Drone Fund千葉功太郎氏が総括する2019年の「ドローン産業」--実証実験から実装へシフト

 12月2日、Drone Fundによるメディア向けセミナー「ドローン・エアモビリティ産業 2019年の動向+2020年に向けた展望」が開催された。

 Drone Fund創業者/代表パートナーの千葉功太郎氏が、2018年の官民協議会の立ち上がりから、ロードマップ策定を経て2019年にはどういった出来事があったかを振り返ったほか、Drone Fundパートナー/最高公共政策責任者の高橋伸太郎氏が、政策や法規制の動向と2020年の展望を説明した。

Drone Fund創業者/代表パートナーの千葉功太郎氏
Drone Fund創業者/代表パートナーの千葉功太郎氏

ドローン特化型ファンド「Drone Fund」2019年の活動

 Drone Fundは、ドローン特化型ベンチャーキャピタルとして、日本を中心に世界中のドローンスタートアップを支援している。投資先は幅広く、ハード・機体、ソフト・アプリケーション、コア・テクノロジー、サービスと、産業クラスター全方位。Drone Fundの1年の活動は即ち、日本における産業の潮流ともいえよう。

 5月には2号ファンドが52億円を調達した。みずほ銀行、KDDI、大和証券など大手企業からの出資も多く、7月に開催したシンポジウム「ドローン前提社会とエアモビリティ社会に向けた未来像」では、大手企業トップ対談を実現し話題を呼んだ。

 2019年は、グローバル展開とエアモビリティへの投資を重視し、陸海空のフィールドロボット分野への投資を実施したという。Drone Fundではドローンを、「自律的に動ける陸海空のロボティクスで遠隔制御できるもの」と定義している。

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 投資先はいずれも、ドローン・エアモビリティの産業が立ち上がるために必要となる、陸海空の産業クラスターだが、国内外32社の投資先のうち、5社は海外企業となった。選定基準は、産業立ち上げに不可欠だが日本にはない技術レベルを有するかという点。ドローン点検のジャパン・インフラ・ウェイマークが、Drone Fundが出資する風力発電の点検で世界最大手のエアロダインと業務提携した例など、日本国内への利益還元も重視しているという。

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 そういった意味では、農業大国ブラジルのアルパック、2トンのペイロードを持つVTOL機を開発するセイバーウィング(米国)、200kgのペイロードを持つマルチコプターを開発するグリフ・アビエーション(ノルウェー)、測量アプリを手がけるSaaSモデルのドローン・デプロイといった海外への投資先も要注目だ。

 Drone Fundは通称「千葉道場」と呼ばれる、出資先のCxOが集い情報交換や交流を図る場となる合宿を行っており、2019年は中国・深圳で開催された。世界中でドローン・エアモビリティの実装および競争が加速する2020年、国内外のDrone Fundファミリーがどのようなシナジーを生むのか期待が膨らむ。

2019年の日本国内の動向は?

 日本国内の2019年の動向を整理しよう。政策面での最大のトピックは、2019年6月の成長戦略閣議決定だ。高橋氏はポイントは2つだと説明する。2022年度にレベル4(有人地帯での目視外飛行)を実現する、2023年度にエアモビリティ(空飛ぶクルマ)を事業化するという、2つの明確な目標が打ち出された。

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 また、法規制の改正も続いた。5月には防衛関連施設が飛行禁止対象施設に追加された。9月には飲酒時の飛行禁止をはじめ、これまで飛行マニュアルに記載されていた注意喚起事項が、航空法改正で明記された。「操縦者や安全運航管理者に、より安全な飛行への配慮が求められるようになる」(高橋氏)。

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 産業クラスター形成に向けた動きも活発だった。経済産業省と国土交通省が合同で開催して注目された「産業構想発表会」では、福島県、三重県、愛知県、大阪府、東京都が、空飛ぶクルマの実用化に向けた構想を発表した。これを受けて、空飛ぶクルマの実証実験の誘致に向け、三重県と福島県が連携協定を締結している。2020年以降につながる大きな一歩と見て良いだろう。

グローバルの動向も踏まえた、2020年の展望

 グローバルに目を移すと、進歩はさらに目覚ましい。エアモビリティでは、Volocopterがシンガポールでの有人機のテストフライトを成功させ、Uberは2020年よりメルボルンで試験飛行を行うことを発表した。日本でも、スカイドライブが年内に有人機の試験飛行予定で、許可待ちとのこと。「地上から空に参入する一方で、空の専門家は低空に降りてくる。2020年は100〜150mの領域に対して、上下から大戦争が起こり始めるだろう」(千葉氏)。

 ドローンにとっての2019年は、実証実験から実装に移り始めた1年だった。ドラッグストアチェーン大手のウォルグリーン(米国)が、ドローンを使用した宅配サービスの実験に成功した。日本でも、ANA、ACSL、NTTドコモが連携して、台風19号で孤立した東京奥多摩町に、ドローンで緊急物資を輸送したことは記憶に新しい。

 「2020年は、レベル3(無人地帯における目視外飛行)のサービス拡大、レベル4に向けた制度設計が進むだろう。ドローン配送の長距離化にも注目だ。陸上輸送で5時間かかるところ、海上を直線で飛べば1時間に時短できる名古屋〜志摩半島の例などはドローン輸送ならでは」(千葉氏)。

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 また、すでにインフラが整っているヘリコプターによるオンデマンド輸送サービスが普及する、といった話題も上がった。

ドローン実装に向け、セキュリティ導入が進む

 いま世界的に広がっているのが、中国製ドローンに対する安全保障のリスクを懸念する声だ。日本製のドローンを求める声が、Drone Fundにも届いているという。またセキュリティの問題も、社会実装が進むにつれて顕在化する。具体的には、不正ドローンを検知し、捕捉、誘導、撃ち落とすなどの対策を講ずる必要が出るとのことだ。

 例えば、どこを保護対象エリアにするかというセキュリティ導入先、不正ドローンかどうかの判断材料として不可欠となる機体登録制度、不正と判断した後の強制措置として、誰が何をする権利を持つのかなど、現状のグレーゾーンを急ピッチで定義していくことが求められている。

 欧米などのグローバル標準を参考に、2019年度いっぱい議論する方針とのことだが、機体登録制度については車の運用に近いものが望ましいという。車体にはナンバープレート、運転者には免許証を付与し、定期的に管理し違反者には罰則を設けることで、いま公道には不正な車はほぼゼロだ。自動車を参考にしながら、オンラインで完結する手軽な手続きフローを整える、インバウンド旅行者にも国内規制の遵守を求めるなど、具体的なアイデアも言及された。

 最後に、筆者が最も印象的だったのが、「エアモビリティは、ドローンだ」という千葉氏の発言だ。当たり前に聞こえるだろうか。

 人間がアナログに操縦する飛行機やヘリとは異なり、エアモビリティおよびドローンは自動で離発着して航行し、自律で判断しながら衝突危険回避をするもの。このように定義すると、有事回避のため今の航空管制塔が行なっている「人間のパイロットへのアナログな命令による飛行ルート変更」では対応しきれない。デジタル・AIを使って強制的に管理できる新たな航空管制塔が必要になるという見解だ。ただし、割と遠い未来に。

 機体が少ない当面は、航空機とエアモビリティの飛行空域を上下左右で分け、事前に登録された飛行計画情報と実際の飛行ルートの差異を検知して衝突回避を図る方法でよいとしながらも、Drone Fundではデジタル・AI航空管制システムを開発するベンチャーへの投資も視野に入れているという。Drone Fundおよび産業の動向は、2020年もアグレッシブに移ろいそうだ。

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