2020年春の商用サービス開始が予定されている5Gは、スポーツ観戦の楽しみ方を大きく拡げる可能性がありそうだ。日本代表チームの活躍で盛り上がっているラグビーワールドカップ2019の期間中、NTTドコモは5Gプレサービス端末を利用したマルチアングル視聴を、全国の8つの試合会場で提供する実験を行った。そこでは、まもなく当たり前になるスポーツ観戦のこれからが見えてきた。
5Gの特徴は大きくまとめると、高速・大容量で低遅延のインターネットに多くの端末が同時接続できること。つまり、ラグビーワールドカップの試合会場のような、人がたくさん集まるスタジアムで、会場内の様子をSNSにストレスなく投稿したり、高画質のライブストリーミング中継がさくさく見られるようになるわけだ。
スポーツを生で観戦しながらスマホで動画を見るなんてことはしないだろうと思うかもしれないが、スタジアム内ではテレビ中継のような解説がないため試合の進行状況がよくわからなくなることがある。ラジオ中継を聴きながら試合中継を見るというワザはあるが、ルールをよく知らないスポーツの場合は映像付きの解説である方がはるかにわかりやすい。5Gではそれがマルチアングルで、しかも遅延のストレスなく観られるようになるというわけだ。
今回は10月8日にノエビアスタジアム神戸(神戸市御崎公園球技場)で開催された南アフリカ 対 カナダ戦の客席で、実際に試合を観ながら5G対応のダブルディスプレイ端末を使ってマルチアングル視聴を体験した。端末では片側のディスプレイに、一番の見どころが表示されるフォーカスビュー、スタッツデータ(チームや選手のプレイ成績をまとめたもの)を表示するスタッツビュー、戦術を表示するタクティクスビュー、ハイライトや見逃したシーンを表示するリプレイビューの4つが表示され、そのいずれかをタップするともう片側のディスプレイに大きく表示されるようになっていた。
ラグビーはスクラムやキック、インフィールドなど見どころがいくつかあり、たとえばスクラムの時に上からのアングルでボールが出る位置を確認できたり、キックが入ったかどうかを確認できたりと、普段はできない楽しみ方ができた。ベルサール汐留で実施されたパブリックビューイングでは、国際中継映像も含めた7つのアングルが使われており、5Gの運用が本格的に始まれば審判視点のカメラや控え室にもカメラを置くなど、さらにマルチアングルのバリエーションは増やせそうだ。
今回はなかったが、音声中継もマルチになれば観戦はより充実するだろう。というのも今回は、ジャパンラグビートップリーグのNTTドコモレッドハリケーンズの元キャプテンで、現在ドコモの広報を担当している泉敬氏に解説をしてもらいながら観戦するという貴重な体験ができたからだ。テレビの試合中継とは違う選手目線で、ルールも丁寧に教えてもらいながらの観戦は想像以上に楽しかった。
5Gで視聴者とインタラクティブなスポーツ中継ができることは、以前にも5GとVRを組み合わせたテスト中継で実証されているので、将来複数の副音声から好きな解説を選んでスポーツ観戦できるようになれば、新しいファンを増やす機会につながるかもしれない。
スポーツ観戦を楽しむための技術、スポーツテックに関しては先進国の米国では、アメフトの人気選手の視点からプレイをVR観戦できる技術の開発も進んでいる。2020年1月にラスベガスで開催されるCESではスポーツテックが注目カテゴリの1つになっており、東京オリンピックがそうした技術のテストフィールドになる可能性もある。
10月11日に開かれたドコモの新製品発表会でドコモ関西支社長の高原幸一氏は、「今回のプレサービスでノエビアスタジアムや東大阪市花園ラグビー場に設置した5G環境はそのまま利用できるようにする。花園では全国高校ラグビーで利用するなども検討したい」とコメントしている。同会場ではジャパンラグビートップリーグも行われるので、そうした場で5Gを先行体験できる機会があるかもしれない。
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