――家電事業の中核機能を中国に移すという報道もありました。
これは長い時間軸での話です。コアになるテクノロジーやデバイスは日本でやっており、それらの部分は日本に残ります。しかし、大きなマーケットに近いところでやるのが、家電事業の本当の姿です。日本と中国のマーケットを長期的に見比べると、圧倒的に中国マーケットの方が大きく、伸びしろもある。中国にシフトしていく中で、我々のやり方も中国流にシフトしていきます。そこでは、日本流の良さもかけ算しながら、進化させていく必要があります。くらしに近い家電や住宅などの領域は、中国の人の思考と、日本の思考は合うところがあります。
しかし、中国でやるのであれば、中国人が主体となってやるのが本来の姿です。日本の良さを生かしながら、中国流にビジネスするのは、やはり中国人がベストでしょう。単純に日本から中国に事業部を移すのではなく、中国流で展開し、これにより、中国の組織能力が上がり、中国のビジネスが伸び、収益性が上がり、中国だけで投資が回るようになり、自然な形で中国にシフトしていくのが基本形です。これは5年、10年をかけてやっていくもの。これまでにも、長い年月をかけて、中国で白物事業ができるようにしてきましたが、それと同じです。
――CES 2020では、トヨタ自動車(トヨタ)が、東富士工場跡地に、コネクティッドシティを設置することを発表しました。パナソニックはこれにどう関わるのでしょうか。
トヨタの東富士のスマートシティの取り組みは、同社が長年温めてきたものです。パナソニックの住宅事業は、トヨタと一緒にやることになりますが、その取り組みの中で、スマートシティに関しては、日本だけでなく、アジアにも展開していくという大きな夢を持っています。
これは新たに発足した会社だけでは手に余るので、モビリティについてはトヨタが、HOME Xなどの提案についてはパナソニックが支えて、新たな街づくりやくらしづくりをやっていくことになります。トヨタが街づくりでできる範囲は限られていますが、それはパナソニックも一緒。ネットワークを作って、パートナーと一緒にやらなくてはなりません。
BtoBのつながりの中で、他社との連携も広がっていくでしょう。パソナニックが取り組んでいる「現場プロセスイノベーション」も、BtoBのネットワークづくりにつながると思います。しかし、今回の東富士のスマートシティの取り組みにおいては、トヨタに対して、積極的に入れてくれという性質のものではありません。
――車載事業の業績が悪化していますが。
2019年、電池事業に関して、開発工数が大きく、我々の経験が少ない領域で大きな件名を受注しました。それの開発投資が大きく、利益を痛めました。これは、一過性のものであり、今期が底です。中長期的に業績の足を引っ張りつづけることはありません。
車載電池の事業は、伸びしろが大きい。バッテリーの生産設備の稼働率が上がれば収益が上がる。だが、立ち上げのときには設備投資が過多になり、今はその時期にあたります。
テスラの事業に関しては、苦労してはいますが、2021年度には黒字に転換できます。すでに単月ベースでは黒字に転換しはじめており、黒字化は見えてきている。トヨタとの角型電池事業は、まだ投資フェーズですが、稼働が上がれば、売り先は決まっているので儲かる構図になります。今は立ち上げの苦しみのフェーズです。減価償却費の負担がなくなったときに、大きく儲かることになるでしょう。
我々は電池メーカーとして実力があります。電池はどんな電池でもいいわけではありません。安全であること、容量が大きく、コストパフォーマンスが高くなければいけません。急速充電に強いことや、ハイブリッドの場合には瞬間的エネルギーを流し込んだり、取り出したりすることに強い特性を持つことなどが求められます。
自動車メーカーとしっかりとすり合わせた特注電池を作っていけば儲かります。その際に数を維持するために、どこと組むかが大切であり、パナソニックは、テスラとトヨタと組んでいます。工場の稼働を維持すること、電池の価格をある程度の価格で売ることが両立できれば儲かる事業になります。
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