スクウェア・エニックスには、コンシューマゲームから新型エンタテインメントまで、ゲーム全分野を網羅するコア技術の実用開発・研究を行っているテクノロジー推進部がある。
人工知能分野にも力を入れており、「メタAI」「キャラクターAI」「ナビゲーションAI」の3つのAI連携からなる「ゲームAI」を持つ。実は「FINAL FANTASY XV」などのタイトルにすでにAIを取り入れているという。
スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 リードAI リサーチャーの三宅陽一郎氏は、「現在のゲームAIは、この20年ほど3Dになってから急激に発展している分野」と説明する。
今回オムロンとの研究で使用するメタAIについて、「ゲーム全体をコントロールする人工知能で、ゲームの状況を監視する。ユーザーの心理を推測し、キーとなる役割を適切なタイミングでキャラクターに与える。これまでゲームは、一つの体験を何百万人にも届けてきたが、これからはユーザーに合わせてゲームを少しずつ変える。たとえば、プレイヤーと敵が戦っているときに、ユーザーのプレイ状況やこれまでのプレイログから、どのような心理状態にいるかをメタAIが推測する。そしていまはもうちょっと攻めた方がいい、もっとやられてあげる、あるいは攻撃したほうがいいなどのコントロールをメタAIがまるで映画監督のようにキャラクターに指示することでゲームの状況をダイナミックに変化させていく役割」(三宅氏)と説明した。
オムロンは、この共同研究で実現した技術を今後、オムロンの注力ドメイン、FA(ファクトリーオートメーション)、ヘルスケア、ソーシャルソリューションに展開したい考えだ。
「その人がなにをしたいか、ラリーでどう成長したいという思いを持っているか。どんな性格か、多様な入出力を技術に組み込み、個別に最適なモチベーションを高めるAIをつくりたい。人と機械の共存は加速度的に進んでいる。自動運転や介護ロボット、接客、診察、システムなど、人と機械が共存するシステムが爆発的に増えていく。そうしたときに、人の心理状態に合わせた機械のフィードバックは技術として必ず重要になる。ここで培った技術はモノ作り、ヘルスケア、社会システムなどに幅広く展開できるものと考える」(八瀬氏)
一方のスクウェア・エニックスも、今後を見据えた取り組みの一つと明かす。「スクウェア・エニックスはずっと、デジタルゲームの中で人を喜ばす技術を高めてきた。今回のフォルフェウスは、実世界の中で人を喜ばせるチャンスがあると思い参加した。ゲームAIの技術はゲームの中で培ってきた技術だが、実世界にも持って行きたいと思っている。というのも、ゲームはすでにスクリーンの前でやるという定義を越えようとしている。スマートシティを代表するように、現実世界そのものがデジタル世界にオーバーラップしようとしている。そうしたときに、ゲームAIもゲーム空間に閉じこもっていてはいけない。実世界に広げ、次の方向があると考えてずっと研究を続けていたところ、大きなチャンスをいただけた。厳しい現実空間の中で、クオリティを高めていきたい」(三宅氏)
第5世代のフォルフェウスは、一般産業用のSXVGAカメラを使用して、ボールの三次元位置計測やラケットの位置・向きの計測。ほか、モーションセンサでプレーヤーの骨格測定も行っている。ラケットには、緑の丸がついており、その印をカメラで読み取りラケットの動きを見るしくみ。
第6世代では、新たに人間のバイタルなども取得し、人の内面を理解するセンシング技術を取り入れていく方針だ。一方で、従来のゲームで培ってきたメタAIは、現実空間でどこまで有効と見ているのだろうか。
「まず一般的に人の心理を推定するのはとても難しいこと。でもゲームというのは一つの場を限定することで、ユーザーの心理をある場所に閉じ込められる。一定のユーザーの心理を推定できるところに持ち込むのがゲームの一つのテクニック。それが現実空間でもそのまま応用できるかというと一般に対してはとても難しいが、今回のように卓球という一つの場を限定することで、ある程度推定できるだろう予測し、研究を始めている。デジタル空間と現実空間の違いは、たくさんのノイズがあるということ。デジタルではとれないような実際の人間のデータをとれるのが新しい局面。デジタルではとれない人間のデータから人間の内面を推測するというチャレンジが今回初めてできる」(三宅氏)
この最新機能の詳細と、第6世代のフォルフェウスは、1月7日から10日まで、「ラスベガスコンベンションセンター サウスホール2 #26002ブース」で披露される予定だ。
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