストーリーズが選ばれているのだろうか。
「ストーリーズの場合、コメントをしたらDM(ダイレクトメッセージ)状態になる。だから気楽」とある女子大生は言う。実はストーリーズにコメントをしても他人からは見えず、DMのように一対一のやり取りになる。
たとえば、Twitterでは通常リプライというオープンなやり取りになり、そこからDMを送ることはハードルが上がるが、ストーリーズなら入り口が“コメント”という気軽さのため、他のサービスよりも気軽に送れるという。
自分から誘うこともあるというが、誘われやすい写真などを載せることも多い。たとえば、お酒が写った写真などを載せることで、自然と「飲みに行こう」という誘いにつながりやすくなるそうだ。
「親しくなりたいときには、質問スタンプも使える」という。写真などを投稿する際、スタンプの「質問」を選び、相手が答えてくれそうな質問を入力して投稿する。相手の回答に返信すれば、自然と一対一のやり取りができるのだ。「質問や回答によっては、遊びに行く約束とかにつなげやすくなる」という。
そのほかにも、ストーリーズからは他の子たちの狙いがわかることがあるという。「映画のポスターの写真とか撮って『見に行きたいー!』ってコメントつけて投稿していると、『あ、デートの誘い待ちかな』と思ったり。ラグビーワールドカップのときはラグビー関連の写真が流行った。スポーツ好きなら絶対にコメントがくるから、そこから『パブリックビューイング行こうよ』とかになる」。彼女は、相手が小動物好きだったため、あえて猫カフェの写真をあげたことがあるそうだ。
つまり、リアクションがつきやすい狙った投稿がしやすいうえ、連絡の敷居がとても低く、一対一の会話に持ち込みやすい点が、Instagramのストーリーズに選ばれる理由というわけだ。「周囲でも、他のサービスより成功率が高いみたい」。
「中高生の頃は、告白と言えばLINEだった」と、その女子大生は言う。気軽に告白できるため人気が高く、周囲で流行っていたそうだ。しかし次第に、「告白されたときのキャプチャがまわってきたり、いたずらで告白してみんなでリアクションを見てからかう“ウソ告”が流行った」という。
それ以来、彼女も「LINEで下手なことを書くとクラスの友だちに回されるかもしれない」「思わせぶりだけどウソ告白かも」と考えて、信用できなくなっていたという。
ところが、彼女が大学生になった頃から、周囲でストーリーズでのお誘いが目立つようになった。インスタ映えは「2017ユーキャン新語・流行語大賞」に選ばれ、社会現象となったが、映えを意識した写真のみの場は、インスタ疲れも生んだ。一方、ストーリーズは24時間で消えるため、映えない日常でも投稿できる場として人気が出たのだ。
「LINEの告白は自分から送るしかなかった。しかも、告白ってわかるものを送るだけだったから、ハードルが高かった。でも、インスタのストーリーズは、相手のリアクション待ちができる。気があったら絶対に乗ってくる投稿ができる。それで乗ってこなかったら見込みなしってわかるから、不発でも諦められる」。
以前ある女子大生が、「みんなSNSでつながっているしずっと過去まで遡れるから、周囲に元彼とか気がある相手とか全部筒抜けでやりづらい。もし別れたらサークルにもいづらくなりそう」と、リアルの人間関係ではなく、マッチングアプリでの新しい出会いを求める理由について説明していた。
リアルや電話で告白するしかなかった時代とは違い、SNS時代の恋愛は周囲にも筒抜けになりやすい。しかも、オンラインとオフラインで密接につながり合っている若者たちは、居場所がなくなることを非常に恐れている。
ところが、ストーリーズを使えば、相手が誘いに乗ってくるかどうか、会話の流れがどうなるかで、デートに誘いやすくなり、成功率も上がったという。ストーリーズは若者世代の新しい恋愛のための必須ツールとなっているようだ。恋愛以外でも、久しぶりに会う約束なども取り付けやすいと人気なので、オトナ世代も取り入れてみてもいいかもしれない。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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