ソフトバンクとトヨタのジョイントベンチャーであるMONET Technologiesは1月14日、東京都の竹芝エリアにて、通勤者向けマルチモーダルサービス実証実験を開始した。
勝どき・晴海エリアの朝潮運河船着場と竹芝小型船ターミナルを船で結び、竹芝から浜松町駅までモビリティサービスを運行。船舶とモビリティサービス、鉄道を連携させたサービスや、交通系ICカードを用いた各サービスの利用システムを検証する。船の運航本数は1日4便。料金は無料だが、事前にウェブサイト「東京舟旅」での申込が必要となる。実施期間は1月17日まで。
この実証実験は、東京都が進める「MaaSの社会実装モデル構築に向けた実証実験」の一環として、東急不動産やJR東日本などと共同で実施しているものの1つ。竹芝エリアで働く従業員向けのオンデマンドモビリティサービスや、伊豆大島と竹芝桟橋を結ぶ高速船と連絡する観光者向けモビリティサービスの運行に続くものとなる。
14日の実証実験では、船着場を8時20分に出発する第3便が、報道陣に公開された。
8時10分ごろ、朝潮運河船着場に船が到着。利用者が乗船を開始する。乗船時には交通系ICカードをリーダーにかざし、システムに登録。こちらは、将来のMaaS実用化時における乗車・乗船料一元化などを目指した実証となる。今回の実験では料金の引き去りなどは無いが、後ほど竹芝で乗り継ぐモビリティサービスとの連携を検証している。
8時20分ごろ、ほぼ定刻通りに船は出港。竹芝ふ頭の小型船ターミナルに向け、朝潮運河を南下する。平日の朝ラッシュとあって、道路上は混雑している時間帯だが、水上は混雑とは無縁。時速約10キロとゆったりしたスピードながら、行き会い船の無い運河をスムーズに進む。
10分ほどで、運河を抜けて東京港に入る。この日の天候は晴れだが、乗船した小型船クラスでは少々気になる程度の波が発生していた。しかしながら船酔いを覚えるほどでもない。船は東京港の入口を横切り、8時35分ごろ、竹芝ふ頭と日の出桟橋の間にある、竹芝小型船ターミナルに着岸した。
竹芝では、ワゴン車によるモビリティサービスに乗り換える。乗船時に使用した交通系ICカードを、車内に設置したリーダーに再度タッチ。船の利用者であることを確認し、乗車する。
ワゴン車の走行区間は、約1キロほど。徒歩移動でも問題ない距離だが、モビリティサービスを提供することで、利用者の利便性向上を図る。一方で、実験実施時間帯は先述の通り道路が混雑しているため、竹芝から浜松町駅までの所要時間は10分弱。徒歩移動とは大きく変わらない結果となった。
MONET Technologies 代表取締役社長兼CEOの宮川潤一氏は、今回の実証実験について、「水路と自動車、鉄道を1本の動線で結んだことが特徴」だと解説した。宮川氏は、「現在は駅中心のまちづくりが一般的だが、交通がさらに便利になれば、違った形でのまちづくりになると思う」と説明。現在は交通手段としての利用が少ない水路について、利活用すべきとの考えを示した。
MaaSの実用化に際して重要となる決済方法については、各モビリティ業界の決済一元化を今後整備すべき課題に挙げた。宮川氏は、船やオンデマンドバス、鉄道を乗り継いだ際、これらが通し運賃で利用可能であれば、別個に課金するよりも利用者が増えると説明。また、PayPayやSuicaなど、さまざまな決済手段が生まれているなかで、利用者が便利に使える決済手段を導入できるよう、事業者同士が腹を割って連携すべきとの考えを示した。
さらに宮川氏は、サブスクリプション型のサービスについても、今後チャレンジしたい分野だと説明。「特に地方交通では、定額制も含めて検討していかないといけない」との考えを示した。
宮川氏は、陸路や水路だけでなく、将来「空飛ぶタクシー」が実用化された際には、空路を含めた世界観も実現できると考えている。さまざまなモビリティサービスによってマルチモーダルを実現し、「インバウンドの旅行客に使ってもらったり、都会の渋滞解決手段として活用してほしい」と、将来構想を語った。
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