ライナフ「スマート物確」が業務効率化を推進--不動産業界の働き方改革は「物件確認」から

 ライナフが、不動産業界の業務効率化を推進している。日本マーケティングリサーチ機構が実施した調査で「スマート物確」が「不動産会社が利用したい業務効率化サービス」の1位を獲得。物件確認業務のIT化を浸透させている。2017年のサービス開始から約2年。スマート物確はどんな業務を軽減し、時間短縮に結びつけたのか、ライナフ 執行役員の杉村空氏に聞いた。


ライナフ 執行役員の杉村空氏
ライナフ 執行役員の杉村空氏

 スマート物確は、賃貸物件の空室情報をAIが自動応答する物件確認サービス。従来、人が電話で確認していた物件情報をAI、音声認識の技術を使って自動化した。「ここ2年くらいで、急速に市場の認知が広まった」(杉村氏)という同サービスは、現在、Good不動産、日本財託管理サービス、三菱地所ハウスネット、ユーミーClass、三菱地所リアルエステートなどが導入済み。利用継続度は94.7%と高い。

導入企業
導入企業

管理戸数で見る導入企業の規模
管理戸数で見る導入企業の規模

 紙、電話、ファクスとアナログのツールが主流とされ、もっともIT化が遅れている業界の1つとも言われる不動産業界において、スマート物確が浸透したのは、働く人の意識変化が大きい。「数年前は、物件の自動確認といっても『それは何?』と言われる感じだったが、2年ほど前から風向きが変わってきた。三菱地所など大手で先行的に新しいサービスを取り入れている会社から導入がはじまり、今では導入前の会社でもサービスの存在自体は知っている、使ってみたいと言っていただける。大手企業から始まり、業界団体や業界紙などが不動産テックを取り上げる環境になり、周りの認知も進んだ」と杉村氏は現状を話す。

 物件確認は、多いところでは月に数百件にも上り、不動産会社の業務を圧迫していた仕事の1つ。さらに、帰宅後や休日にも電話対応しなければならず、「電話が手放せない状態」を作っていた。スマート物確では、24時間365日、AIと音声案内で物確電話に自動対応。導入により、1社あたりの平均年間業務削減時間は1450時間、実に60日分に相当する。「実際に完全週休2日制にしたという会社もあるほど。不動産会社は土日に休めないというイメージから、採用時に敬遠されるケースもあったと聞くが、そういった懸念も払拭でき、働き方改革にもつながる」と杉村氏は波及効果を話す。

1社あたりの平均年間業務削減時間
1社あたりの平均年間業務削減時間

 導入するには、各不動産会社が持つ物件の管理データをスマート物確側に読み込み、システムを連動する仕組み。管理データはエクセルや基幹システムなど、多様な方法で保存されているが、スマート物確は幅広くデータ連携が可能だ。不動産会社側には専用の電話番号が付与され、そこに電話をかけるだけで物件確認が完了。PCやスマホ、アプリなどを介さず、電話だけで完結できるシンプルなシステムが売りだ。

 さらには、アットホームの不動産情報サービスとの連携強化も図っている。2月に「ATBB」、10月には「賃貸管理システム」とのデータ連携を開始した。5万6000店以上のアットホーム加盟店は、システムに物件情報を登録しATBB連携をすることで、再度情報を入力する手間なくスマート物確を利用できる体制を整えた。

 音声認識による物件特定率は95%以上を誇り、ストレスの少ない使用を実現。「サポート専門の部隊を社内に設け、導入からサービス開始までを支援。1社につき、専属の担当者が1人つく体制を確保している。さらに24時間サポートするコールセンターも設けているため、緊急でも困りごとも受け付けられる。ライナフでは、スマートロック『NinjaLock』も扱っているため、サポートは万全」(杉村氏)と手厚い体制を敷く。

 今後の課題は地方への導入だ。現在、東京をはじめ、札幌、福岡など都市圏を中心に導入が進み、前年比での県勢マップは133%増を達成。「しかし、まだ不動産テックが広がる余地はある。物件確認作業を自動化すれば、不動産会社のスタッフは、入居者やオーナーへのサポートなど、本来の業務に集中できる」と杉村氏は意気込む。ただし「各地で商慣習が違い、ITの捉え方も違う。そうした各地の特性を理解した上で、その土地に合わせたIT化を推進していきたい」と慎重に進める姿勢を示す。

スマート物確・県勢マップ
スマート物確・県勢マップ

 業務時間の削減に大きく貢献するスマート物確だが、必要性の高さから競合も増えてきた。「似ているサービスは多いが、スマート物確の強みは品質の高さ。物件特定が音声ででき、その認識率も高い。加えて、内覧管理サービス『スマート内覧』やNinjaLockなど、さらに業務効率化につながるサービスも自社で用意できる。特に『NinjaLockM』は鍵メーカーの美和ロックと共同で開発した据え付けタイプのスマートロック。剥がれる、落ちるといったスマートロックの不満を解消する製品に仕上がっている」と杉村氏は強みを分析する。

 目指すのは物件確認サービスの自動化率5割の世界だ。「現在、スマート物確を含め、すべての物件確認サービスをあわせても東京都内の普及率は3割程度。この割合を5割に引き上げたい。できれば今後1年くらいで達成したい」とした。

リリーススケジュール主要アップデート
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