シャープは、米ラスベガスで開催したCES 2020において、同社が推進する「8K+5G Ecosystem」の取り組みについて説明した。同社傘下のダイナブックが、「8K Video Editing PC System」を投入することを発表。CES 2020の同社ブースに展示した。また、8Kカメラを搭載した5Gスマートフォンの開発を進めていることも明らかにした。
シャープ 取締役副社長の石田佳久氏は、「これまでにシャープは、8Kモニターや8Kテレビ、8Kカムコーダーなどの入出力機器を世界に先駆けて提供してきた経緯がある。今回、8K映像の編集を可能とするPCの投入により、8Kに関わる撮影、編集、伝送、表示までの一連のバリューチェーンを実現することができる。パズルのピースが埋まることになる」と発言。「シャープは、近い将来には、8Kや5Gが、社会インフラにおいて必要不可欠なものとなると考えている。それに向けて、映像事業者向けの8Kコンテンツ制作環境の整備、8Kの裾野の拡大に向けた機器の普及および伝送環境の整備、8K+5G Solutionの立ち上げに取り組み、それらを通じて、8K+5G Ecosystemを強固なものにしたい」などと述べた。
今回初公開した8K Video Editing PC Systemは、15.6型の液晶ディスプレイを搭載したノートPCと、第10世代のインテル Coreプロセッサ、NVIDIAのGfx、31.5型のシャープの8Kモニターで構成。Adobe Premiere Proを使用して8K動画を手軽に編集できる性能を実現している。発売時期や価格は現時点では未定としている。
ダイナブック アメリカのバイスプレジデントであるPhilip Osako氏は、「ダイナブックは、30年以上にわたり、常に革新を続けている。世界初のノートPCの投入からはじまり、最近では、4Kディスプレイを搭載した世界初のPCを発売した」とコメント。「今日は、この場で、8K Video Editing PC Systemを使って、8Kビデオの編集を行う」とし、わずか4分間の説明時間の間に、5分間のビデオの編集作業を行ってみせた。
シャープの石田副社長は「8Kテレビは、いよいよグローバル市場で本格拡大する段階にきているが、撮影や編集については、一部の専門事業者をターゲットとした高価なカメラや編集機器に留まっている。シャープは、より手軽に8K撮影ができる小型8Kビデオカメラの開発を進めるとともに、8K Video Editing PC Systemにより、プロフェッショナルな事業者が、8Kコンテンツを制作したり、8Kコンテンツを提供しやすい環境の整備に向けて製品を提供する。これらは、鴻海グループや社外のさまざまな協力先と連携して実現したものである」と説明した。
また、新たなスマホとして、8Kカメラを搭載した5Gスマートフォンの開発を進めていることを公表した。
「広い画角を鮮明に撮影できる8Kカメラで、新しい撮影スタイルを提案するものであり、8Kがもたらす感動映像を、5Gの高速通信により、すぐに発信して、たくさんの人と共有しあえる新たな体験を提供できる」とした。
さらに、「8K映像を配信するためには約100Mbps程度の実効速度が必要であり、5Gを使えばそれが可能になる。8Kの裾野の拡大には、5Gによる伝送環境の整備が不可欠である。だが、現実的には常に安定した通信環境を維持することは難しい。シャープは、30Mbps程度の低速な通信環境においても8K映像を配信することができる技術として、超解像技術の開発を進めている。これは、8Kカメラで撮影した映像から、復元に必要な情報を抽出して、それを4Kに縮小し、圧縮して送信するとともに、テレビ側で受けた際には、あらかじめ抽出した情報をAIに読み込ませて、8K映像に復元することができる。これによって低速な通信環境でも8K映像の配信が可能となる」などとした。
シャープでは「8K+5GとAIoTで世界を変える」という事業ビジョンを掲げ、事業変革を進めている。ディスプレイやカメラモジュールなどの「革新的なデバイス」、8Kや5G、AI、IoT、Robotといった「コア技術」を活用することで、「Industry」、「Security」、「Smart office」、「Entertainment」、「Health」、「Automotive」、「Education」、「Smart home」の8つの事業分野を中心に、特徴を持った商品やサービスの創出に取り組んでいるという。
「8K+5GとAIoTへの取り組みにより、さまざまなイノベーションを巻き起こす強いブランド企業としてさらなる成長を目指す。この実現に向けて、デバイス、プロダクトから、システム、ソリューションへと事業変革を進める」とした。
ここではいくつかの実証実験などの取り組み事例について紹介した。同社では、2019年9月には、時速283kmで高速走行する新幹線への8K映像コンテンツの伝送に成功。走行中に接続する基地局が切り替わっても、新幹線内に設置した8Kモニターに、映像が途切れずに表示されることを確認したという。
また、8K映像をインフラの検査に応用する「8K Maintenance Solution」では、下水管の中の様子をそのなかを走行するロボットが8Kで映像を撮影。画像処理技術を組み合わせることで微細な傷を検出できるという。下水管のほか、人が立ち入ることが難しい管路などの検査や保守に活用でき、省人化や検査品質の向上に大きく貢献できるという。
さらに、ドローンによって空撮した8K映像を、5Gでリアルタイムに伝送する実証実験に参画。ここでは、馬主が所有するサラブレッドを遠隔で観察したり、見守りに活用するといった用途を見込んでいるという。「この仕組みを活用することで、橋梁や山間部にあるダムなど、人が近づきにくい高い場所、危険な場所でのインフラ施設の点検にも応用できる」(石田副社長)という。
そのほか、教育や文化への応用として、「8K Interactive Museum」も紹介。間近で見ることや、直接手に取って鑑賞することが難しい、貴重な美術品や文化財を、8Kの鮮明な画像で記録。タッチ機能を利用して、ディスプレイ上で拡大や回転しながら閲覧できるという。「2020年から、美術館、博物館、観光施設などに向けて本格展開をしていく」とした。
なお、今回のCES 2020のシャープブースのテーマは「Realize」としており、「8K+5Gエコシステム」と「AIoTワールド」に関わる製品を展示していた。
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