Meattechの中山氏は、以前はソニーでスマートデバイスのマーケティングなどを担当していた人物。しかし、家業でもある畜産業において変革の必要性を感じ、「テクノロジーで畜産業の未来を考える」ことをテーマに2017年に起業した。
祖母や父親が営む広島県の牧場では、動物本来の行動をとれるような環境で、抗生物質を使わず、肉質を変えるためのビタミン欠乏もさせず、角も切らないなど、「牛にストレスを与える状況を作らない、アニマルウェルフェアに配慮した牧場運営」を心掛けている。
同氏が畜産業において問題意識を抱えていることの1つは「偏重した価値観」だ。牛肉の格付けとしてはA4等級やA5等級がいわゆる「上質なもの」として認識されているが、これは「脂肪の入り方や色などで決まっている。おいしいかどうかではない」のが本当のところ。
また近年、肉牛の生産頭数の総量としては変化がほとんどないのに、A5等級に格付けされる件数のみが右肩上がりになっている。「ビタミン欠乏による生産方法が確立されてきたこと」が要因だが、これらのデータからは肉牛にとって健康的でない生産環境がはびこっている状況が透けて見える。
こうした「等級が上であるほど価値がある」という認識が広がった結果、「現在の種牛は3~5種類程度の血統に集約されてきている」とし、「10~20年後、赤身肉を食べたいと思っても、脂肪交雑している(A4~A5等級の)ものしか存在しないような状況になりうる」と同氏は警鐘を鳴らす。
そのためMeattechでは、「地域ブランドで味・価格を評価するのではなく、血統と飼料を純粋に見極め」ながら、肉の甘み、塩味、柔らかさや香りなどを数値化し、それがわかるようなパッケージデザインを考案。消費者が単に等級だけで判断するのではなく、さまざまな嗜好や価値観に沿った商品選びができるようにすることも目指している。
また、毎年2000戸の肉牛農家が廃業し、戸数が減少し続けていることが国外と国内の肉牛の価格差、和牛の海外生産進出の後押し、大規模生産などへのトレンド偏重の遠因になっているとも指摘する同氏。離農による畜産業の縮小を防ぎ、「畜産における全体頭数をキープしていくこと」を目標に、畜産の売り手・買い手の間の取り次ぎや関係を整理するような「畜産農家の事業承継モデル」の構築にも取り組んでいるところだ。
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