スマートフォンネイティブが見ている世界

災害時にSNSで助け合う10代--台風19号対応から学ぶこと

 「子どもの体育祭や大会が中止になってしまった」「台風で電車が止まって通学できないので保護者が送っている」「被災して教科書が使えなくなり困っている。卒業生の方で貸してくれる人はいないか」「台風でできなかった受験日が振替になり、学祭と重なって参加できなくなってしまった」ーー。

 何かと行事が多い10月に台風が発生し、それによって生活に大きな影響が出ている学生は少なくないようだ。台風19号は大きな爪痕を残していった。被災された方々には心からお見舞い申し上げる。今回は、災害時の学生たちとSNS利活用の大切さについて見ていきたい。

楽器の救済情報もSNSで

 モバイル社会研究所の「防災・減災に向けたICT利活用の検討 No.13」(2019年1月)によると、災害に関する情報(人との連絡・安否確認ではなく、災害発生場所・河川の状況・避難指示など)についての情報をどのような手段で入手するか調査したところ、年齢による違いが明確だった。

 年齢が高くなるにつれてテレビで情報を入手する割合が高く、年齢が若いほどSNS(Twitter、Facebook、Instagram、LINEなど)で情報を入手する割合が高かったのだ。SNSの情報はリアルタイムで素早く得ることができ、テレビの情報は正確性が高いと考えられるため、どちらというわけではなく使い分けが大切だろう。

 若者たちは、SNSでそれ以外の情報を収集したり、情報を発信する割合も高いようだ。たとえば、福島県郡山市帝京安積高校では、浸水によって吹奏楽の楽器が水没してしまった。翌月にはマーチングの全国大会もあるという。そんな中、同高校出身の大学生が、水没した楽器を救出しメンテナンスするためにできることに関する情報をFacebookなどで募集した。

 同校吹奏楽は素晴らしい演奏に定評があったため、友人らもTwitterなどで拡散。「洗浄と乾燥が大切」「楽器店にリペア依頼を」「大会に出られますように」などの多くの情報と声が集まった。

 また、市内の広い範囲で建物が水に浸かる被害が出たいわき市では、片付けを手伝おうと地元の高校生たちがSNSを通じて呼びかけた。結果、40名ほどが集まり、水に浸かった家具や畳などを外に運び出したり、家の中にたまった泥を掃除するなどしたという。

 今回に限らず、10代の若者たちがSNSを通じ、自主的に片付けやボランティアなどをしている例は多く見られる。災害に傷つきながらも、復興を目指して行動するさまには大いに励まされる。

増すSNS情報の重要性

 台風19号は、筆者が居住する関東地方に直撃したため、とても考えさせられることが多かった。たとえば、自治体のウェブサイトはアクセスが集中して軒並み落ちていたようだった。特に東京などでは肝心な情報が確認できずに困ったという人は多かったようだ。

 しかし、TwitterやFacebookなどの公式アカウントが用意されていることが多く、そちらでは情報発信をしていることが多かった。その意味でも、やはり自分が居住する自治体のSNSアカウントをあらかじめフォローしておくことは大切だろう。

 東京では警報が鳴り響いたほか、川崎に住む弟夫婦の地域では避難勧告が出たなどの情報があり、まったく落ち着かずにいた。後で自分の住む自治体のTwitterを見たところ、市内で自主避難施設が用意されていたことを知った。台風当日は、いざというときに避難する場所を知らないままだったのだ。また、居住地域に出た特別警報情報なども掲載されており、次回はもっと確認することを誓った。

 SNSについては10〜20代の若者たちがよく活用できていたが、逆のこともある。モバイル社会研究所の「防災・減災に向けたICT利活用の検討 No.12」(2019年1月)によると、スマートフォン所有者のうち自分のスマホに防災アプリをインストールしている人は42.8%と約4割だった。こちらは年齢が高くなるほどインストールしている割合が高く、10〜30代はわずか3割前後にすぎなかったのだ。

 災害大国の日本では、いつ自分が被災者側となるかわからない。防災アプリを入れておき、プッシュ通知で緊急情報を得られるようにしておくことも大切だろう。

 また都心部の人が多く被災したことで、対策や課題が漫画や文章などでSNS経由で多く投稿され、発信力の重要さが話題となっていた。SNSがあれば個人でも広く多くの人に対して情報を発信できる。その情報を得ることで助かる人も多く、今後も緊急時に備えてSNSの利活用がさらに重要となってくるはずだ。大人世代も10代の若者に学び、SNSの利活用や情報発信を心がけたいところだ。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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