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eスポーツを「家庭の食卓」の話題にしたい--NTT西日本が誇るeスポーツ伝道師

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2020年02月27日 08時00分
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 NTT西日本は近年、「eスポーツ」(エレクトロニック・スポーツ)に力を入れ始めている。eスポーツを“ゲーマー以外”の人々にも広げていくため、日々、子どもや高齢者、引きこもりの人などに向けて、eスポーツ大会を開催しているという。

 同社がeスポーツ市場に打って出るきっかけとなった1つが、筋金入りのゲーマー社員である中島賢一氏の存在だ。かつて民間企業でエンジニアとして働いた後、一転して福岡県庁と福岡市役所を渡り歩き、2019年にNTT西日本に転職するという異色の経歴を持つ。一方で、福岡eスポーツ協会の会長を務め、個人でオンラインゲームを開発するほどのゲーム好きという顔も持っている。

NTT西日本 ビジネスデザイン部 中島賢一氏
NTT西日本 ビジネスデザイン部 中島賢一氏

 なぜ、NTT西日本がeスポーツ分野へチャレンジするのか。また、中島氏はeスポーツを通じてどのような世界を目指しているのか。前編では中島氏に、福岡県庁の職員からNTT西日本へと転職した経緯を聞いた。後編では福岡eスポーツ協会の会長として、日本を取り巻くeスポーツ環境をどう考えているのかについて話を聞いた。

eスポーツは「スポーツではない?」

——eスポーツは「本当にスポーツなのか?」と疑問に感じている人も少なくないですが、そこに対してはどう考えていますか。

 「eスポーツはスポーツじゃない」みたいなことについては、本当にもう何百回も言っているんですが、スポーツが「体を動かす競技」みたいに誤った認識で日本に浸透しているのが、まだ抜けていないんですよね。

 スポーツは、本来は「楽しむ」「リフレッシュする」が語源のラテン語から派生したもので、昔の人は疲れているときに、体を使ってリフレッシュすることを考えた。走ったり、ボールを蹴ったりして、それにルールを作ることでスポーツ競技として発展してきたわけです。だから、もともとの「楽しむ」「リフレッシュする」という意味からすると、eスポーツこそがスポーツだと私は確信して疑いません。

 競技性をなぜ持たせるかといえば、競技性があった方が結局は楽しいからですよね。サッカーがどこまでも蹴っていいものだったら面白くない。ルールがあるからこそ楽しい。鬼ごっこでも、ちびっこだけは鬼になりにくいルールにしたら楽しくなるじゃないですか。厳格に競技を行うためにルールを作っているわけではない。楽しくするためにルールを作っているんですよね。

——私はビリヤードをよくやりますが、あれもスポーツですよね。そう言うと「え?」っていう顔をする人も多い。

 ビリヤードはめちゃくちゃスポーツですよ。モータースポーツもそうですし、カーリングもマインドスポーツです。基本的に自分たちの持てる表現力を楽しみながらやるのがスポーツです。自己表現、アートと一緒だと思います。

 ただ、単に1人ぼっちでゲームを遊ぶのはeスポーツとは私は思っていません。人とつながって楽しむのがeスポーツだと思います。画面の向こうに人がいるかいないかで、私はeスポーツかゲームかの区別をしているんですね。なので、ドラゴンクエストはeスポーツではない。でもPokemon GOは人と対戦できる、コミュニケーションが発生するのでeスポーツです。

——対戦要素があれば、その瞬間にeスポーツになるということですね。

 もっというと、私はeスポーツを学校の義務教育に取り入れたいと思っています。福岡では公立高校にeスポーツ部を作るお手伝いをさせてもらっていて、いずれはそれを正式な授業にしようと。一番牙城として切り崩しにくい公立学校の授業にするのが目標です。

——N高がやっている、ドラゴンクエストXオンラインで「ネット遠足」とかいいですよね。

 そう、ああいうのが普及してほしいんですよ。学校の授業に図画工作ってあるじゃないですか。あれって勉強なの?って思います。自己表現ですよね。上手な絵は人を感動させますが、でもゲームだって人を感動させられる。媒体がデジタルなだけで、筆かバイオリンかの違いと同じですよね。

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——自分を表現する方法が、デジタルやテクノロジーによってどんどん広がると。

 それだけではありません。テクノロジーが、AIが発展すればするほど、エンターテイメントは最後に残される仕事の1つになると思っています。自動運転が進化したら、人は完全にクルマを運転しなくなる。複数人で乗っていたら会話して時間をつぶすかもしれませんが、1人で乗ったときはきっとワイン飲んだり映画見たりしますよ。楽しい方に寄っていきますよね。

 ローマ人は午前中だけ仕事をして、昼からワインを飲んで風呂に入り、代わりに奴隷が仕事していました。それからコロッセオに剣闘士を呼んで闘わせていた。エンタメに走ったわけですよね。エンタメって必ず最後に残る。現代の奴隷に相当するのがAIだとすると、AIが仕事の多くを肩代わりして文明が発達し、豊かになればなるほど、エンタメの価値は高くなると思っているんです。

——日本のeスポーツでは、賞金が景品表示法などの関係で高額にできないなどの問題があり、それが原因で市場が盛り上がらないという指摘をする人もいます。

 私が思うのは、どうして賞金をかけないといけないの?ということ。2020年に九州でeスポーツリーグを創設して、本格的に展開する計画があります。九州各地で戦っていくんですが、賞金はつけないんですよ。何をもってそれを価値とするのかというと、「九州一強い人」という称号、名誉です。ちびっ子からお年寄りまで参加できるリーグにします。そのうえで、プロっぽい人たちと、学生と、ファミリーみたいな形でカテゴライズするんです。なぜなら、全年齢層が参加できないとスポーツではないから。

 今は賞金のかかったeスポーツ大会になると、賞金が取れそうな若い世代の人がしのぎを削っていますよね。ついこの間、知り合いの40代の男性が参加して瞬殺されて帰ってきたんですけど、それってプロ野球の試合に草野球チームのおっさんが行ったようなものですよ。そこは分けないとだめですよね。

 スポーツって、それこそ草野球とか、家の前でバトミントンをやっているのも、すべてひっくるめてスポーツじゃないですか。それが今のeスポーツにはないから、私はその部分でアマチュア大会をやっていこうと。それが広がったらやがてスポンサーがついて、賞金の話になってくる。最初から賞金の話をしているからeスポーツが広がらないと思うんです。

——eスポーツ大会に賞金はない方がいい?

 それが悪いという話ではないんです。業界としてそうされるのはいいことですし、きっちり法整備されればいいなと思いますけれども、ゲームメーカーがお金を出すのが景表法の関係でダメなのであれば、たとえばゴルフみたいに、大会運営とは別にスポンサーがついて、スポンサーがお金を出したらいい。

 今は、ゲームメーカーがゲームソフトを売るためのeスポーツ大会みたいな形になるので、それで賞金を出すと景表法に抵触してしまう、という話になっています。でも、スポーツはスポーツ用品メーカーのものではないですよね。誰のものでもない。eスポーツはそういう意味で、まだパブリッシャー側、IPホルダー側に主導権があるような感じですよね。

 もし、いつか「そのゲームタイトルは誰のものでもない」みたいになったときに、初めて本当のeスポーツみたいなものができると思っています。それをやるためには、現段階ではアマチュアの賞金なし大会の方がやりやすいんですよ。

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