ノースウェスタン大学の心理学教授、Renee Engeln氏は、「いいね!」の非表示は、ユーザーのメンタルヘルス改善への前向きな一歩になり得ると語る。だが、こうした動きはユーザーへの気配りから来るものではないかもしれない。
「企業がすべての人々のメンタルヘルスのためにこうした動きをしていると思いたいところだが、それは彼らの仕事ではない。利益追求が目的のソーシャルメディア企業が、われわれのメンタルヘルス改善を望んでいると考えるべきではない。彼らの仕事はわれわれの世話をすることではない。もしそうであれば、われわれのプライベートなデータを売ったりはしない」(Engeln氏)
ユーザーの、特にインフルエンサーの懸念は、「いいね!」の非表示によってユーザーエンゲージメントが低下するのではないかということだ。Mosseri氏は、「ユーザーの幸福と健康のためになるのであれば、ビジネスを損なうことであってもInstagramは決定する。それが長い目で見ればビジネスのためになるはずだからだ」と語った。
「いいね!」は、複雑なパズルの1ピースにすぎない。FacebookとInstagramが本当にユーザーのメンタルヘルスを気遣っているなら、考慮すべきなのは不健康あるいは非現実的な肉体の画像の投稿などの有害コンテンツの規制だとEngeln氏は語る。未成年者に整形手術を奨励するコンテンツを見せないというInstagramの決定は正しい方向への第一歩ではあるが、「まだ大海の一滴だ」と同氏は言う。
ピッツバーグ大学心理学部のSophia Choukas-Bradley助教は、「いいね!」の非表示により社会的比較は減るだろうが、(他のユーザーからは見えなくなっても)ユーザーは自分の投稿への「いいね!」数は確認できるので、自分の見た目に不健康な強調を加えるのをやめさせることにはならないだろうと語る。
InstagramとFacebookが今後さらに積極的に取り組まなければならない問題は、いじめや嫌がらせだろう。FacebookとInstagramの数百万件の投稿が、2019年の4〜9月にヘイトスピーチ、性的行為などの不快なコンテンツに関する規約に違反したとして削除されたと同社が発表した。Instagramは同年7月、ユーザーが人を傷つけそうなコメントを投稿しようとすると警告するAI機能を公開し、10月には自分の投稿に対する特定ユーザーのコメントを非表示にできる「制限」と名付けたいじめ防止機能を立ち上げた。
こうした対策がメンタルヘルスにプラスの影響を与える可能性があるのは確かだが、ユーザーはInstagramやFacebookのようなプラットフォームが自分たちを守ってくれると考えるべきではないとEngeln氏は言う。むしろ、自分がどのように、そしてなぜソーシャルメディアを利用するのかを考えるべきだ。同氏は、ユーザーに対し、うらやましく感じたり自分を恥じてしまうような投稿をあまり目にしないよう、自分のフィードをもっと注意深く編集するよう勧める。Engeln氏はまた、投稿する内容をもっと注意深く検討し、画像を投稿する目的が人をうらやましがらせるためだけではないかどうか考えるよう促す。
「いいね!」の非表示がFacebookとInstagramの使い方にどのような影響を与えるかはまだ分からない。Santamariaさんは、あまり変わらないだろうと考える。自分の目標は永遠にソーシャルメディアを遮断することではなく、人との繋がりを強めるためにソーシャルメディアを「賢く使う」ことだと言う。
「みんなまだInstagramを使うでしょうし、そのうちまた自分の社会的影響力を測る方法を見つけるでしょう」(Santamariaさん)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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