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経営体制を刷新し、ビズリーチは「ビジョナル」へ--新体制に向けた南社長の“感謝と決意”

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2019年12月23日 09時00分
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 ハイクラス転職サイト「ビズリーチ」などを運営するビズリーチは12月23日、新たに設立する「ビジョナル株式会社」をホールディングカンパニーとした、グループ経営体制へ移行することを発表した。

 これにより、「ビズリーチ」と同社内の新規事業開発部門を分社化した「ビジョナル・インキュベーション」、そしてヤフーの親会社であるZホールディングスと11月に設立した求人検索エンジンの合弁会社「スタンバイ」が、ホールディングカンパニーの傘下に入る形になる。新たな経営体制は2020年2月3日にスタートする予定だ。

 約4年前にカンパニー制を導入して以来となる大幅な経営体制の変更。創業から約10年にわたりビズリーチを支えてきた代表取締役社長である南壮一郎氏は、これを機にビズリーチを離れ、ビジョナルの代表取締役社長に就任するという。

ビズリーチ創業者でビジョナル代表取締役社長に就任する南壮一郎氏
ビズリーチ創業者でビジョナル代表取締役社長に就任する南壮一郎氏

 なぜ、経営体制を大きく変える決断をしたのか、南氏自身は今後どのように経営や事業に携わるのか。自ら立ち上げたビズリーチを後任に譲ることへの思いや、新たにスタートするビジョナルの未来に向けた決意を同氏に聞いた。

新体制で「生産性向上プラットフォーム」へ

——ビズリーチの創業10周年となる2019年の年末に、新経営体制に移行することを発表しました。これまでの10年を振り返るとともに、体制変更の理由を教えていただけますか。

 2009年4月にビズリーチを立ち上げて、ちょうど創業10周年を迎えました。振り返るといろいろなことがあった10年間。長かったようで短く、当時からは想像もできないような姿になったというのが率直な気持ちです。支えていただき、共に歩んできた社内のスタッフや多くの方々には感謝しかありません。

 創業時のビズリーチは、日本の新しい時代の働き方を考えながら、ダイレクトリクルーティングという生産性向上を目指す新しいプラットフォームを作るところからスタートしました。人生100年時代とか、働き方改革とか、事業承継とか、いろいろな課題が生まれてきた中、そういった課題も解決するためのプラットフォームにしてきた、というのがこの10年間の総括かなと思います。

 組織の規模は1300人強になり、今や11の事業を展開していますが、個人的に印象深かったのは、4年前にカンパニー制に移行して新しい若いマネジメントチームに、それまで作ってきた事業の経営を移譲したことです。彼らの力で組織も事業も大きく成長しましたし、インキュベーションカンパニーも、新しい事業を作り出すドライバーになっていきました。

 我々の事業の可能性を模索するために、これまでも経営体制を大きく変えてきたわけです。ただ、こんなものでは満足していない。社会にインパクトを与えるような事業を作り続けることがこの会社の約束です。もっともっとやっていくぞ、という気持ちを行動や決断で表すのであれば、それは新しい経営体制に刷新することではないかと。そう思って今回、経営体制を変える大きな決断をしました。

——経営体制の変更によって、具体的にどのようなことが変わるのでしょうか。

 まず言いたいのは、僕が辞めるわけではないということです(笑)。10年という1つの区切りとして、単純にホールディングス体制、グループ経営体制に変えていこうと。それと同時に、自分自身はビズリーチの代表取締役社長からホールディングカンパニーの代表取締役社長に移り、ビズリーチや人材活用サービス「HRMOS(ハーモス)」を展開するHR Techカンパニー長の多田洋祐が、ビズリーチの2代目代表取締役社長に就任します。

新体制のイメージ
新体制のイメージ

 これまでインキュベーションカンパニーでやっていた事業を新設する事業会社(ビジョナル・インキュベーション)にすべて移して、より柔軟に挑戦できるような体制に変えていきます。これは、今までHR Techの領域を中心にやってきたビズリーチを、ビジネスの生産性向上プラットフォームの企業に変えていきたいという大きな意志の表れです。

 事業会社それぞれに権限委譲していき、迅速かつ適切に決断していけるように、それぞれの事業に合った制度・ルールを柔軟に作っていきたい。成長フェーズのさまざまな小さな事業は、大きく成長したビズリーチの事業と同じ制度・ルール、組織体制でやってもうまくいかないんですよね。それぞれの事業会社にはそれぞれの事業にふさわしいリスクを取ってもらいたいこともあります。そのようにしっかりしたグループ経営をすることによって、リスクもガバナンスもきっちり抑えることができます。

——グループ経営体制にすることで、ビズリーチのさまざまな事業が柔軟に動けるようにすると。

 HR Techの領域から、一気にビジネスの生産性向上プラットフォームに進めていきたいんです。働き方を変え、産業の生産性を向上させることで、より豊かな未来を描いていく、ということをもっとやりたいんですよね。そのためにも、自分たちとしてはもっといろいろな事業を作って、世の中の生産性を上げられるプラットフォームを作っていきたいんです。

——ビズリーチの新代表に多田さんを選ばれた理由を教えてください。

 4年前の経営体制の変更のときに、HR Tech事業を支える経営トップとして、多田に実質的にバトンタッチしているわけです。そこから4年間見守っていくなかで、多田を中心としたチームがこの会社の根幹を担うHR Tech事業の領域において新しい可能性を見い出すチームとして申し分ないことを把握できました。

