上場準備は自社プロダクトを使って「余裕で完遂」--freee佐々木氏が語る上場への思い - (page 2)

“実質10倍値上げ”の真相は

――Twitterの一部で値上げを指摘する声が相次いでいます。特に、“実質的な10倍値上げ”といった指摘もありますが、この点について教えてください。

 私たちは日々新しい機能を追加しているのですが、4つあるプランのうちどの機能をどのプランに追加するか日々議論しています。プランを使うユーザーを想定して、「こういうユーザーならこの機能を使ってくれるだろう」と割り振っています。しかし、実際に機能を追加してみると想定通り使われないこともあります。定期的に想定通り使われているかチェックしていて、あまりに想定とギャップがある時は機能を整理し、ペルソナごとに最適化します。今回は、その途中段階でお騒がせしてしまいました。

 料金体系を新しくする時は、先行してパートナーの会計事務所に検討している旨を連絡するのですが、今回会計事務所に配信したメールに誤解を招く文面が多く炎上してしまいました。消込機能も実際にはなくならないのですが、表現が不正確でした。逆に、要望の多かった経費精算を何人でも使えるようにする機能は上位プランからベーシックプランに降りてきます。

 確かに、ベーシックプランからなくなる機能には、ごく一部のユーザーに影響が出るものもあるのですが、それはほとんど使われていない、もしくは大手企業の人しか使わないような機能ばかりです。リニューアル後はこれまでよりも使いやすくなると思います。炎上の発端となったツイートをした会計事務所にも説明し、すでに誤解も解けています。

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――2018年に中小企業向けにもターゲット領域を広げましたが、今後はどのような市場にアプローチしていきますか。

 これまで通り、しっかり中小企業の方たちに使ってもらえるサービスにしていくつもりです。今年の1月には、API連携したサービスを簡単に導入できる「freee アプリストア」を追加して、さまざまな金融サービスをダウンロードできるようにしました。サービスに厚みが出てくるとお客さんからの信頼も増していくので、今の顧客基盤をしっかり広めていきたいと思います。

 逆に大企業には展開する予定はありません。大企業となると会計のルールも違い、開発に求められることも変わってきます。そうなると私達が目指している低価格で使えるサービスからかけ離れてしまうのです。中小企業が誰でも使えるERPを堅実に開発していきたいと思います。

――今後はどのようなサービスを目指していますか。

 現在行っている社内業務の効率化はもちろんですが、freee内のデータを使って経営課題を解決できるようなサービスにしていきたいです。経理であれば、資金繰りをよくするための施策を考えて提案してくれるような「人工知能CFO」のようなサービスを作りたいと思います。

 人工知能CFOの言うことを聞いていれば、素人でもビジネスが成り立つようなものにしたいですね。もちろん上場を目指すような会社は人のCFOが必要ですが、スモールビジネスなら十分に通用するクオリティにしたいです。そうなれば、独立するのが怖いと思っている方も安心してビジネスを始められて、一人ひとりが生き方を自由に選べる社会になるはずです。

――これから日本でクラウド会計の市場は広がっていきますか。

 今の日本のクラウド会計の普及率はわずか14.5%です。対してオーストラリアは6割近くあります。なぜかというと、オーストラリアは日本よりも7年早くクラウド会計サービスがリリースされたからです。日本とオーストラリアの差は時差でしかないと思いますし、日本にとっては伸びしろでしかありませんね。クラウド会計が普及すれば、現在人がやってる経理業務の多くがなくなり、人は楽しいことだけやる社会になっているはずです。

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