知人に出くわしたが、その人の名前をどうしても思い出せない、という昔からよくある問題を考えてみよう。Ericssonの調査によると、回答者の54%は、この問題が2030年までに解決されると考えているという。ユーザーの思考による要求を受けて、ARメガネが目の前にいる人の名前や前に出会った場所などの情報を提示してくれるようになると予想されるからだ。どうやら、テクノロジーが私たちの思考にアクセスできるようになるらしい。
私たちが他の人の話に耳を傾けたり、他の人と話したり、理解し合ったりする方法が、デジタルに大きくアップグレードされようとしている。
「自分の耳に入ってくる音を能動的に制御することは、多くの人に好意的に受け止められている。54%は、デジタルな音のバブルを作り出して、例えば、混雑したバスに乗車中に、自分の聴きたい音だけを聴けるようになると考えている。ソーシャルメディアサービスはエコーチェンバーであると批判されることもあるが、誰もが本当のエコーチェンバーを作れるようになったら、コミュニケーションはどうなってしまうのだろうか」(レポート)
おそらく「感覚」の最後の未開拓分野であろう味覚も、2030年にはこのトレンドの一部になっているはずだ。口の中に入れたデバイスによって、食べ物の味をデジタルテクノロジーで変化させ、どんなものでも自分の望み通りの味に変えられる未来を想像してほしい。それが現実になるかもしれない。
もちろん、こうして私たちのさまざまな感覚を制御することで、意図しない結果が引き起こされる可能性もある。素晴らしい食事の喜びというものは、何度も繰り返し行われることではなく、意外性によってもたらされる。同様に、歩行者が自分のプライバシーのバブル内に閉じこもっていたら、市街地を散歩しているときに、偶然素晴らしいものを発見したり、すてきな出会いを体験したりすることがなくなるかもしれない。
回答者の62%が予想しているように、デジタルで素材の感触を感じられるようになれば、オンラインショッピングの体験は向上するのだろうか。回答者の42%が述べるように、あらゆる感覚を刺激するような「デジタルアドベンチャー」が、実際の旅行に取って代わるようになる場合もあるのだろうか。
そうかもしれない。とはいえ、Ericssonの調査結果にあるさまざまなテクノロジーについて、かなりの人が現実的な疑問を抱くのではないかと思う。私たちの生活は、よりデジタルになり、現実の一定の部分に関しては、シミュレーションされることが増えるのかもしれない。
だが、テクノロジー企業が本物の体験を正確に再現するのは、容易なことではない。不思議なことに感動し、意外なことに喜びを感じる性質が人間にある限り、Ericssonのレポートで紹介されているようなテクノロジーは、せいぜい体験を拡張できるだけで、取って代わることはできないだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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