——MAZARIA向けの新作として、オールインワンタイプのVRデバイス「Oculus Quest」を新たに使用したパックマンVRがあります。これはパックマンというテーマもしくは、Oculus Questの活用ありきで進められたのでしょうか。
田宮氏 :これは、Oculus Questを活用することがはじめにあって開発しました。Oculusさんから開発機を提供していただいたのですが、本当に初期の初期だったのでパフォーマンステストができてない状態でもありましたし、グラフィックがどの程度出せるのかがわからない状況だったんです。でも、オープンは7月に迫っているなかで、ぶっつけ本番に近い状態が想定されたので、グラフィックレベルが仮にドット表現になったとしても、成立しやすいと思ったので、パックマンをテーマにしました。
小山氏 :体験としては素晴らしいんです。でもコアの部分はスマートフォンレベルなので、どこまでの映像表現ができるか不安でした。
田宮氏 :そのあと、写実的な表現で作られたデモコンテンツを体験して、これであればいけると思い、3Dベースにしました。
小山氏 :ちなみに、ドットタイプのコンテンツもテストとして試作したのですが、意外といけると思いましたね。
田宮氏 :あるファミコンゲームをVR空間内でドット表現したものを見たのですけど、思った以上にわくわくできました。これはこれで本物だと思える体験ができると思います。
小山氏 :懐かしのファミコンゲームをテーマとしたなら、その世界に入ったと思えるものになる可能性は秘めてます。
——運用面ではいかがでしょう。個人で行った際に調整中としている時間が比較的長かった印象がありました。オールインワンタイプであるがゆえに、不安定となってしまうところもあったのでしょうか。
田宮氏 :振り向くときのスピードが速かったり、首振りが激しいと、センサーの認識が弱いようです。それでいくと、VIVEのトラッキングの安定性や確実性でいえばピカ一です。
小山氏 :ケーブルレスかつ、バックパックPC無しで動き回れるからこその課題なんです。かぶってすぐ体験できて、しかもあれだけ軽く動けるのは、ほかでは得難い体験です。
田宮氏 :オープン当初は少し不安定だったのは事実で、かなり調整時間をとってお待たせしたところもありましたが、オープン時に比べたら、現在はだいぶ安定しています。
——VRゴーグルが普及しだす前から、いち早くロケーションVRに取り組まれて来たかと思いますけれども、ここまでを振り返りつつ、現状をどのように見ていますか。
小山氏 :いろいろと取り組んできましたが、ビジネスとして考えると楽観視できるような状況にはないということは言えます。そもそもエンターテイメントの領域において大事な“共感を得る”という点において、VRは難しいメディアなんです。
VRは自分の感情を楽しむメディアで、それをより強く実感してもらえるようにロケーションVRという形でやってきたのですが、結局のところ、VRは体験した人にしかわからない、実感できないということに尽きるんです。その体験を突き詰めれば詰めるほど、本人体験が強くなってしまう。なので、VR ZONEでは「さあ、取り乱せ。」というキャッチコピーのもと、その取り乱している姿で共感を得ようとしたんです。実際、そのインパクト自体はあって、伝わったところがありました。
共感においては、自己効力感という「自分にもできそう、楽しめそう」という気持ちを持ってもらうことが大事なのですけど、そこにいたるまでには段階があります。誰かがやったのを見て「ああ、そうだよね」と思える共感、そして想像できる体験が大事。そして共感力の高さは、人数にも比例します。ただ、そもそも体験した人が少ない状態で、驚異の体験や極限への体験というのを作り出してきたので、それがさらに想像しにくいのです。
田宮氏 :コンテンツのパフォーマンスを上げようとすればするほど、体験がレアになっていって伝わらないという課題ですね。体験したらすごいけど、それを信じてもらえないというジレンマが発生している状態です。
