電通と子会社のカローゼットは12月10日、ユーザー間で愛車の一時交換を可能とするアプリサービス「CAROSET(カローゼット)」の提供を開始した。
他のカーシェアリングサービスとは異なり、利用者間で金銭のやり取りが発生しない「共利用型シェアリング」というコンセプトに基づいたサービスだ。カローゼットはこの新しいシェアリングエコノミーの概念を「Open Personal Asset(OPA、オーパ)」として提唱し、新サービス開始に合わせて、コンセプトに賛同した複数の企業・団体と協業して、概念検証やサービス開発の実証を開始している。
CAROSETは、自動車を所有する人限定のカーシェアリングサービスで、会員になって自分が所有する車をアプリに登録すると、月額780円の基本料金のみで他のCAROSET会員の車と自分の車を、無償で一時的に交換して利用できるようになる。その際、車を借りることには制度上制限がかかっており、日数を単位として他人のリクエストに応じて貸した回数分だけ自分も借りることができる、あくまで「ギブアンドテイク」の仕組みとなっている。
これを補完する仕組みとして、一時交換の「前借り」制度を用意。実績のない会員や借りたい日数分の権利が足りない場合は、交換の権利を前借りすることができる。前借りした場合は、30日以内に借りた日数と同じ分、他の会員からの一時交換に応じた実績を作らなければならない。これが達成できなかった場合は、サービスを運営するカローゼットに1日分につき4980円支払うと清算される。
オーナー同士のやり取りのほかに、ディーラーを対象とした「プロオーナー制度」も用意している。この場合、自分の車を他人に貸すことなく、プロが整備している試乗車を借りることができる。
サービス利用時は、スマホアプリで借りたい車のタイプやエリアで検索し、個々の詳細ページで条件を確認してリクエストを申請する。受け渡し場所は自宅を設定する場合もあるため、確認画面ではおおよその位置が表示される。リクエストが承認されると正確な場所が表示され、借り手が自分の車で待ち合わせ場所まで出向き、免許証で本人確認をした後に愛車を交換する。
入会の条件として、車両保険付帯の任意の自動車保険への加入が必須となっているため、事故の際は自分の自動車保険に付帯されている他車運転特約を利用して補償することで、相手に迷惑が掛からない仕組みとなっている。
同日行われた新サービス発表会に登場したカローゼット代表取締役社長の内藤丈裕氏は、「一般的なカーシェアリングサービスは、所有から利用への流れとして捉えられているが、CAROSETは車を所有している人たちに寄り添い、車を所有することの価値を高めていくもの」と従来の個人間カーシェアリングサービスとの違いを強調。
そして「最大の特徴は、車の貸し借りをする際に金銭のやり取りが発生しないこと」(同氏)であり、これは「金銭授受を伴わない平等かつ助け合いの精神を持った個人資産の共利用(OPA)」という概念に基づくものとなる。
カローゼットは新サービスを皮切りに、「向こう三軒両隣、隣人同士の相互扶助というかつての日本文化をITの力を使って現代風に蘇らせる」(内藤氏)としてOPAの社会への浸透を目指すとともに、自分の資産を貸した時間分だけ他人の資産を借りる権利を付与するという発想と、それを実現するシステム構成に関して国際特許を出願、電通と共にさまざまな企業や団体と協力しながら社会課題解決に向けたグローバルでの事業展開を見据えている。
電通 執行役員の大久保裕一氏は、「マーケティング、クリエイティブ、プロデュースの力を生かし、人や企業をつないで新しい価値を創造していくことが電通の新しいビジネスの可能性と考えている。カローゼットは電通グループ初のC2Cプラットフォームサービスを提供していく子会社として大変注目している」と新しい事業への期待感を示した。
OPAの概念に共感した大和ハウス工業、東京海上日動火災保険、Fujisawa SST協議会、三菱地所グループと個別に検証やサービス開発で連携し、各地で実証を開始している。大和ハウスは、複合施設を伴う大型分譲マンションの「プレミスト船橋塚田」で、住民のコミュニティ形成に向けてCAROSETおよび新サービスの創造に向けて検証を行う。東京海上日動は、今回のカローゼットの新事業立ち上げを支援してきたパートナーであり、今後も新たなビジネスの共創を目指すとしている。
Fujisawa SST協議会は、産学官連携で構築している藤沢市のパナソニック工場跡地を活用した建設中のスマートタウンにおいて、カローゼットとの協業で新たな事業機会の創出と住民コミュニティの発展を図る。三菱地所は、仙台市郊外に開発している「泉パークタウン」でCAROSETのエリア利用プログラムを導入し、2020年1月に登録サポート会を実施するほか、OPAのビジネスモデルも検討するとしている。
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