CNET Japanで2019年も「Appleニュース一気読み」を毎週連載し、新製品をレビューしてきた松村太郎がお届けするApple製品の選び方ガイドシリーズ。
2019年も残すところ少し。クリスマスに向けて、デジタル製品を手に入れようとされている方も多いのではないだろうか。そこでお届けするのが、今回の「Appleホリデーガイド2019」シリーズ。製品カテゴリごとの選び方をお届けする。
iPhone編に続き、第2回はMacだ。
2019年はどちらかといえばiPadイヤーだったように思う。5モデル中3モデルが刷新され、すべてのモデルでApple Pencilをサポートした。さらにiOSから分離したiPad専用の「iPadOS」が登場し、単独でのPCの代替性が高まり、またMacとの連携も強化された。iPadについては、次回で触れる。
しかしMacの話題も多かった。2019年モデルとして登場したのはMacBook Air、MacBook Pro 13インチ、MacBook Pro 15インチ、そして15インチモデルを置き換える16インチモデルの投入。さらに刷新されたMac Proが12月に発売された。
Mac Proが最高のパフォーマンスを実現することは間違いないとみられるが、以降は2017年モデルのiMac Pro、続いて2019年11月に登場したMacBook Pro 16インチ、2018年モデルのiMac 27インチモデルと続く。ラインアップの中で、むしろハイエンドモデルの方が明快で選びやすくなってきた。
それに対して、より多くの人々が検討するであろう13インチモデルについては、より選ぶのが難しくなった印象すらある。モデル、サイズの分かれ目について考えていこう。
筆者は2012年モデルのMacBook Pro 15インチモデルを丸4年使い、2016年モデルのMacBook Pro 13インチモデルに乗り換えてすでに3年使ってきた。
MacBookシリーズはアルミニウムのユニボディに美しい高精細Retinaディスプレイ、クラスでは十分長持ちなバッテリー、フラッシュストレージを全面採用し、非常に信頼性が高まってきた。後述するキーボードについても、筆者は個人的にはバタフライキーだってタッチも好みだ。そしてmacOSによって毎年、過去のマシンも含めてMacを高速化させている。
MacBook Proでやることさえ変わらなければ、4〜5年程度使い続ける前提で選び始めた方がよい。その前提に立つと、後から増設できないメモリとストレージも、その用途で考えうる最大容量を備えた方がよい。
例えば筆者の場合、原稿の執筆を中心に、画像とビデオの編集、レイアウト作業がMacの主たる用途だ。出張も多く動き回ることを考えると、出来るだけストレージを大きくした方が良い。そのため筆者の場合、16GBメモリと2TBストレージあたりがターゲットになる。
おそらく、高負荷作業を連続的に行うクリエイティブプロなら、プロセッサが早くなるごとに買い換えることで、時間を買うことができる。しかしそうでないなら、プロセッサまで最上位のものを選ぶ必要もないはずだ。それだけ、基本的な性能はすでに十分高まっている。
13インチMacBookシリーズはMac販売の中でもボリュームゾーンになり、また選び方が難しいカテゴリでもある。それは、2018年にフルモデルチェンジを受けたMacBook Airの登場で、さらに難しくなった。それでも、基本的な考え方はこうだ。
どちらにも13インチRetinaディスプレイが採用されているが、MacBook Proラインでは広色域P3をサポートし、最大輝度も500ニトとより明るい。そしてProラインはクアッドコア、Airはデュアルコアのプロセッサしか用意されない。その点から、ちょっとでも性能にニーズがあるなら、すぐにPro以外の選択肢がなくなる。
MacBook Pro 13インチにはこれまで、Touch Bar非搭載、2つのThunderbolt 3ポートを備えたモデルが用意されていた。MacBook AirにRetinaディスプレイモデルが存在しなかったころの、実質的なAirの扱いだった、と振り返ることができる。
しかしMacBook Airが刷新され、Touch BarなしのProモデルは消滅したが、引き続き2つのThunderbolt 3ポートモデルは残され、1.4GHzもしくは1.7GHzのクアッドコアIntel Core i5/i7とひかえめな性能で日本では13万9800円~と、Proモデルとしてのエントリー価格がつけられている。
このライトモデルのMacBook Proを選ぶなら、より安い11万9800円~のMacBook Airにし、メモリやストレージを増強してもよいのではないか。
では性能を求めるなら、13インチMacBook Proの上位モデルを選ぶべきかを問われると、現段階ではすんなりと「Yes」とはいえない。
2019年11月に登場したMacBook Pro 16インチモデル。レビューについてはCNET Japanに掲載の記事を参照いただきたい。このモデルのポイントは、拡大されたディスプレイ、1時間延びて11時間となったバッテリー、余裕ある熱設計、そしてシザーメカニズムに戻したMagic Keyboardの採用と、クリエイティブプロのニーズを丁寧に拾い上げた製品と言える。
MacBook Pro 16インチレビュー--刷新し値下げしたベースモデル、キーボードは別物にこのモデルは最大64GBメモリ、8TBストレージを搭載できるが、実はカスタマイズなしのベースモデルですら非常に魅力的だ。