小山氏 :もうひとつ、市場輪廻を法則というのを、以前「CNET Japan Live 2019」の場でもお話させていただいたのですけど、ある市場に対して必要とされる機能を有した製品が投入されることからはじまり、簡単や便利をうたう機能が製品が投入され、そして感覚のベネフィット、イメージのベネフィットが重視した製品が販売されていくという流れですね。これで考えるとロケーションVRというのは、VR領域における感覚や実在感のベネフィットを追及したもので、簡単や便利という機能を置き去りにした状態と言えるのです。多くの人に「VRはこういうもの」というのが理解されないままで突き進んでしまったと。
もちろん、課題解決のところでVRが活用されだしています。例えば、映画の撮影をVR空間で行うとか、自動車のクレイモデルをVR空間で制作するとかですね。BtoB向けの問題解決に向けたソリューションとなると、市場形成の成立の道は見えてきてはいます。ですがエンターテインメントですと、例えば危険を冒すことなく冒険や戦いの体験ができるというものだとしても、それはすでにビデオゲームで満たすことができるので、VRは課題解決の位置にあるとは言えないです。
田宮氏 :コンテンツのパワーによって、この体験はVRでなくてはできない、ほかには代えがたい体験だと感じてもらえるようなものから裾野を広げていけると思ってやっていたのです。ただ、体験するみなさんが面白いと思ってもらえるような取り組みはいろいろやってきましたけども、なかなか壁があるというのが正直なところです。体験における刺激の質や方向性という意味では、だいぶやりつくした感もあります。
小山氏 :市場におけるVR体験の共感が醸成できていないところが課題です。「そうだよね」「こういうものだよね」というのが自己効力感ですけど、それが著しく無い状態だと思います。やはりVRの言葉を知っていて、その気になっている方には響かないですから。そんななかで「VRで楽しむ」ということを言い続けても伝わらないのであれば、遊びのなかのひとつとしてARやVR、プロジェクションマッピングなどがあるという状態で、自然と入ってくるのがいいのかなと。
田宮氏 :VRありきではなく、より手段としてVRを活用するというとらえ方で、うまくエンタメに取り込んでいくほうがいいかと考えています。
——自分でも楽しめそうというイメージできるものが大事という意味では、マリオカートVRの人気が高いと思うのですけど、それもうなずける気がします。認知度もそうですが、ゲーム中の操作でカートを運転しているような体験がすでにイメージできていると。
小山氏 :その通りですね。そういえばこんなこともありました。海外のVRゲームクリエーターがMAZARIAに遊びにきたのですが、マリオカートVRに興味を示さなかったんです。ほかの方も見ていても、VRやゲームに詳しい人ほど、マリオカートVRや太鼓の達人VRはあまり関心を示さないですね。ゲームとしての楽しさが完成されているコンテンツほど、VRにすることの意味を見出せないという感覚があるようです。
田宮氏 :「もう楽しさがあることは十分わかっているのに、VRでわざわざやる必要はあるの?」という考え方ですね。人気のものほどその傾向はありますし、社内でもそのような見方をされていたところもありました。でも現実としてアクティビティの人気は、マリオカートVRと太鼓の達人VRがワンツーと言っていいです。
小山氏 :マリオカートや太鼓の達人はたくさんの方がプレイされていて、体験がイメージできる状態にあります。なんらかの形で自分がやってできたこと、成功体験があるものにまずは飛びつくと。それを考えるとこれまでのロケーションVRの取り組みは、時代を先取りしすぎて飛ばしてきたように思います。
——今後の展開についてはいかがでしょうか。
小山氏 :もちろん新アクティビティは仕込んではいます。面白い実験をしていて、その成果が見えたら告知しますが、驚愕の“ひょうたんからこま”体験が提供できるかと。
田宮氏 :そう言っても、何も想像できないと思います(笑)。今までやってきた「VRコンテンツを作りました。ブースで遊んでください」という枠からはみ出したような概念のコンテンツを、実験しながら作ってます。
小山氏 :「来た、これやった」ではない、新しい遊び方を提供できるかと思います。
田宮氏 :「おお、そういうことをやるの?」と思ってもらえるようなものが控えてます。反応や受け止められ方も含めて楽しみにしているものでもあるので、ご期待いただければと思います。
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