 この4年間で売り上げを約5倍、組織を2.5倍規模に成長させるなど、十分実績も残してきています。ですので、僕ができるその感謝の印、感謝を示す行動としては、彼らを信頼して会社を預けることだと思いました。独り立ちする、そういう時期なんじゃないかなと。

新しい姿に変わり「ゼロからまた学び直す」

——南さんはビズリーチの事業からは完全に離れるわけですよね。

 今回も4年前と同様、悩みました。これまでのカンパニー体制からさらにもう一歩権限移譲を進めるわけですし、自分自身が最初の創業チームで作ってきた事業からこれで正真正銘離れることになるので。でも、もう1つの大きな判断として、自分自身もう一度スタートしたいという思いもありました。

 もう一度自分自身がまっさらになって、何もないスタート地点に立ってもう1回学ぶ。それによって新しい自分に変わりたい。だから、グループの名称も「ビジョナル」に変えることにしました。

——ホールディングカンパニーの名前はビズリーチではなく、ビジョナルになるんですね。

 いろいろ思うところはあります。ビズリーチは大変大きなブランド資産ですし。しかし、グループ名を変えることによって単なる組織体制の変更ということではなく、これは全く新しい創業期であって、僕も新しい姿に変わってゼロからまた学び直すんだ、という姿勢を表現できるんじゃないかなと思うんです。

 会社を作るっていうのは、もちろん事業をつくることであり、生きざまでもあると思うんです。これまでの10年がビズリーチであるならば、これからの10年はビジョナルであると。みんなでゼロからこの会社の歴史を作りたいというのが今回の一番の判断ですね。

——ビジョナルという名前に込めた思いは?

 これはイメージ的なものですが、自分たちがやってきたことって「課題」が全てのスタートなんです。その課題という壁にバンバンぶつかっていって、ブレイクスルーするのが我々の役割です。ブレイクすることが重要ではなくて、ブレイクスルーすることでその先にすごく広い、大きな新しい可能性が広がっていくわけです。

 こういうブレイクスルーを自分たちの事業や仕事にしていきたいな、とずっと思っています。課題をブレイクスルーする方法はいろいろあるはずなんですよ。技術だったり、ビジネスモデルだったり、仕組みだったり。課題解決をそうやって我々が実現することによって、ひょっとしたらその産業で働く方々にとって大きく明るい豊かな未来が作り出されるかもしれない。

「ビジョナル」のロゴ
「ビジョナル」のロゴ

 そういった新しい可能性を作ることを我々のビジョンにしたいということで、さまざまな働き方、産業の未来、可能性そのものをビジョンとして定め、「ビジョナル」という名前にしました。ビジョンを作っていくという旗の下にみんなが集まってきてもらいたいと思ってそういう名前にたどり着いたんです。

——ビジョナルというグループのなかで、南さんご自身は何をされる予定ですか。

 僕は一番先頭に立って、新しい課題解決、新しい可能性、つまりさまざまな働き方や産業のビジョンを最前線で作り出す役割を担っていきたいと思っています。10年前は実質1人で会社を始めましたが、今は背中を預けられる素晴らしい経営者仲間が集まってきてくれているので、「社会にインパクトがある事業を作り続ける」という約束を守るために、僕は引き続き最前線で課題解決を続けます。

——そうすると、今までとは日々の過ごし方も変わってきそうですね。

 そうですね。これからは働き方や産業の生産性を向上できるチャンスを探して、そこに対して新しいビジネスモデル、新しい仕組み、新しいムーブメントをぶつけにいくことに集中します。自分自身は新しい価値を創り出すところに特化することで一番貢献できるんじゃないかと思っていますし、まだまだ自分ができることはこんなもんじゃないと思っています。もっと世の中を変えられる、よりよくできる、ということをみんなと一緒に味わっていきたいですね。

——創業からの10年で、南さんにとって一番印象的だった出来事を教えてください。

 フェーズごとにありますよね。10年前だと、最初の1〜2年っていうのはもうサバイバルですよね。スタートアップ企業というものもほとんどなければ、資金調達も1億円獲得できればみんな感激していた。僕らも最初のシードステージで2億円を調達できてミラクルだと言われていたくらいでした(笑)。

 ほのぼのしてる時代と言うか、まだ色あせない感じがありますよね。最初の1年間はSansanとかユーザベースとかラクスルとか、そういう仲間たちと「どこで椅子買った?」とか話していました。そういう時代があってよかったなと思いますし、スタートアップや資金調達が活性化している今の時代は本当に素晴らしいなとも思っています。

キャプション

 もう1つ大きかったのは、ビズリーチと同時並行でECサイトのルクサという会社にも挑戦したこと。新規事業で立ち上がって早々に分社化し、4年8カ月(2015年)で従業員数約200人に拡大してKDDIのグループ会社になりました。売上250億円、利益10億円の会社に育ったのは、在庫の流動化という1つの課題解決ができたという意味では結果を残せました。振り返ると、この会社にとっては大きな出来事だったんじゃないかなと思いますね。

 あとは、やはり4年前の経営体制の変更ですよね。この3つが自分の中ではクリティカルなターニングポイントだったなと思います。

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