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上場準備は自社プロダクトを使って「余裕で完遂」--freee佐々木氏が語る上場への思い

藤井涼 (編集部) 山川晶之 (編集部) 鈴木光平2019年12月30日 10時40分
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 クラウドを使った会計処理ソフトを提供するfreeeが、12月17日に東証マザーズに上場した。初日は、公開価格2000円を超える2700円となり、時価総額は1200億円を超えた(12月27日時点では約1445億円)。

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freee創業者CEOの佐々木大輔氏

 freeeは、2012年に創業し「クラウド会計ソフト freee」「人事労務ソフト freee」といった中小企業や個人事業主のバックオフィス業務を支援するSaaSを提供。2018年3月には導入者数が100万社を突破している。これまでエクセル入力やパッケージソフトが主体だった会計処理において、クラウド化を推し進めた。

 今回、上場を決断した理由に加え、創業から現在までの振り返り、今後のビジョン、そして最近SNSで話題となった“実質値上げ”の真意について、同社創業者でCEOの佐々木大輔氏に聞いた。

上場準備、自社プロダクト活用で順調に

――まず、このタイミングで上場した理由について聞かせてください。

 ここ最近、次の資金調達をプライベートか、上場してパブリックに行うか考えていました。上場を選んだ理由は、freeeを導入してくれるお客様が増えてきたので、ガバナンスを効かせてもっと社会的責任をもって経営したほうが、信頼を得られると思ったからです。

 このタイミングでそのような意思決定ができたのは、これまで様々な施策を実施してきて、どう動いたらどんな結果が得られるのか分かってきたからです。そのため、赤字ではありますがパブリックな施策をとろうと判断しました。

――上場するデメリットについてはどう考えていますか。

 情報を公開しなければいけないので、管理コストなどがあると思っています。しかし、それにより細かくデータを管理できたり、緊張感をもって価値を届けられるので完全にデメリットだとは思っていません。

 特に今回は売出し株の70%を海外投資家向けに発行するグローバルIPOです。データの開示も日本でIPOするよりも細かく、海外のSaaS企業は、各費用をR&D、セールス、マーケティングなどに分解することで、どんな目的にお金を使ったのかを開示しています。

 これがあると海外の投資家は他のSaaS企業と比較でき、どのレベルにあるかを評価します。そういった緊張感に自分たちを置くことは、開示コストもあるものの、毎日体重を測ると痩せるにも似てますが、ガバナンス効果はあると思っています。国内市場でもSaaSの見方がより深まりますし、意味の大きいIPOになると思っています。

――上場準備には、やはり自社プロダクトを使用しましたか?

 もちろん、バックオフィスは全てfreeeを使って上場準備をしたのですが、最初に決めたスケジュールから一切の遅れなく準備を進められました。証券会社もそれを見て、異例だと言っていました。

 今回はグローバルIPOなので、海外向けの目論見書も作らなければなりません。日本の目論見書をそのまま英訳するだけでなく、海外の投資家向けに書類作成しなければいけませんでした。2週間で海外の監査法人にもサインをもらわなければいけなかったのですが、全てクラウド管理してたおかげで時間に余裕を持って完遂できました。

 国内のSaaS企業としてグローバルIPOは初ですし、スタートアップだと先行事例はメルカリぐらいしかありません。バックオフィスで“攻め”られたのはコミュニティに広めたい事例になりましたし、こういう会社らしい取り組みになりました。

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――今回赤字上場となりましたが、黒字化までの具体的なプランはありますか。

 いつまでに黒字にするというタイムラインは意識していません。基本的にはユニットエコノミクス、つまりクライアント一社あたりの収益性が確保できているうちは、成長に投資続ける経営方針です。既存顧客の売上げはどんどん積み上がっていくので、新規顧客の獲得に積極的に投資していければと思っています。

――「上場ゴール」という言葉もありますが、どのようにお考えでしょうか。

 私はプライベート・エクイティ・ファンドに勤めていたことがあり、上場企業に「非公開化しませんか」という提案もしていました。そのため上場のデメリットも深く理解していますし、どちらかというと一般的な経営者とは逆の目線を持っていると思います。

 スタートアップは資金調達をする度に、メディアに結びとして「上場を目指している」と書かれるので、上場が運命づけられるというか世の中の雰囲気としてあると思います。しかし、上場は「ゴール」ではなく、資金調達の一つの手段と考えなければいけません。そのため、なるべく上場を目指すと言わないように昔から意識していたところはあります。

創業から7年、クラウド会計「当たり前の存在」に

――創業当初、クラウド会計への印象とはどのようなものでしたか

 創業するとき、周りの人に「こんなコンセプトのサービスを作ろうと思ってるんだけど」と話しても「今の会計ソフトで十分」と言われていました。それでも、どうしても作りたくてサービスをリリースしたのです。もしマーケティング・リサーチをしっかり行って、合理的に考えていたらサービスをリリースできていなかったでしょう。

――起業してからクラウド会計に関する社会の印象の変化は感じますか。

 まずは、SaaSに対するイメージが変わりました。創業当時は「クラウドで会計を管理するなんて気持ち悪い」という意見はありましたが、それがこの7年間で一切なくなりましたね。当時は「データが消えたらどうするんだ」という心配もあったと思いますが、今やそんなことを心配する人もほとんどいません。

 また、スタートアップじゃなくても、普通の中小企業でもOffice 365やDropboxなどが浸透してきたこともあり、スマートフォンとパソコンで同じものが見えることが当たり前という層がメインストリームになってきました。今やクラウドであることを意識せずに使ってもらえるようになったと思います。ブラインドタッチができない高齢の方などは、パソコンよりもむしろスマートフォンの方が使いやすいという方もいます。創業当初は予想もしていなかったことです。

――事業が成長したターニングポイントはありましたか?

 モバイルアプリをリリースしたことですね。まだ、エンジニアが7人しかいない2013年にリリースしたのですが、その直後はアプリがまったく使われなく、止めるかどうか何度も話し合いしたほどです。ある時期から潮目が変わって、なんでもスマートフォンで操作する時代になりました。あのとき、本当に止めなくてよかったと思いますね(笑)。

 今思えば当時のリソースでよく作れたなと思ってしまうのですが、あのタイミングに勢いでリリースしてよかったです。優先順位などを考えて後回しにしていたら、その後も絶対やっていなかったと思いますので。

――組織が大きくなる際に苦労したことはありますか。

 最初は、全プロダクトからエンジニア一人ひとりに至るまで自分のみでマネジメントしていたのですが、組織が大きくなるにつれて意思決定の質が落ちていくんですよね。メンバーからも「あなたがいるとこんがらがる」と言われるようになったり、「ユーザーのことがわかっていない」と指摘されるようになる時期がありました。そのときに、自分が関わらなくてもマネジメントできる体制にしつつ、freeeらしさが出るカルチャー作りに投資しました。苦い思い出ですが、あのときも大きなターニングポイントだったと思います。

――マネーフォワードとの訴訟もありました。その後の影響などはありましたか?

 そこまで大きな影響はなかったのですが、特許というものを真面目に捉えたところを特許庁に評価してもらいました。訴訟でも新しい手続きが使われたとか、新しい取り組みをしたことがポイントだったと思います。

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