16インチモデルの標準構成は、第9世代2.6GHzの6コアIntel Core i7を搭載し、メモリは標準で16GB、ストレージも512GB搭載され、日本円で24万8800円から。
筆者の場合、2018年10月以降、持ち出すコンピュータはiPad Proのみで、米国出張までiPad Pro 1枚で済ませるようになったことを考えると、16インチモデルをより選びやすくなった。
さて、2015年のMacBookから採用されたバタフライキーは不評だった。タッチが0.55mmと浅い点、そして信頼性の問題がつきまとう点がその理由であり、後者については2019年に発売されたMacBook Air/Proについても無償修理プログラムを適用していることから、Appleも認める不安要素であると考えていいだろう。
個人的には、0.55mmのキーボードは気に入っていた。より弱い力で打鍵することができ、キーを叩くというよりは表面をなぞる感覚になるため、長くタイピングをしている際に疲れにくいというメリットがあったためだ。そして、こういうクイックなレスポンスが弱い力で得られるキーボードは、ゲーミングPCの世界では当たり前だし、それを「よい」とする価値観の世代にとってはポジティブかもしれない。
そこで16インチMacBook Proには、ストローク1mm、シザー構造を採用したMagic Keyboardが採用されて、プロユーザーの声に応えた。Magic Keyboardはデスクトップ向けのBluetoothキーボードの名称だったが、実はキートップまでデスクトップ交換できるという。
1mmにキーストロークが深まったMacBook Pro 16インチのキーボードは、いい意味でクセがないタッチになった。前述の力のかけ具合についていえば、バタフライキーボードよりもわずかな力が必要となる。その一方で、ラバードームの反発で指が跳ね返されるため、その力を使って次の打鍵へと指を進めやすい。キーボードの良し悪しは完全に慣れと好みの問題だが、長年コンピュータに触れている人がMagic Keyboardを好むことも理解できる。
13インチモデルにはまだMagic Keyboardの設定がない。しかしProモデルの特権として、このMagic Keyboardが今後採用されていくことになるだろう。しかしその場合、本体の厚みが必要になることから、内部構造の抜本的な改革が必要になる。それは15インチモデルを撤廃し16インチに拡大した経緯と同じだ。
もう1つ、13インチモデルで選択が難しい状況が生じている理由は、MacBook AirとMacBook Proが同じサイズのディスプレイを採用し、グラフィックスもIntel Irisの内蔵グラフィックスしか選択肢がないことだ。プロセッサの性能とディスプレイの性能でしか、この2つを差別化する要因がない。
13インチモデルのMacbook Proをより積極的に選択できるようにするためには、キーボード、グラフィックス、ディスプレイの3つの改善が必要になる。パフォーマンスを高めるには排熱設計の更新とAMDグラフィックス搭載は不可欠となる。昨今流れてきた14インチへの拡大の噂も、現在の13インチProの中途半端な状況を打開する策として有効だろう。
たった1インチの違いがAirとProを分ける理由になりうるか、と言われれば、Apple的にはなる、と言えるようだ。実際、iPad Proがホームボタンなしの新しいアーキテクチャを採用して11インチで登場し、過去Proに採用されてきた10.5インチをiPad Airとして再利用した経緯がある。
13インチモデルのMacBook Proをリプレイスするなら、16インチを選んでしまうか、フルモデルチェンジを待つべきだ。
もう一つ、フルモデルチェンジが必要なのがiMacだ。iMacは現在21.5インチフルHDモデル、同4Kモデル、27インチ5Kモデル、同じディスプレイを採用するiMac Proのモデル展開だ。このうち、iMac Pro以外のiMacには、Apple独自のT2チップが採用されていない。
T2チップはブートセキュリティ、ディスクコントローラー、オンザフライ暗号化、ビデオやオーディオコントローラーなどを兼ね備えており、2017年のiMac Proから順次採用が広がっている。MacBook Pro 16インチモデルでは新しい6ドライバーのスピーカーで非常に高い品質の空間オーディオを実現しているが、これもT2チップの功績だという。
現在、このT2チップが採用されていないMacは、iMacシリーズだけだ。そして、もし2012年以降のMacBookシリーズに触れたことがあるなら、いまだにiMacに残っているハードディスクモデルは氷河の如く遅く感じるだろう。OSやアプリの起動、日本語入力の一文字目、アプリ切り替えなど、瞬間瞬間待たされる。それは、2019年に刷新されたばかりのiMacですら、例外ではなかった。
iMacシリーズとMacBook Pro 13インチの大幅な刷新は、2019年中には達成されなかったことから、Macラインアップの2020年における大きな宿題となる。
Apple CFOのLuca Maestri氏は、2019年第4四半期決算発表の電話会議で、「iPad ProとMacは年に1度の更新のサイクルによらない」点を指摘していた。もし、iMacと13インチMacBook Proを検討しているなら、少し待ってみてもいいかもしれない。
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