「A5等級=おいしい」は無関係--日清食品HDやニチレイ、Meattechが明かす食肉の“裏側” - (page 3)

人工肉が当たり前の時代は、あらゆる意味で広い選択肢を

 食糧不足の解決方法の1つである培養肉ではあるものの、実用化できる段階になったとしても、消費者が受け入れるかどうかは別問題でもある。この点について日清食品HDでは、培養肉の製造だけでなく、消費者が培養肉を違和感なく受け入れる社会受容性の向上についても取り組み始めていると仲村氏。「培養肉」というネーミングにも検討の余地があるとした。

 培養肉の味を本物に近づけていくためにも、「肉のおいしさの根幹がどこにあるのかはすごく興味のあるところ」(仲村氏)と、ニチレイの畠山氏に率直な感想を伝えつつ、将来的な食肉ビジネスについては「(食肉を購入するうえで)いろんな選択肢が出てくる世の中になると思う。その1つが培養肉であり、お客様が好きなものを選べる時代になればいい。培養肉で(畜産業を)駆逐しようとは思っておらず、新しい肉のカテゴリーが出てくれば面白いのではないか」と述べた。

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 一方、日清食品HDの培養肉についてニチレイの畠山氏は、米国出張中にバーガーキングの植物原料パテを使った「インポッシブル・ワッパー」を食べた経験から、「私のレベルだと、これでいいじゃん」という感想をもったという。「すでにそういう(人工肉が当たり前になる)世界が来つつある。その先に培養肉はありうると思えた」とコメント。

 無類の「肉好き」を自称する畠山氏はさらに、「肉のおいしさはすごく複雑」としつつ、「このお肉はこういうメカニズムで、お口に入るとこう(味わうことに)なるから、こういう食べ方をしてほしい、とアドバイスするなど、お肉のパーソナライズみたいなところでお手伝いできれば」と、自社のおいしさ研究の応用拡大に向けて意欲を見せた。

 Meattechの中山氏は、肉牛を生産する畜産業にとって培養肉は競合となりうるとしながらも、個人的には「生産者側だが大賛成」だと話す。「畜産が将来にわたって今の規模を維持できるとは思えない。人工肉と培養肉、その割合を(市場において)どう変化させるかが重要ではないか」と述べた。

 また、ニチレイのおいしさ研究について同氏は「おいしさを表す語彙の増加」に期待している。「ワインやコーヒー豆などは、おいしさを表す語彙が多い」とのことで、それが食文化として成熟している証にもなっている。しかし、肉の場合は「柔らかい」程度しかなく、語彙は少ない。「肉のおいしさがデータで裏付けられ、それを表す語彙が増えていくのはいいことではないか」と話した。

 将来においては、「(培養肉の実用化などを)社会実装していくときにはハイブリッド感を出すことが重要」だとし、生体肉派、培養肉派が分かれて争っても何も解決しない、と断じる。生体肉と培養肉のそれぞれを、どれくらい生産できて、消費者にどう提供できるのか、「そろそろ冷静に話し合う時期に来た。(食肉の)国内市場を盛り上げるために、どう手をつなぐか今後一緒に考えていきたい」と締めくくった。

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