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設立5年、BONXが語るハードウェアスタートアップの苦悩と2度目のクラウドファンディング - (page 2)

加納恵 (編集部)2019年11月19日 13時00分
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導入先は拡大中、BtoB領域も並行して開拓

 ウインタースポーツをきっかけにBtoC市場を拡大したBONXだが、並行してBtoB市場も開拓する。「スノーボードでの使用を想定したBONXは、とにかくタフネス仕様。雪山は電波も悪く、激しい動きと雪に耐える強靭さが必要。さらに風切り音もあるため、通話品質も高くなければ使えない。そういうシチュエーションで使える音声コミュニケーションツールなので、スノーボード以外でももちろん使える。スポーツでのシーンもあれば、業務用としての使用にも十分に耐えうる」と宮坂氏はBONXのメリットを強調する。

 すでにその品質が認められ、全日本空輸(ANA)のエアバスA380型機「FLYING HONU」内で、客室乗務員同士のコミュニケーションツールとして採用。機内のどこにいても場所を限定せず、複数の客室乗務員同士でコミュニケーションがとれているという。

ANAの導入事例
ANAの導入事例

 さらに、室内外でコミュニケーションを取る必要がある病院の手術室や、複数人での同時相互通話が必要になる小売店など、導入先は順調に増えている。BtoB市場開拓には、大手企業との提携による部分が大きい。資本関係にあるリコーとのコラボレーションでは多くの案件を創出。これ以外にもNTT東日本のアクセラレータープログラムに参加するなど、大手企業とのパイプづくりは積極的だ。

 同時にBtoBに特化した機能も追加している。2018年7月には、法人向け音声コミュニケーションシステム「BONX for BUSINESS」をリリース。2019年8月には、音声ソリューションによる業務効率化と働き方のアップデートする「bonx.io(ボンクスアイオー)」の提供を開始した。

 bonx.ioは、音声データをさまざまな利用シーンや要望に合わせて、活用することが可能となり、業務効率の改善につなげるもの。発話者ごとに音声パケットを分け、ID別に分類。個別認識ため、発話者ごとのテキスト内容を生成できる。「話すだけで業務日報をつくる」(宮坂氏)ことも可能だ。

 ハードウェアスタートアップとして”ものづくりの苦悩”を体験しながら、BtoC、BtoBの両面で事業を展開するBONXは、新プロダクトBONX miniで、再度、クラウドファンディングに挑戦する。

 BONX miniは、高さ32mm×幅44mm×奥行き18mmで、重量約5gのコンパクトボディ。税別価格1万4630円だったBONX Gripに比べ、販売税別価格も9000円と1万円を切り、手頃さでプライベート、ビジネス両市場への拡販を狙う。注目したのは、ビジネスとプライベートの境目があいまいになりつつある、現代の働き方だ。打ち合わせ回数の減少やテレワークの推進、会議のあり方をアップデートさせることを目指す。

「BONX mini(ボンクスミニ)」
「BONX mini(ボンクスミニ)」
「BONX mini(ボンクスミニ)」。スリムボディで装着している時も目立ちにくい
「BONX mini(ボンクスミニ)」。スリムボディで装着している時も目立ちにくい

 「特にこだわったのは人の声の聞き取りやすさ。会話を重視し、声に特化したチューニングをしている。中高域を持ち上げるだけでなく、ほかのヘッドセットでは、音を丸めることで聞きやすさを際立たせているが、BONX miniではもう少し尖った音にしていることが特徴。声のエッジを強調することで、聞き取りやすくなる」と宮坂氏はこだわりのポイントを話す。

 小型化により、電池容量を少なくしたが、充電ケースとセットで約18時間の使用時間を確保。上部は角度調整ができるよう動かせるパーツにすることで、イヤピースの向きを変更でき、利き耳につけられるようにした。「外れづらく、軽い運動ならば装着したままで大丈夫。ただし、スノーボードのような激しいスポーツにはBONX Gripがおすすめだし、BONX miniには防水性能も省いている」(宮坂氏)と違いは明確だ。

上部は角度調整ができるよう動かせるパーツにした
上部は角度調整ができるよう動かせるパーツにした

 小型、低価格のモデルを出した理由はもう1つある。「BONX Gripは1人では使えない製品。前回のクラウドファンディングでも2個セットのものが人気を得た。しかし、1万5800円するBONX Gripは友達に『これ買おうよ』と誘うには少しハードルが高い。そこで購入しやすい価格のモデルを投入することで、友人同士で買いやすい環境にしたかった」とのこと。そのため、複数人での同時相互通話は、同じグループ内であれば、BONX GripでもBONX miniでもつながる。

クラウドファンディングを通してBONXのファンを作る

 BtoC、BtoBの両方ですでに販売実績を持つBONXが、なぜ今回もクラウドファンディングを利用するのだろうか。「前回成功して、やってよかったという思いが強い。しかしそれ以上に代えがたいのは、ファンを作れるから。前回のクラウドファンディングから4年が経過しているが、『クラウドファンディングの時に支援しました』と言ってくれる人もいまだに多いし、元ヤフーの社長で現在、東京都副知事を務める宮坂さん(宮坂学氏)もあの時に応援してくれた1人。スポーツコメンテーターの為末(為末大氏)さんも、クラウドファンディングがきっかけで付き合いが生まれた。一般販売ではこういった関係を構築することはなかなか難しい」と思いを話す。

 さらに「ハードウェアがあるからこそのファン獲得」とも宮坂氏は続ける。「BONXは開発に約3年を費やし、アプリなどに比べるとかかる時間もコストも段違い。スタートアップはスピードが勝負と言われる中で、それは大きなハードルになってしまう。プロダクトができても、量産や流通など、越えるべき壁が多く、普通のメンタリティではやらないほうがいい(笑)。しかしそれだけに、使っているところを見るとたまらなくうれしい」と実体験を語る。

 ただし「大事なのはハードやソフトという問題ではなく、ビジョン。BONXは、イヤホンだけでもアプリだけでも、やりたいことができず両方を作る形になった。ハードが必要であれば作ればよくて、ハードを作るかどうかが論点ではない。起業家に必要なのは、実現したい体験があるかどうか。BONXが設立から5年生きながらえているのは、ビジョンが明確だから。それに共感する仲間やユーザーが集まってくれたのが、BONXが続いている理由の1つ」とした。

 

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