CES 2020

パナソニック、“北米での家電やり直し”から電池事業の今後まで--津賀社長が語る - (page 2)

北米において、もう一度、家電事業をやり直す時期がきた

――パナソニックの「くらしアップデート」の取り組みはどんな段階にありますか。

 くらしアップデートは、2030年に向けたコンセプトです。その実現に向けて今は、くらしアップデートを体現したり、象徴となるサービス、商品、事業を明確にすると同時に、パナソニックの全体の事業構造を変えていくことが大切です。

 そのためには、長期的に儲け続ける事業をしっかりと持ち、それをベースに置く必要があります。「くらし」という広い領域をカバーするための「インフラ」ともいえる事業を、BtoBという観点からカンパニーネットワークで作っていくことが必要です。その上で、我々がビジネスで主体とする「家」に向けた住宅設備や家電の提案を、「コネクテッドホームウェア」という形に変えて、サービスを主体にモノを見ていくことが必要になります。

 これができて、パナソニックは初めてくらしアップデートを実現できる会社になります。将来的には、くらしアップデートの部分だけで儲かるようになるかもしれませんが、インフラの部分で稼ぐ実力をつけていくことが大切です。くらしアップデートは、1社の技術やサービスだけでできるものではありません。今はそれに向けた準備期間で、今後いくつかのレイヤーに分けて進捗をみていくことになります。

――北米において、ミレニアル世代に対するパナソニックの認知度が下がっているという結果が出ています。それをどう捉えていますか。

 それは当然だと思っています。北米におけるパナソニックの事業のなかで、家電の比率は5%以下で、残りの95%はBtoB。テスラのバッテリー事業が成長し、買収したコールドチェーンのハスマンも貢献しています。家電事業の比率が低くなったことで、ミレニアル世代だけでなく、一般コンシューマの認知度も下がっています。そのなかで、若い人たちの認知度を高めていくためにはどうするのかを考えて、このほど「Team Panasonic」という取り組みを開始しました。

 ただ、パナソニックは北米において、もう一度、家電事業をやり直す時期がやってきていると思っています。以前は、テレビやテレビに付随したビデオといったものを中心に家電事業を構成していましたが、テレビを撤退したことで、メジャーとなる製品がなくなり、電子レンジや電話機などの限られたものしかやっていないのが現状です。その状況から、北米においては、もう一度、家電事業を作り直すことになります。

 松岡さんに来てもらい、一緒に「くらしアップデート」をやっていく上で、プレゼンスがなくなりかけている北米市場で、何ができるのかを考えていきたい。つまり、米国で新たな家電製品を再び出していくという話になる可能性があります。ただ、それは、従来型のスタンドアローンの家電ではなく、サービスにひもづけされた新たなタイプの家電でなくては意味がありません。家電というハードウェアを売るビジネスに価値を求められません。それとは違うもので、イノベーションが起こせるかどうかです。

 従来の家電ではない形で何ができるのか。それを考えるのならば、カニバリゼーションが起きない北米はやりやすい市場です。日本では、家電市場でトップシェアを持ち、カニバリゼーションの固まりであるため、イノベーションへの取り組みは徐々にやるしかありません。しかし、北米市場では、新たな領域の家電ビジネスの可能性があります。

 「HOME X」のようなビジネスを松岡さんが咀嚼すると、「どういうビジネスモデルで、どういうサービスで、どんな人を対象にするのか」ということを明確にします。これが“松岡陽子流”である。子育てママを助けるのか、高齢化した社会をどうヘルプできるのかが先にあり、ハードウェアが先にあるわけではない。くらしアップデートというくらしの目線で、今の本当の困り事はなにかということをメインに考えて、サービスを作り、ハードウェアがそれを補助するという、これまでとは主従逆転の発想でやっていくことになります。

――パナソニックは、ハードウェアによるこれまでの成功体験が大きいため、主従逆転の発想は難しいのではないでしょうか。

 儲かっている事業を潰すような取り組みをするのは難しいですが、これはやらくてはなりません。日本では家電が儲かっていて、シェアが高い。成功しているビジネスモデルです。これを潰して、作り直すのは難しい。しかし、中国や米国での成功モデルがあれば、それを日本に逆輸入できます。

 これはひとつのやり方です。やみくもに潰して、新たなことにチャレンジするのは、日本では難しい。日本、米国、中国といったそれぞれの国の市場性と、スタンドアロン型、部材型、システムソリューション型というビジネスごとに、3対3のマトリクスの中で、どこの地域で、どの領域で、何をやるのが一番いいのかということを考えて、それを横に展開していくのが重要です。

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